情報発信元:https://www.yomiuri.co.jp/politics/20230324-OYT1T50000/
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3月23日、政府推進の医療DXに向けた工程表の原案がわかりました。
原案では、全国の医療機関・薬局向け「電子カルテ情報共有サービス」(仮称)の構築を行い、電子カルテ情報の一部の共有、閲覧を可能にするとしています。
当初の共有情報としては、健康診断の結果、アレルギー情報、薬の処方情報などを想定しています。
特に救急時に重要な既往歴や持病、アレルギー情報などを速やかに閲覧できるよう対応を急ぐとしています。
併せて患者本人が「マイナポータル」で自身の医療情報を確認可能になるシステムも設けられます。さらに、自治体、介護事業者でも情報共有を行い、
介護サービスや医療費助成などの手続きのオンライン化を進めます。
政府は、近年の新型コロナウイルス禍の医療状況を踏まえて、感染症拡大時にも各医療機関や自治体が迅速に患者の情報を共有・取得できる体制構築を行うとしています。また、医療機関が患者情報を保健所に報告するという業務も医療現場の負担になっているとのことで、改善策の検討も進めています。
医療情報の共有について懸念の声も絶えない中で、政府は情報共有の効果と情報漏洩対策について丁寧な説明を行っていく必要があるとの考えを示しています。
【執筆者コメント】
今回の内容は、3月8日に行われた第二回医療DX推進本部幹事会で議論されたものになります。
どの医療機関を受診しても情報が共有されていることで適切な治療を受けられることや、自身のこれまでの医療データを一元的に把握することができる点は、国民・患者にとってメリットがはっきりしているため、好意的に受け取ることができるなと筆者は感じました。
ただ、個人情報の取り扱いが大きく関わる内容であるため、細部の明確化は必要不可欠なようです。
例えば、「電子カルテ情報の共有、閲覧における同意取得の仕組み」 についてです。
これについては1月27日に、厚生労働省の「健康・医療・介護情報利活用検討会」の「医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ」が議論しており、現場負担を軽減する方向で仕組みづくりを行う方針になっています。
電子カルテ情報を共有システムへ保存することへの同意については、諸外国の例を参考に、不要、あるいは拒否を可能とする方向で提案されました。電子カルテ情報を閲覧することへの同意については、「マイナポータルで閲覧可能情報を患者が選ぶ仕組みとすべき」などの意見がでました。
参考資料:「電子カルテ情報共有について」全日本病院協会
また、2022年11月29日の同会合では、「誰がどの情報を閲覧できるか」について議論されています。
医療の質向上においては多くの人が情報を共有できることが有用ですが、患者に提供することを前提としない情報や、機微性が高く患者に不利益となる可能性のある情報もあり、誰にでも情報を公開するべきというわけではないようです。そのような考えをもとに、誰にどの情報を開示するかを設定することが提案されています。
例えば、「傷病名」については患者の心理的負担を考え伏せるケースや、難しい病名のためあえて一般的な病名として伝えるケースなどが紹介されました。
参考資料:https://gemmed.ghc-j.com/?p=51221
医療情報の共有は、医療機関、患者、自治体など全方位にメリットがある半面、しっかりとした仕組みの整備や丁寧な説明が必要不可欠であると感じますね。
その他にも、そもそもの電子カルテの普及率向上や、電子カルテ情報のデータコードの標準化など課題は多く残っていますが、国民がより良い医療を受けられるような社会の仕組みづくりを進める政府の取り組みに、今後も期待したいところです。
※以下、総務省が掲載している資料で、医療情報の利活用に関する歴史や現状、今後の改善策などが記載されています。気になる方はぜひご覧ください。
参考資料: AI経済検討会資料
執筆者/
リビルダーズ編集部 甲山 奏子