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AIグラドル 「さつきあい」写真集の販売終了から見る生成AI商業化への課題(③消費者心理について)

情報発信元:https://abema.tv/video/title/89-71
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(※2023/07/21追記 番組の配信期限が切れたため、番組TOPページにURLを変更。)

画像生成AIから生まれたAIグラドル「さつきあい」が集英社「週刊プレイボーイ」にてデビューを果たしてから約一週間後の6月7日、デジタル写真集”生まれたて。”が販売終了となった。
本記事では、引用元記事を題材として、「生成AI商業化への課題」について、全3回(①権利問題②倫理的課題、③消費者心理)で深掘りしている。

前回の第2回では、②倫理的課題 について取り上げた。

(↓下記、前回の記事)

AI生成物の責任者は誰か?

詳細については、「②倫理的課題について」を参照していただきたいが、以下に要点を簡潔にまとめる。

【倫理的課題(日本国内)】

*倫理的課題に関する要点*

AIが出力する生成物は、生成過程が不明。出力された生成物によって問題が生じた場合の責任の所在が曖昧。
学習させる情報に意図しない偏りや偏見等のバイアスが含まれていた場合、生成物に反映されてしまう恐れがある。

②現状”たまたま”似てしまったAI画像について、実在する人物の人格権を論点とした判例は現時点では存在せず、どの程度認められるのか未確定。

③ディープフェイク等が世界中で問題となっているが国際的的なルールや法整備が追いついておらず、対策が難しいのが現状。「広島AIプロセス」の会合により”信頼できるAIの普及”に向けたルール作りを目指している。

【執筆者コメント】
第3回では、③消費者心理 について取り上げます。

消費者心理の論点は、「生身のグラドルでは表現出来ない、より過激な画像を生成することも可能となり、既存のグラビアアイドル市場を侵食し自社競合となる恐れがあるのか」というものである。

▶︎生成AI市場の規模(予測)
生成AIに対する世界市場の期待値は非常に高く、ボストンコンサルティンググループによる生成AIの市場規模(Total Addressable Market=獲得可能な最大の市場規模)試算では、2027年に1200億ドル(約17兆円)規模になると予測しており、さらに今後の展開によっては市場規模が拡大する可能性があるとしています。

▶︎AI生成画像の利用状況
AI生成画像の使用状況を調査したところ、現時点においてはAI生成画像の商業利用はグレーゾーンであることなどから、消費者は生成AI画像を楽しむというよりは、ネット上で公開されている画像生成AIツール等を使用して「自分の思い描く理想の作品を自ら”出力” 出来る」、「自身が出した指示から思いもよらない画像が生成される」こと等の生成AI技術の進歩自体を楽しんでいるようです。さらに自ら生成したAI画像をSNS等に掲載し、一般ユーザー同士での交流も活発に行われている様子が見受けられました。

一方で、著作権保有者や人物本人によって自らの著作権物(自らの画像や声)を学習させたAIモデルを販売している事例も見られ始めています。元画像の著作権や肖像権の侵害の可能性が低く、現状では最も商業利用しやすい形式ではないかと思われます。

▶︎AI生成画像が既存市場と競合するか
AI生成物(グラビアアイドル写真、絵、背景・・・etc)は、「既存市場と競合するのか」については、市場予測等の様々な推測が立てられているものの、現時点では明確な答えを得ることはできませんでした。ただし生成AI市場の成長予測では急速に拡大する可能性が高いことや、生成AIへの消費者の関心の高さから既存市場への一定の侵食は避けられないと考えられます。

しかしながら、AIは「0→1を生み出すこと」は非常に苦手であり、その生成物はあくまでも「出来の良い二番煎じ」です。

今後も市場のトレンドとなるような「プロトタイプ(原型)」は、あくまで生身の人間が創り、プロトタイプの創造者(著作権者)が指示を出したAIが「マスプロダクションタイプ(量産)」を担うという形態になっていくのではないでしょうか。

以上、③消費者心理 についてまとめました。

生成AIに関する問題や課題の解決について、更なる議論の深まりに期待したいです。

↓本記事は全3回の連載となっております。下記バックナンバーとなります

生成AIによる権利侵害と権利保護の両面の議論が必要ことがわかった
AI生成物の責任者は誰か?
生成AIの既存市場への侵食は避けられない

執筆者/
リビルダーズ編集部 丹治 秀人

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