結局、DX(デジタルトランスフォーメーション)ってどうやって進めればいいの?をできるだけ簡単な言葉でわかりやすくご説明いたします。本記事では、DXの進め方・事例について解説します。
DXってどうやって進めるの?【後編】
DXって実際進めるためにまずどうすれば良いのか?
【前編】では、まずはDX推進担当者が気を付けるポイントについてお話してきました。【後編】では、進め方のアプローチと国内外の事例についてお話します。
>前編はこちら
【ネコちゃんでもわかる】「DXの進め方」について、ポイントを、専門用語を一切使わず、超~~わかりやすく。【前編】
DXを進めるためのアプローチ
① ミッション策定 (策定しない場合は③までで止めておく)
② デジタイゼーション (ツールを変える)
③ デジタライゼーション (業務を変える)
④ DX実行
というのが大きな順番です。②③がいわゆるデジタル化です。
以下、「部品メーカーを想定して」お話していきます。
① ミッション策定
現在はイチ部品メーカーですが、ミッション策定にあたり創業者の想いをヒアリングしたところ
「もともとは個人用ロケットが作りたかった。成り行きで部品メーカーになった。」
ということが分かりました。思い切って、この創業者の想いをミッションとして掲げます。
ミッション「車を運転する感覚で、宇宙に行ける世界を作る」
突拍子もないのですが、DXというのはこのくらい、今の会社の延長線上からかけ離れた理想を掲げることが重要。なぜならDXとは「新しい企業に生まれ変わること」だからです。
DX:
イチ部品メーカーから「車を運転するように、宇宙に行ける世界を作る」会社を目指す
デジタル化:
イチ部品メーカーとして、さらに生産性を上げていく
ミッションがあるかないかで、その後やることがまったく違ってきます。
② デジタイゼーション (ツールを変える)
ミッションは決まりました。
次は、ミッション実現に集中できるように、今現在の会社の業務を効率化していきます。
この部品メーカーは、1点1点電話・FAXで注文を受けてオーダーメイドで部品を作っているため、手間が多い状態です。既存業務で手いっぱいの状態から脱却を図らなければ、ミッション実現は夢のまた夢です。
そこでまずツールを変え、「WEBカタログでの注文受付」に切り替えます。
お客さんからよく注文を頂くパターンを洗い出し整理。WEBカタログ上に「基本パターン」を並べます。WEB上で、お客さんに「基本パターン」を選択してもらい注文を受ける流れに変えることで、電話で1点1点オーダーをヒアリングするという業務がなくなります。また、1点1点オーダーメイドで作る工数も削られ、デジタイゼーションだけでも大幅な工数削減が実現できました。
③ デジタライゼーション (業務を変える)
ただし、②デジタイゼーションだけでは「オーダーメイド」が実現できなくなります。
そのため、基本パターンから選択+基本パターンを調整したいお客さんからは補足指示をいただき、オーダーメイドするというオペレーションにします。
ここで「補足指示に対応する」あたらしい業務が生まれます。補足指示をパソコンで管理し、実現可能かジャッジし、パソコンでお客さんとコミュニケーションを取って合意形成をし、費用の見積もりをするという業務です。
この業務を担当する人は、電話でオーダーメイドを受けていた頃よりも時間がかからなくなったため、浮いた時間でブログ記事を書くというあたらしい業務も受け持つことになりました。
④DX実行
②③をやりつくし既存業務の工数を大幅に削減に成功したら、DX実行開始。ミッション実現に向けた動きを始めます。
「車を運転するように、宇宙に行ける世界を作る」というミッションは、イチ部品メーカーだけでは実現できません。このミッションに賛同してくれる他社との連携を図ります。
民間ロケットメーカー企業、地方自治体、コミュニティ運営会社などと「エコシステム」を作っていきます。エコシステムというのは、業種業界を越えて同じ目的に向かい協力し合う企業のグループのことです。買収などはせず、WEBでつながり、対等にプロジェクトを進めていきます。
この頃には部品メーカーとしての仕事は2割、残り8割は「個人用ロケット」実現のための仕事が主業務になり、業務内容も会社の考え方もまったく違うモノになっています。
■ポイントは「ミッションの策定」
なぜミッション策定がポイントなのかというと、ミッションがないと「現場の抵抗」をいさめ、まとめる言い分がなくなってしまうからです。
DXとは、途中で業務内容がどんどん変わっていくものです。デジタイゼーションよりもデジタライゼーションの方が業務が変わり、デジタライゼーションの比ではないほどDXではさらに業務が変わります。
すると当然、社員から「なぜ仕事を変える必要があるんですか?売上下がってもいいんですか?」という抵抗が発生します。この時「少子高齢化に備えて業務効率を上げて、人を削減したいんだ」と答えて賛同を得ることは出来るでしょうか?出来るわけがありません。
「ウチは個人ロケットを作る会社になっていく。そのために現在の仕事は効率を上げて人手がかからないようにして、個人ロケットを作るための仕事にみんなの工数を集中させたいんだ」と言えばどうでしょう?辞めていく人もいるでしょうが、賛同も得られるはずです。
壮大なミッションがないということは、今の仕事を効率化して人を減らすことが最終ゴールになってしまうため、社内協力が得られず途中で頓挫してしまうということです。
まずは、ミッションの策定。策定しないなら、デジタル化までに留めておく。少子高齢化に備え、人を減らしていくこと自体は意味のあることです。また多くの企業がデジタル化を進める中、アナログから脱却できない企業は取り残されていくでしょう。デジタル化まででも、十分価値はあるはずです。
以上がDXの大きな流れです。並行して、基幹システムの刷新・クラウドへの移行など、進めていくことなどたくさんありますが、大きな流れはこのような形です。
■くわしくはこちら
>デジタイゼーション⇒デジタライゼーション⇒DXの流れがさらにくわしくわかる記事
デジタライゼーションとDXのちがいって?
>DXは自社と他社の協業で成し遂げるモノでることがわかる記事
DX後の世界、覗いてきた。( プラットフォームってそういうことか )
>DXの具体的な作り方が、さらに細かくイメージできる記事
「ジャーニー」を知ると、DXがやけにわかりやすくなる件① ~ どのくらいビジネスを変革すればいいのかわかった ~
「ジャーニー」を知ると、DXがやけにわかりやすくなる件② ~ データサイエンティスト不足は言いわけかも ~
「ジャーニー」を知ると、DXがやけにわかりやすくなる件③ ~ さよならターゲット設計 ~
国内外の事例紹介
「デジタル化」に留まらない、ミッションあふれるDXらしい事例をご紹介します。
▼国内事例
① コマツ「建築現場の仕事を進化させる」
コマツは、ショベルカーなど建築現場で使う建機のメーカーですが、DXによって「建築現場の仕事を進化させる企業」に変革を遂げました。たとえば、これまで建築現場の管理は、現場監督が歩いて回って目視していました。リアルタイムで現場全体の状況を把握することができなかったところを、センサーやドローンを駆使して、建築現場の「リアルタイム3D化」に成功。画面上で現場管理できるようにするなど、世界中から注目されているDX事例です。
■くわしくはこちら
>「デジタル化」と「DX」の違いについて、とことん、くわしく、わかりやすく解説。
② サントリー「企業戦士の健康を底上げする」
サントリーはご存じ飲料メーカーですが、飲料を提供する企業から、健康を底上げする企業へと変革を遂げようとしています。「SUNTORY+」というアプリケーションを開発し企業に提供。SUNTORY+を通じて働く人たちの健康行動を習慣化させるサービスを提供しています。
■くわしくはこちら
>まず、どのポジションを狙うべきか考えることもDX。
▼国外事例
① 平安保険「平安グッドドクターアプリ」
中国の保険会社・平安保険は、イチ保険企業を超え、社会問題を解決する企業へと変革を遂げています。中国は個人開業医が多く、質のばらつきが社会問題になっていました。そこで平安保険は、開業医のプロフィール情報が閲覧でき、アプリ上で無料診断が受けられるようにすることで、ハズレをつかむことを防ぐ「平安グッドドクターアプリ」を開発。2億人のユーザーが使うモンスターアプリになりました。
■くわしくはこちら
>DX後の世界、覗いてきた。( プラットフォームってそういうことか )
②国境なき記者団「検閲なき図書館」
少し変わり種の事例。世界中のジャーナリストによる非政府組織「国境なき記者団」が、言論の自由を守るため、マインクラフトというあらゆる国からアクセス可能なゲームの中に「図書館」を作った取り組みです。世界にはいまだに自国が発信する情報以外見ることを禁止されている国が存在します。そんな国の人々も公平に情報を得る機会を与えるプロジェクトです。デジタルの力を駆使すると、このようなことも実現可能になります。
■くわしくはこちら
>広告もDX。次元がちがうDX時代の広告7選。
「DXってどうやって進めるの?」まとめ
進め方、ポイントについて大まかにお伝えしました。
特に強調したのが「ミッション策定の重要性」です。例に挙げた「個人ロケットを作る」レベルのエッジが効いたミッションを掲げるDX事例が日本には現状あまり存在せず、多くが「デジタル化による効率化」で終わっています。ミッション不在のDXはゴールが見えず、社員の共感を得ることもできなくなるため途中で頓挫してしまうというのが黄金パターンです。
まずはぜひ、ミッション策定を通じて「なぜ自社がDXをやる必要があるのか」を明確にすることからはじめてみてください。
「国がやれって言うから」という理由でDXを進めても、道半ばで倒れてしまうのは目に見えています。誰が聞いてもわくわくするようなミッションを最初に掲げることができれば、成功確率をグッと上げることもできるはずです。
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執筆者
リビルダーズ編集部