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林業研修に活かされるデジタル技術、未来の杣人たちの育成を支える

情報発信元:https://www.fnn.jp/articles/-/414665
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2022年4月福島県は林業に携わる人材の確保と育成のため、新しに林業の訓練学校「林業アカデミー」を開校した。訓練生の募集自体は2021年夏からしており、第一期生は14人が集まった。

本アカデミーの特徴は最先端のデジタル技術を多く導入しており、ドローンやVRシュミレーターを使った研修機器などを揃えている。このおかげでたとえ雨が降ったとしても、屋内での多種多様な研修が可能とりなり実習訓練が遅れることなく遂行できる。

このように、従来の研修では先輩と一緒に山に赴き現場での研修をする必要があったが、本校では実地研修とデジタル領域を2つをうまく使い分けることで訓練生たちのストレスを取り除くことに成功している。

福島県がここまで力を入れるのには、近年の深刻な人材不足を重くみているためである。東日本大震災前の2010年の新規就業者は242人に対して、2020年は78人と3分の1まで減少した。このままでは県内の林業の将来が危ぶまれる。私たちの生活にとって木材はあらゆる製品の材料であるため、生活に欠かせない貴重な資源なためだ。

林業に従事する者は新たに木を植えることもあれば、切って加工して販売したりもする。このようにして森林が絶えないようバランスをとりながら次の世代に受け継いでいくことをまた重要なミッションとしている職業だ。だが、林業に対する世間の印象は3K、いわゆる「キツイ」「汚い」「危険」というものが先行してしまい、若い世代が目を背けてしまう側面があるのもまた事実。

今回の林業アカデミー開校を足がかりに林業という職業の活性化と、県内の森林を守るというミッションを遂行するため、福島県の戦いは始まったばかりという印象だ。

【執筆者コメント】
最近の時事ニュースでも取り上げたように、農業・水産業でもデジタル技術の導入が着々と進んでいる。今回紹介した林業も例外ではなかったので、日本の農林水産業にもデジタル化の波がやっときたか、という印象を受ける。前総理大臣菅さんがDXの旗振り役を務めたくれた功績だと筆者は考えている。今は推進力のある河野さんがデジタル大臣のポジションにいるので、政府のデジタル活用がこの2〜3年でグッと進むことを期待している。
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林業の現場で活躍の特に期待が集まるのはドローンだと感じた。ドローンを森林で飛ばして周囲の森林の発育状況をデジタル化し、どこの木をどれだけ切るのか等の作業量が把握でき、必要な人手の割り当てが可能となる。広大な森林の管理業務の大部分をドローンが肩代わりしてくれることで、人材不足と管理の効率化という両面において現場をサポートしている。

さらに筆者が特に驚いたことがある。それは今のドローンは「木を運ぶ」のだ。これには正直目を疑った。ドローンというと情報収集役という先入観が強くあったのだが、今や飛行パワーを強化し木材をクレーン車のように持ち上げて運ぶという運用ができるのだ。
【参考】「株式会社マゼックス 森飛15  林業用運搬ドローン」

産業用ドローンの製造・販売を専門としているマゼックス社は住友林業と共同開発をした上記のドローンは15kgまでの木材を吊り下げて運ぶことが可能で、2オペ(木を着る人間とドローンを操作する人間の2人)での運用が可能。作業効率は驚きの16倍で、たった1台で10人分の作業スピードを叩き出す。従来の林業の印象がガラッと変わってしまうスーパーマシンだ。

デジタル技術を活用することで、ビジネスとして林業を見つめ直すことで可能性はもっと広がるのではないかと感じた。林業は決して儲かる仕事ではない。国や自治体からの補助金がないと生活が苦しいという声も聞く。しかしじゃあビジネスチャンスがないかというとそうではなく、山を手放したいという人が一定数いるようで、そういう人から山を買えば経営の幅がかなり広がるという話もある。どんな山でも良いというわけではなく、そこから採れる木材の種類や量によってかなり変わってくるそうだ。ちゃんと収益が見込めそうな山を買い、その山を管理するための機材を選び、それを扱う技術力があればビジネスとして成り立たせることは夢ではないようだ。

国土の70%の森林という世界屈指の森林大国である日本だが、現状は管理が行き届いていない森林が多いという。それに加えて林業事業者数は昭和55年から減少が続き、2015年では3分の1以下まで減少。高齢化も深刻で他の産業と比較すると13%も高齢者人口が多い。
(参考データ)林野庁

そこで国は2003年より林野庁の補助事業として「緑の雇用」という機関を立ち上げて未経験者採用に力を入れ始めた。この機関がうまく機能し、それまで年間の新規就業者が2000人で推移していたのが、3000人ベースまで押し上げてることに成功している。

今後デジタル技術活用の活性化と両輪で国に期待することは、林業のPRであると考えている。林業の魅力として、自然豊かな環境での暮らしと仕事という点に魅力を感じる人は一定数いるだろうし、環境保護や森林管理の停滞といった問題に一石を投じられるやりがいや、山を所有することでの経営という側面の面白さ、自然の中で体を動かして働く楽しさなど、林業を知れば知るほど魅力的な点は多いと感じた。

執筆者/
リビルダーズ編集部 木城 秀人

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