DXナレッジ

DX推進担当に、のび太くんを。

 
「DXレポートはわかりづらい」

DXレポートは必要なことがすべて書かれている教科書的な存在ですが「言っていることは理解した。でもわかったとは言い難い。」という状況に陥ります。

もちろんそこから様々な情報や書籍に触れ、各々理解を深めていけばよいのですが、遠回りしてしまいがちです。

今回ご紹介したい本はDXレポートを読んだあと最初に読むべき本です。

『マッキンゼーが解き明かす 生き残るためのDX』出版:日経BP 著者:白石賢

DXについてわかりやすく解説している本ですが、初心者に寄せるわけでもなく、より踏み込んで理解度の解像度を上げてくれている点、さすがマッキンゼーと思う内容です。

そして、DXレポートで自分は何が分かっていなかったのかが分かる、という点も優れています。
  

のび太君になる勇気【本の概要】

 
本書はDXのWHY?WHAT?HOW?をテーマに全5章で構成。なぜDXが必要なのか、DXとはなんなのか、どのようにDXしていけばいいのかについて掘り下げて書かれており、DX理解がより深まる内容になっています。

たとえば「エコシステム」について。
DXレポート2.1で出てきたキーワードですが、そこには「デジタル産業を構成する企業は、価値創出にデジタルケイパビリティを活用し、それらを介して他社・顧客とつながり、エコシステムを形成している」と説明され、下記のような図で表現されています。
 

引用:経済産業省 DXレポート2.1概要

 
なんとなく、企業同士や顧客が自由につながり経済活動を行っていく世界のことを指しているのかなというイメージです。

同じエコシステムについて本書では「消費者のニーズがどんどん広がり”わがまま化”する中で、複数の接点からサービス提供できるようにならないと企業の競争力は失われていく。つまり、すべてを自社でカバーするのは不可能。複数企業と共創するエコシステムを構築することが重要になる。」と説明しており、下記のような図で表現しています。
 

引用:『マッキンゼーが解き明かす 生き残るためのDX』出版:日経BP 著者:白石賢 (本文中の図を引用し、読者の解釈を助けるために情報を整理して作成)

 
顧客と接点を持つフロントエンド企業と、デジタル人材やコールセンターなどサービス提供に必要な手段を提供するミドルエンド企業、インフラを提供するバックエンド企業が一体となり共創する世界をエコシステムと呼ぶことがわかりやすく説明できています。

また、将来的には個社対個社ではなく、エコシステム対エコシステムの競争が主流になるとも書かれており、よりエコシステムと呼ばれるものの実態が理解できます。

このように、DXレポートだけで「なんとなく分かったけど、実は分かっていなかった部分」を数多くつぶしてくれるのが本書の利点です。

実際、DXは「分かったような、分からないようなこと」が多く、それを分からないと公言することは理解力の無さを露呈してしまうことにもつながってしまうような恐れを、無意識ながら感じてしまい「なんとなくわかったから良いか」と放置してしまうことも多くなってしまうのではないでしょうか。

本書の後半にも「のびた君になる勇気を持とう」というメッセージがあります。わからないものには「分からない」、助けてほしいときには「助けてほしい」と大きな声をあげる。いまDX推進者に必要なのは、のび太君なのかもしれません。
 

「テクノロジーに関する部分を読み飛ばしてしまいがち」

 
DX理解の解像度がグッと上がる本書ですが、個人的に印象的だったのがテクノロジーに関するお話が書かれている章です。

章の最後の方に「ちょっと待ってください。テクノロジーについて述べた本節を読み飛ばそうとしていませんか?自分では呼んでも理解できないとか、テクノロジーは苦手だからと、他人任せにしていませんか?もしくは、その単語は聞いたことがあると、本質を理解せずに知ったかぶりしていませんか?」と書かれています。

おそらくマッキンゼーが、テクノロジー部分についての理解を適当に流しているクライアントを多く見てきたからこその警鐘なのでしょう。個人的にも図星を突かれたようでハッとする箇所でした。

実はここが日本企業と欧米企業の差にもなっています。欧米のレガシー企業経営者は我先にテクノロジーについて勉強をはじめる方が多く、ウェビナーやカンファレンスに積極的に参加し、クラウド、ブロックチェーン、APIなどのバズワードもどんどん理解していくそうです。

結果、シンガポールの金融機関DBS社はITの9割を外注している状態から、たった10年で9割内製に切り替えています。ウォルマート社も、テック企業を数百億円かけ複数社買収しアマゾンに対抗しています。

日本でも、経営者が率先してテクノロジーを勉強・理解し、早速取り入れている企業はあります。ニトリは物流の効率化にブロックチェーンを利用、ダイソーはデータサイエンティストを養成し精度の高い売上予測を可能にしています。

よくわからないことは専門家に任せ、なんとなく理解すればいい。この感覚が日本のDX推進速度を下げているのは間違いないでしょう。

自戒の念をこめ、私個人もテクノロジーについて書かれている章を読み直し、特にDXレポートで理解しているつもりになってしまっていた箇所についてお話します。
 

レガシーシステムの刷新とはこういうことだったのか

私が理解した気になっていたのは、2025年の崖。基幹システムの刷新部分です。

DXレポート1で2025年の崖について言及したところ、基幹システムの刷新にばかり取り組む企業が増え、DXの本質が伝わっていない状況になってしまったとされていました。

その影響か、基幹システムのことを脇に置いてしまった方も多いのではないでしょうか。ですが、結局基幹システムと新しいシステムの接続は依然DX推進の要の一つであることに変わりはありません。

私が、DXレポートで理解した基幹システム刷新イメージは
・市場変化に対応する部分を切り出していく
・切り出した部分を近代化 (モダナイゼーション) して疎結合にしていく
ざっくりとこのような感じでした。
 

引用:経済産業省 対話に向けたポイント集第三章

 

引用:経済産業省 対話に向けたポイント集第三章

 

ですが、その過程はどのような工程を踏んでいくのかの具体的な理解がありませんでした。気が付いたのは「具体的な理解がなくても、そこは専門家に任せればいい」という感覚が自分の中にあったことです。

本書での説明では

①まず、どこから手を付けるのか判断する。たとえばSalesforceのような営業支援システムから基幹システムにアクセスし、在庫確認ができるようになると有効、といった判断をする。

②「在庫確認」という機能は、ほかにも必要か検討します。検討した結果、モバイルアプリやECからも使えると便利という判断があれば、共通の部品として基幹システムから切り出す。
 

③切り出したうえで「在庫管理」と各アプリ (Salesforce、モバイルアプリ、ECなど) を1対1でつないでいくのではなく、間にミドルウェア (データの形式や通信方式の変換を行い、別々のシステム同士が簡単に会話をしてデータ連携させる仕組み) を入れ、APIゲートウェイでつないでいく。

④こうすることで、基幹システムと各アプリを疎結合にすることができ、基幹システムを変更することなくアプリを変更していくことができる仕組みが出来上がる。

と書かれておりどのような過程を踏むのか、より理解することが出来ました。もちろん、もっと細かく理解すべきことがたくさんあると思いますが、一歩踏み込むことで何が大変で、何に時間がかかりそうなのかイメージが付きます。また、エンジニアが考えるべき部分とそうではない部分もわかるようになります。

このような過程の理解がなければ、コミュニケーションは破綻してしまうでしょう。
 

引用:『マッキンゼーが解き明かす 生き残るためのDX』出版:日経BP 著者:白石賢 (本文中の図を引用し、読者の解釈を助けるために情報を整理して作成)

 
「エンジニアの業務理解が必要」という言葉を良く聞きますが、「ビジネスマンのエンジニア理解が必要」という言葉はそれほど多く聞きません。ここにDX推進の落とし穴があるような気がしてなりません。

海外のビジネスマンは、テック系のカンファレンスに積極的に参加し質問責めにするそうです。日本のビジネスマンのそのような光景は見たことがありません。わからないことは専門家に任せる、というスタンスがデフォルトになっています。

つまり、日本はビジネスマン側がテクノロジーに歩み寄る努力をしていないことが問題なのではないか。刀の時代から鉄砲に時代になる、という過渡期に、鉄砲のことを知ろうともせず鉄砲は鉄砲にくわしい人に任せる、という態度の人は新時代についていけなくなるのは自明であり、勉強する意志を持つことこそ、まずDX推進第一歩なのではないでしょうか。
 

まとめ「重要なのは、本当に理解するまでジタバタすること」

 
『マッキンゼーが解き明かす 生き残るためのDX』のご紹介と、わからないことを理解していくことの重要性についてお話させていただきました。

●本書はDXレポートを読んだ後読むと、レポートの内容がグッと頭に入ってくる一冊。
●わかったつもりになっていてわからない部分を、わからないと言える勇気は重要。
●特にテクノロジーに関する領域を「専門家に任せる」ではなく理解しようとする努力が重要であり、いま不足している部分なのではないか。

実は、私自身は本書を「マッキンゼーの営業本」だと勝手に決めつけ、敬遠してました。立ち読みして、自分が理解したつもりになっていたけど理解していなかったことがしっかり書かれており読むに至ったのですが、やはり完全に自分のモノになるまでジタバタすることの必要性をあらためて感じさせてくれる一冊でした。

また、同じことを、いろいろな角度・表現方法から理解することで自信が深まります。重複している箇所を見つけることで、本質がなにか分かってきます。

DXはあたらしい概念。世の中全体手探りでDXとはなんなのかを模索しているフェーズであるため、食わず嫌いせず様々な情報に手を伸ばすことが重要なのだと思います。
 

参考:
『マッキンゼーが解き明かす 生き残るためのDX』出版:日経BP 著者:白石賢
 

 

執筆者
リビルダーズ編集部

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