情報発信元:https://www.fnn.jp/articles/-/427856
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2022年10月3日に起きてしまった、通園バス内に園児が取り残されて亡くなった悲しい事故を受けて、大阪市で自動車電装品の開発を手掛ける株式会社TCIはバスに置き去りにされた園児がいないかを監視するAI搭載カメラシステムを開発した。
このAI搭載のカメラを車内に向けて設置することで、車内にいる人間だけをAIが感知し、もし感知した場合は警報(ブザーを鳴らしたり赤色灯をつけたり)を発したり、スマートフォンに通知する等をして周囲に危険を知らせる。また、本システムについては車のエンジニが切れた後でも自動で作動するので、カメラをONにし忘れるなどのヒューマンエラーも防げるものとなっている。
現在、神奈川県厚木市で実証実験がスタートしており、同社は実証実験で課題を改善して来年の春に実運用を目指している。さらに政府では2023年4月から全国の保育所や幼稚園名の通園バスに、園児の置き去りを防止するため本AI監視カメラのような安全装置の設置を義務付ける方針だ。
【執筆者コメント】
ここ最近、AIによる映像解析と監視カメラを組み合わせたシステムの話題は多くなってきているが、今回は車の中にいる人間をいかに感知できるかという話題。以前の記事でも書いたが、AI検知による技術は年々進歩しており、動体検知したものが人間なのか車なのかを判別したり、もし車であったのなら車両の種別は何に該当するのかまでAIに学習させることで正確に判別ができるようになってきている。
【参考】「NECのAI技術により交通量調査が無人化、今後の普及には住民からの理解が必須」
一見すると今回のAIカメラシステムには隙がないようにも思えるが通園バスの中の園児を検知する場合、検知対象が物理的に小さく、かつ座席に下等の死角に入り込んでしまい検知ができない場合も想定される。それを見越しての4台のカメラで車内の死角をカバーすることを前提に本システムを提供するということで、良く考えられているという印象を受ける。
内閣府の発表によると、2021年に全国の保育所、幼稚園、認定こども園等において、園児の事故件数は2,347件とのことだ。また、死亡事故は悲しいことに5件も発生しており、発生時の状況としては睡眠中、そして本件のような送迎バス内への置き去りによって発生している。死亡事故件数はここ数年は減少傾向にあるものの、依然として発生している状況であり、ケガなどの事故件数に至っては顕著に増加している。この背景には保育現場の慢性的な人材不足が大きく関係していると考えるのが自然だ。
AIをはじめとする最新のデジタル技術は、保育現場のような人手不足の環境への活用が強く望まれており、このデジタル時代においては人とAIが協働関係を築けるかが大きな焦点となる。
執筆者/
リビルダーズ編集部 木城 秀人