情報発信元:https://www.ana.co.jp/group/investors/data/kessan/pdf/2023_02_4.pdf
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2月15日、ANAホールディングス株式会社は2023〜2025年度の中期経営計画を発表しました。メインセグメントである航空事業を注力的に伸ばしつつ、それ以外の事業も強化をし双方の回遊率を高めることで、連結売上を2023年度で19,800億円、2025年度は23,200億円に伸ばすとしており、3年の中期で17%増収を目指すとのことです。
また航空事業において、2025年度の営業利益目標を1810億円とおき、昨年2022年度比で1.9倍とするとしています。
また、今回の中期3年経営戦略では、3年間を成長戦略の足元固めとして、新経営ビジョン実現に向けた変革の時期と位置付け、2025年にはコロナ前の利益水準に戻すとしています。「安全」「人的資本」「DX」を経営基盤にESG経営を推進し、2026年以降にはコロナ前を上回る利益水準、財務基盤構築を目指すとのことです。
新しく事業戦略として以下3本の柱を立てています。
1)マルチブランドの最適化と貨物事業の拡大によるエアライン事業の利益最大化
2)事業分類に応じたリソース配分による航空非連動の収益ドメインの拡大
3)グループの持続的成長に向けたANA経済圏の拡大
メインの航空事業では、2023年度下期に就航予定の新ブランド「Air Japan」や、統合サービスプラットフォーム「ANA Smart Travel」を推進します。
ノンエア事業における収益拡大に向けては、強化事業の中核化を進めるほか、メタバースやアバター、エアモビリティ等への投資、事業化を進めるとし、2025年度で売上高4000億円を目標に掲げます。
さらにANA経済圏の拡大については、「ANAマイレージクラブアプリ」のスーパーアプリ化を目指すとしており、昨年10月のアプリ改修に続き1月31日リリースの「ANA Mall」や、「ANA PAY」の2023年4月リリースでさらなる仕組み構築を行っていくとのことです。
そして、経営基盤にあたるDX戦略としては、以下を掲げます。
・デジタル人材:2025年度までに2022年度比1.6倍
・IT投資額:3年間で2020~2022年度比1.5倍
設備投資は3年間で年度平均2700億円と設定し、うち4割強がデジタル化へのIT投資となるようです。
【執筆者コメント】
新型コロナウイルスの影響を大きく受けた航空業界。ANAホールディングスは、2023年度第2四半期決算で、営業利益・経常利益・四半期純利益のすべてにおいて、2019年度以来3年ぶりの黒字を出し、業績回復の兆しを見せました。
そして、2月2日に発表された決算発表では、第3四半期も第2四半期同様の黒字回復を見せ、売上高は前年度同期比70.5%増の12,586億円となっています。
参考資料:
https://www.anahd.co.jp/group/pr/202210/20221031.html
https://www.anahd.co.jp/group/pr/202302/20230202.html
このように航空業界の回復が見られる中、業界大手のANAが2030年までにコロナ前を超える利益と価値を生み出すことを目指して策定した今回の中期経営計画。メインセグメントの航空事業の規模再拡大はもちろん、そのために顧客基盤を活かしたプラットフォーム戦略でノンエア事業との連携をはかるとともに経済圏拡大をも目指すという大規模な成長ストーリーが見えとても興味深い内容だったと思います。
今回経営基盤の一つとしておかれたDX戦略。特に注目したいのは、統合サービスプラットフォームである「ANA Smart Travel」です。こちらは航空券予約から、当日の搭乗までの全ての体験を「ANAアプリ」を通じてモバイルデバイス一つで行えるというサービスモデルとなります。
これまでの航空券予約支援という点でのサービスから、空港アクセス検索や機内食の事前オーダー、機内やラウンジで読める電子書籍、空港混雑状況お知らせ、オンラインチェックインなど搭乗までの流れを線で支援するプラットフォーマーへとビジネス変革していることがわかります。
このようなDXに欠かせない、プラットフォーマーとしての体験を通した価値提供が、今後のANAのさらなる経営回復に大きく関わってくるのではないかと感じます。
参考資料:https://www.ana.co.jp/ja/jp/serviceinfo/ana-smart-travel/
さらに、「ANAマイレージクラブアプリ」を日常生活におけるANAグループの各種サービスに誘導するゲートアプリとして再構築。多種多様なサービスをミニアプリとして搭載し、「マイルで生活できる世界」を実現するスーパーアプリを目指します。
これらのIT投資は、ウィズコロナ時代だからこそ生まれる顧客ニーズを戦略に落としサービス化できている良い例ではないでしょうか。また、この取り組みがさらに顧客満足度を高め、今後の事業拡大と利益増大に繋がると感じます。
今回の中期経営計画策定に際して行われた会見で、同社代表の芝田氏は「2025年度の目標は、2018年度に2020年度で構えていた数字と同じ。2025年度でコロナ前の身の丈まで戻し、2030年度に向けて成長軌道に乗せていく」と話しました。今後国境がより開かれていくなか、勢いを増していくANAのさらなる躍進に期待したいところです。
参考資料:https://news.yahoo.co.jp/articles/022006f1cb4082763e5024eb240f28439b096b0c
執筆者/
リビルダーズ編集部 甲山 奏子