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産学官連携で女性のリスキリングを後押し。人手不足解消なるか

仕事をする女性会社員

情報発信元:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD131N30T10C23A8000000/
(別サイト「日本経済新聞」を別ウィンドウを開きます。)

経済環境の変化に対応するためのリスキリング(学び直し)が重要視されており、特に女性のリスキリングが注目されている。AIなどの進化により、主に女性が就いている定型的な事務業務が減少することが予測され、女性人材をデジタル領域に誘導することが国の成長力に影響する。

日本女子大学がDX人材育成コースを開講し、就労経験のある女性を対象に、国の助成を受けた低コストでリスキリングを提供する。国の援助が入るため、受講生の負担もPC貸与込みで8万8千円と抑えられている。

また、ベネッセホールディングのグループ会社Warisは、非正規女性を対象にリスキリング講座を開催。女性の潜在能力を開花させるリスキリングは人手不足解消にも大きく貢献するとし、正社員として雇用したい企業と受講生とのマッチング支援もしている。

これら産学の動きの背景には国が掲げる政策「女性活躍推進策」の本格始動がある。今夏より経済産業省は「キャリアアップ支援事業」をスタートしており、人材サービス企業を認定して転職希望者たちにリスキリング講座、キャリア相談、職業紹介などを提供をしている。それらサービスの受講料等の費用のうち半額は国が補助する。


【執筆者コメント】

本記事内に登場した株式会社Warisが発表した調査レポート「女性のリスキリング白書2022」からは非常に興味深い情報が読み取れました。

世の女性たちは既に始めていたリスキリング

女性たちの間で「リスキリング」という言葉の浸透率は38%と低いものの、リスキリングを既に実施しているという割合は78%という高い数字であるということです。定性データなどからは、みなさん本業の合間で学習されているようで、学習意欲や将来に対する危機感を持っているという印象です。

ただし課題も当然あり、学習時間の捻出が難しかったり、そもそも何を学ぶのが自身のキャリアにとってベストなのかわからない等、悩みはさまざま。

特に私が気になったのは、正規雇用と非正規雇用とを比較したときに、非正規雇用の人たちの方が「リスキリングの効果が実感じ辛い」傾向があることだ。非正規から正規雇用に転職したいという人の場合、リスキリングで座学は可能だが実務経験が積めないが故に履歴書や職務経歴書に書けなかったり、面接でアピールすることができず、効果が実感できないというケースがあるようだ。

一度出産や育児で正社員を離れた女性が、正規雇用で再就職するにはハードルが高い現状だ。

「好きで非正規雇用を選んでいる」女性たちがいる

私の周囲の話を聞いても、出産を機に会社を退職し、その後はパートで働いているというパターンが多い。そういった家計では生活費を主体で稼いでいるのは夫側で、妻側は育児を主体にして隙間時間でパートをするというご家庭が多い。

そう、私は女性は「仕方なく」非正規雇用を強いられているんだろう、と思い込んでいた。「本当は正社員として働きたいけど子育てがあるから諦めた」「子育てが落ち着いたら元の職場に復帰したい」と考えている方ばかりだろうな、と。

しかし、厚生労働省「労働力調査2022年(令和4年)平均」によると、非正規で働く理由の第一位は「自分の都合の良い時間に働きたいから」というものだ。

下図の統計データを見ると、女性が非正規雇用で働く理由の第1位は「都合の良い時間に働きたいから(34.5%)」です。次いで「家計の補助・学費等を得たいから(22.1%)」「家事・育児・介護等と両立しやすいから(15.4%)」という理由が続きます。

引用元:厚生労働省「労働力調査( 詳細集計)2022年(令和4年)平均」

上位1位〜3位の理由を回答した人たちは、家計の主体を担っているわけではなく、自らの意思で非正規という融通のきく働き方を選んでいるようです。

ここまで書いていて私が感じる違和感は、経済産業省が始めた「キャリアアップ支援事業」は、非正規で働く女性たちとの本音の主たる部分を汲み取れていないのでは?っというものです。第6位の「正規の職員・従業員の仕事がないから(9.5%)」の層に向けた施策としては有用かとは思うのですが。

多様な働き方がし辛い日本の雇用システム

コロナ禍以降、リモート会議が当たり前のものになり、全員で同じ場所に出社して業務に臨まないといけないという認識はだいぶ崩れたと思います。実際コロナ禍のリモートワークで現場が回ることが証明された企業が多いのでしょうか。

令和に入り、個人の価値観はより変化・多様化し、働き方に対する考え方もさまざまになりました。こうなった今、既存の雇用システムの枠組みでは対応することは難しく、人材はいるけど労働力に変換できていないのが今の日本の現状かと私は考えています。

個人が望む多様な働き方ができる社会になるには、まだまだ時間がかかりそうです。

執筆者/
リビルダーズ編集部 丹治 秀人

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