DX事例 インタビュー ラボ型開発

社員以上の動きでユーザベースのコーポレートITを支援するラボ型開発

「社員以上の動きをしてもらっています!」(株式会社ユーザベース 王 佳一さん)

昨今、ITシステムの内製にこだわる企業は多く、数少ない高スキルエンジニアを企業はあの手この手で採用しようと躍起になっています。そういった背景もあり、依然として人材市場におけるエンジニアの需要は高止まりしている状況です。

しかし内製にこだわる企業がいる一方で、企業間のパートナーシップを強めることでリソース不足を補完することを重視する企業もいます。今回取材をした株式会社ユーザベースもその内の一社です。

「コーポレートITという領域のエンジニアを自社で抱えることは難しいため、パートナー企業との協業を選んだ」と語る王さんに外部ベンダーへのシステム開発発注の実情についてお話を伺いました。 また株式会社ユーザベースのシステム開発を支援している株式会社情報戦略テクノロジー様の営業ならびに開発メンバーにもお話を聞きました。
(REBUILDERS編集部 木城)

インタビュー動画

ユーザベースCIOの王さんについて

現在の業務内容は?

 
王さん:

現在ユーザベースでCIO・CISO・執行役員をしており、コーポレートITと情報セキュリティーという2つの領域を担当しています。

具体的には全社のDX、業務改善、社内インフラ、そして情報セキュリティーなどです。特に最近力を入れている部分は情報セキュリティーで、プロダクトの情報セキュリティーからコーポレートITのセキュリティーまでをすべて管掌しており、さまざまなプロジェクトを進めています。

  

王さんの経歴は?

 
王さん:

ユーザベースの正社員になる前の半年くらいは、社外アドバイザーとしてジョインして、日々の課題などいろいろな話をさせてもらっていましたが、そのうちフルコミットでないと解決できない課題がたくさん出てきました。また、ユーザベースCEOの稲垣さんから声をかけてもらい、正社員として入社しようと決心しました。

ユーザベースってどんな会社?

 
王さん:

ユーザベースは主に2つのビジネスモデルを持っていて、BtoBとBtoCが2つあります。

BtoBに関しては簡単に説明すると、データプラットフォームというビジネスモデルを持っていて、SPEEDAやFORCASといった、いろんな企業情報を集約したデータプラットフォームを作っていて、それをSaaSサービスとして提供しているのがBtoBのビジネスモデルです。

もう一つのBtoCのビジネスモデルは「NewsPicks」というメディアプラットフォームです。主にBtoBとBtoCで、データプラットフォームとメディアプラットフォームの2つのビジネスモデルを展開している会社です。

ラボ開発を使うことになったキッカケは?

王さん:

コーポレートITに関しては、自前で開発のエンジニアを抱えることはかなり難易度が高いと考えています。いくつかの側面がありますが、エンジニアを自前で抱えるということは、きちんとした評価方法や管理体制がないといけません。どうしてもコーポレートITにおける開発の知見を持ったエンジニアは、比較的エンジニア領域の中でも一番少ないので自社で抱えるというよりは、情報戦略テクノロジー様のようなパートナー企業と一緒に開発を進めていきたい、と思ったことが最初のキッカケです。パートナー企業を選定していく中で、主に2つのポイントで情報戦略テクノロジー様を選定しました。

一つ目のポイントは「0次DX」という点です。契約上、弊社との関係性は「発注する側」と「受注する側」なのですが、弊社が要件や要望を出して一方的に下請け企業とのやりとりのような形でやっていただくのではなく、双方的にコミュニケーションを取った上で、我々のニーズを理解していただき、一緒に進めていく体制の方が弊社として望ましいかなと思っています。受発注の関係というよりもパートナーシップという関係で取り組める企業の方が良いのかな、という考えがあり選定させていただきました。

二つ目のポイントは「技術領域」の部分です。弊社は一般の会社よりも多種多様なシステムを使っているので、プラットフォームとして使っているIaaSだけでもAWS、GCP、アリババクラウドなど、いくつかのプラットフォームが混ざったマルチプラットフォームを使っているので、これらをカバーして支援できる会社は本当に限られています。「AWSが強い会社」とか「GCPが強い会社」などは多いのですが、情報戦略テクノロジー様においてはマルチクラウドにおけるナレッジや経験を評価させていただきました。

ユーザベース執行役員 CIO/CISO 兼 IT Strategy Division Leaderの王さん

ラボ開発を使ってみた感想は?

王さん:

想定以上に我々に寄り添っていただけているかなと思っています。どうしても契約形態という意味で、多くの人は発注者が指示を出して受注者に動いていただくイメージが強いのですが、情報戦略テクノロジー様の場合は「本当にちゃんと寄り添って頂いている」という部分が大きいです。

今でいうと、情報戦略テクノロジー様の青木さん(メンバーエンジニア)や吉田さん(PM)においては、もう完全にユーザベース社員と「同等な目線」と「同等なレベル感」で周りの社員と同じレベルで対話していただいている部分においては、ベンダー企業には少ないと思っています。本当に我々と代わって、というか、正社員と同等な対応品質をしていただいている部分が結構大きな評価ポイントの一つかなと思っています。

たまに周りのユーザベース社員とコミュニケーションをする時に、青木さんの話題が出ますが、「実は青木さんは正社員じゃないよ」って話をするとみんなビックリします。「そうだっけ!?」みたいな。本当に社員らしいというか、社員以上な動きもしていただいているかなと思っていますので、そこは本当に我々としてもとても助かっていますし、そういうところが一番評価しているところです。

あとは「柔軟さ」です。色々とこれまでも難題もあれば、ちょっとしたムチャ振りもあったかなと思っていますが、そういうところもきちんと受け止めていただいて、そこから単なる受け止めじゃなくて提案もしていただけるというのは大きなポイントじゃないかなと思っています。我々が発注する側だからといって「全て受け止めてやるしかない」ではなくて、リクエストを受け止めてから、実はこういうやり方もあるとか、色々な選択肢や提案をいただける点は評価できると思っています。

 

ラボ開発の改善点は?

王さん:

これまでがどちらかというと保守運用というスタンスが大きいのですが、元々あったシステムをバグがないようにであったり、ちょっとした改修であったりとかが、情報戦略テクノロジー様の守備範囲だったと思いますが、これから取り掛かっていくプロジェクトにおいては、「より一歩先を見据えていただく」というポイントがあります。例えば最近では、弊社の中で組織マスターという仕組みを作らないといけないのですが、従来であれば周りから要望を受けて、いかに忠実に作るのかどうかが大事にされたと思います。これからはより一歩先に、要望を上回って、自ら仮説を立てて「こういう機能あったらもっと効率化できるのではないか」といった、一歩先のことについて、吉田さんと相談しながら進めていこうとしていて、この部分が重要じゃないかなと思っています。

情報戦略テクノロジーさん、ISTラボとは?

情報戦略テクノロジー PM部アカウントマネージャーの遠藤さん

遠藤さん:

DX推進でエンジニアの需要が増える一方で、エンジニアを確保することは難しくなってきている状況です。その中でも企業様の求めるエンジニアが少ない上に、ユーザーロックインされていることが多い状態です。そのためエンジニアが市場に出て来ない上に、出てきたとしてもすぐに就職先の決まってしまうという状態です。その状況を打破するため「ISTラボ(※情報戦略テクノロジーが提供するラボ型開発)」では4つの取り組みを行っております。

引用元:情報戦略テクノロジー「ラボ開発」の案内資料より「ラボ開発が行う4つの取り組みについて」

1つ目は「優秀な社員の採用」です。弊社の特徴は「元請け」であり、かつ案件の業種を絞らないので、さまざまなエンジニアの採用が可能です。

2つ目は、「パートナー企業様との密な連携」です。数多くの協力会社様の中から3社ほど厳選して取引をしております。そちらの3社の協力会社に関しましては、上層部の方との連携を行っており、融通を利かすような状態でチーム構成ができます。

3つ目は「ユーザーロックインからの脱却」です。弊社もユーザーロックインされているエンジニアがいますが、ユーザーロックインから脱却できるように、ラボというチームでリカバリーできる体制を構築しています。

最後4つ目は「スペシャリストの確保」です。必要なタイミングで有識者のアサインし、高品質なプロジェクト遂行をサポートします。

「ISTラボ」は必要な時に必要な分だけ人手を増やすことができる「拡張性を持ったチーム」を使えるサービスです。

ユーザベース様のご支援の状況や背景は?

情報戦略テクノロジー 営業担当の國本さん

國本さん:

ユーザベース様には2021年の3月から支援を開始し、それから約2年間ご支援させていただいている状況です。当時はコーポレートサイトやLPサイトのインフラ基盤の運用保守案件で0.4人月の工数からご支援から開始し、現在ではインフラ領域とアプリ領域で合計4.4人月のご支援に至り、日々の改修や社内ツールを使いやすくするといったご支援をしています。

ユーザベース様をご支援させていただくことになったキッカケでもあるのですが、やりたいことが固まっていない状況であっても、弊社が柔軟にチーム体制を構築してご支援ができる、という点でニーズがマッチしたかと考えています。 工数につきましてはお客様と相談の上、現在の対応状況を踏まえた適切な工数を弊社のPMとすり合わせてから決定しています。実際にこのタイミングからは少しインフラの方が減りそうだね、ということであれば、工数の調整をして状況に応じて工数を増減させるという形でご支援をしています。

PMに聞く、開発の現場について

情報戦略テクノロジー PMの吉田さん

現在の業務内容やチーム体制は?

吉田さん:

現在は2チーム体制で対応しており、一つはITインフラチームで、ユーザベース様が展開しているサービスのインフラに関する運用保守を担うチーム。あとはアプリチームで、主に業務アプリの運用保守・改善をお手伝いしているチームで、この2チーム体制で対応しています。

業務で気をつけていることは?

吉田さん:

基本的に「お客様」と「発注された側」という意識をお互いに取り除けるような形でお仕事させていただくというのを心掛けています。会社様によってそれがうまくフィットする距離感は違ったりしますが、ユーザベース様の場合は皆さんすごいフランクに接してくださるので、どちらかというと、弊社側があまりかしこまらないように、同じ空気感で接していけるように、というところを心掛けています。

これまでの支援内容は?

吉田さん:

インフラの方では運用保守がメインではありますが、それに伴ってサービスを運営していく中で、軽微なコンテンツ改修のご相談をいただくようになり、それに対してチームの中でできる範囲で対応させていただき、「こういう対応したいのだけどできますか」というご相談の中では、「ここは専門家にご相談していただいた方がいいです」とか、「これは我々の中で工夫すればできます」というところが出てきて、そういったサービスの運営に関わるようなところでも、少しずつご支援の幅を広げている状況です。

アプリでは、ここ1年ほど主に担わせていただいているのが、業務システム間のデータ結合です。ユーザベース様は、業務ごとで色々なサービスや自社システムを運用されていて、それぞれは業務の中で必要なデータを連携したり、繋ぎ合わせたりしながら業務を運用されています。そういった中で、運用でまかなうようなシステム間のデータの繋ぎ込みや必要な変換を、より便利に効率よくできるような中間ツールを開発しています。

今後の開発はどうなっていく?

吉田さん:

特にアプリ側の変化が大きく、先ほど申し上げた色々なツールを開発させていただきましたが、ツールを開発していく中で業務的な課題やツールを運用する上での課題・改善点が出てきまして、それはツールの範囲だけでなく、そのツールが取り扱うデータそのものの扱いや管理というところでも出てきています。

そういったところは王さんからお話しをいただきまして、相談しながら俯瞰した観点で取りまとめをして、サービス間のハブになるような一つのシステムを作れないか、現在検討と設計を進めています。

再びユーザベースCIOの王さんへ

今後の展望についてお伺いできますか?

王さん:

引き続き、情報戦略テクノロジー様とパートナーシップを取り、攻めの領域や我々からリクエストを出して、それを受けて動いていただくだけじゃなくて、もっともっと皆さんから「最近こういうトレンドがあるから考えてみたらどうか」とか、より提案型にシフトしていただけたら、事業の発展もより加速できるかと思っています。

面白いことはやりたいと思っていますので、ChatGPTなどのトレンドがある中でいくつか考えていることはありますが、通常の契約通りのことだけじゃなくて、契約以外の点において、情報戦略テクノロジー様が掲げる「0次DX」がまさしくそうかなと思っていますので、一緒により良い未来を作れていけたらと思っていますので、ぜひ引き続き情報戦略テクノロジー様に開発をお願いしたいと思っています。


編集部:王さん、遠藤さん、國本さん、吉田さん、取材協力ありがとうございました!またDX推進の状況を伺いに訪問させていただきます!


 

 

■ 会社概要 ■
会社名 : 株式会社ユーザベース / Uzabase, Inc.
代表者 : 稲垣 裕介、佐久間 衡
本社所在地 :東京都 千代田区 丸の内2-5-2 三菱ビル
設立  :2008年4月1日
URL  : https://www.uzabase.com/jp/
 
■ 担当者プロフィール ■
王 佳一 (おう けいいち)
ユーザベース執行役員 CIO/CISO 兼 IT Strategy Division Leader
グロービスやビズリーチなどITベンチャー数社を経て、2022年7月にユーザベースに入社。ユーザベースでは主にコーポレートITと情報セキュリティーの2つ領域を担当し、全社的なDXや業務改善、情報セキュリティーの強化等に尽力中。

■ 会社概要 ■
会社名 :株式会社情報戦略テクノロジー
代表者 :代表取締役社長 高井 淳
所在地 : 東京都渋谷区東3-9-19 VORT恵比寿maxim8F
設立  :2009年1月23日
URL  : https://www.is-tech.co.jp/
 
■ 担当者プロフィール ■
遠藤 健斗 (えんどう けんと)
情報戦略テクノロジーPM部アカウントマネージャー。
2017年に情報戦略テクノロジーに入社。自社プロダクト『WhiteBox』の立ち上げメンバーとしてPMを担当。その後同社ベトナム子会社の代表を勤めたのち、2022年よりPM部アカウントマネージャーに。ラボ開発という前例の少ない開発スタイルで多くのクライアントを支援する。

國本 樹紀 (くにもと たつき)
新卒で2020年に情報戦略テクノロジーに営業として入社。業界を問わず大手クライアントの営業担当やビジネスパートナー開拓に従事。システム開発の発注担当者の悩みに寄り添い、エンジニア調達から発注工数の調整まで幅広く支援する。

吉田 直樹 (よしだ なおき)
寿司職人からキャリアチェンジして2021年に情報戦略テクノロジーにエンジニアとして入社。Webアプリケーションエンジニアとしてのキャリアを積み、ここ10年程はPL、PMとして大手クライアントのシステム開発を支援。

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