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【畜産×DX】セイコーエプソンと長野県がAI活用により畜産業の効率化・省人化を推進

情報発信元:https://corporate.epson/ja/news/2022/221101.html
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セイコーエプソン株式会社と長野県は、DX推進による畜産振興に向けた協定を締結しました。

 昨今農林水産業に従事する人の減少や高齢化が課題となっています。そのため労働負荷の軽減や効率化を行う必要があります。今回提携した協定では、環境負荷、労働負荷の改善や生産性向上、さらなる付加価値を創る取り組みを行い、畜産業のDXを推進します。

セイコーエプソン社が保有するセンシング技術(定量的な情報を測定し取得する技術)、認識・分析技術、AI技術と、県の畜産試験場が所有する飼養管理技術、血液や飼料の分析技術、健康診断技術等のノウハウを連携します。

2022年度においては主に以下の2つの取り組みを行います。

・AIによる牛の脂肪の付き具合の画像判定

これまでは熟練の技術者の目視により牛体にどれくらい脂肪が付いているかを判定していましたが、画像をもとにAIが判定できるようにします。客観的な視点で経験の浅い人でも測定ができるため、牛の体型管理がより正確になることが見込まれます。

・AIによる飼料成分の判定・分析

飼料成分分析は牛の健康管理において重要であり、様々なデータを用いてどれくらい飼料を与えるかを算出しています。専門知識が必要であり、かつ多くの時間や手間、費用がかかっていました。AIにより飼料画像から成分を推定することで、速く、コストを抑えて分析ができるようになり、経験の浅い人でも飼料給与量の計算をできるようにします。これまで属人化していた業務を標準化し、多くの手間や費用を抑えることができるようにします。

【執筆者コメント】
今回はセイコーエプソン社と長野県の畜産DXを取り上げました。プリンターやスキャナなどの技術に強みを持つセイコーエプソン社の特徴が有効に出ている取り組みです。

記事にもあるように、昨今第一次産業では深刻な人手不足に見舞われています。農林水産省の統計を見ると、仕事として農業に従事する人を指す基幹的農業従事者の人数は年々減少しており、平均年齢も65歳以上の状態が続いています。また新規就農者数もやや減少傾向にあることから、今回取り上げたようなITによる効率化が必要な状況です。

農業、畜産のDXにおいては、今回取り上げたようなAIによる画像解析、AIカメラの活用等の導入は有効だといえるでしょう。例えば株式会社コーンテックは養豚家向けにスマホのカメラで豚を撮影するだけで簡単に体重を測定し、枝肉のバランスも把握できるアプリケーションを開発しています。株式会社スカイマティクスはドローンで撮影した画像をもとに農地管理を行うサービスを展開しており、これを活用すれば農地の雑草や葉色、生育状況等をスピーディーに楽に把握できます。

またAI画像認識の技術は農業以外にも様々な業界で活用され始めています。製造業に目を向けると、工場や物流倉庫内での活用があります。キヤノン株式会社はVision Editionというネットワークカメラを利用したソリューションを提供しています。作業者が点検、検品の業務を行う時の負担を軽減するもので、工場の人手不足、費用削減ができるものです。また先月当編集部で取り上げたLinne株式会社のAI図鑑アプリ、「リンネレンズ」のようにtoCのサービスに用いることも多い技術です。

このようにAI技術、画像処理技術の利用が進んでいるため、画像処理エンジニアなどの需要が高まっています。転職・求人サイトdodaにて、技術職の中で「画像処理」についての求人は11月13日17時時点で385件掲載されています。そのうち、例えば株式会社セブン&アイ・ホールディングスでは、店舗業務やマーケティング施策等を変革するために、AI技術等を活用しており、革新的な業務のあり方を検討するスペシャリストとして画像処理エンジニアを求めています。

今後もAI画像認識技術は選択肢の一つとして使用されていくと考えられます。人手不足や属人化といった課題がある業界にとって、本事例は注目すべきものであると言えるでしょう。

執筆者/
リビルダーズ編集部 橋爪 勝万

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