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377ページのDX白書2023 日本企業の概況を1000字にまとめてみた

情報発信元:https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/dx-2023.html
(別サイト「IPA DX白書2023」を開きます。)

2023年2月9日、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は「DX白書2023」を公開しました。

2009年より「IT人材白書」、2017年より「AI白書」、2021年より「DX白書」を発刊してきた同機構は、日本やアメリカの企業へのアンケート、DXの取り組み状況の調査、DX推進に関する課題調査などを行っています。

377ページにわたる調査ですが、ここでは日本企業のDXの取り組みの概況を掴めるように、約1000字にまとめます。

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【国内のDXの取組状況】

3つの要素からDXの取り組み状況を整理

①企業規模別のDX取り組み調査

大企業 :4割強がDXに取り組んでいる

中小企業:1割強がDXに取り組んでいる
→中小企業のDX推進が難しい主な要因
・従業員数20人以下企業→「予算の確保が難しい」
・従業員数21人以上企業→「企業文化 / 風土が困難」

②産業別のDX取り組み調査

全産業平均:2割ほどがDXに取り組んでいる

情報通信業 / 金融業・保険業:5割ほどがDXに取り組んでいる
→情報通信業 / 金融業・保険業が他産業よりもDXの取り組みが進んでいる主な要因
 ・フィンテックの活用が盛んになってきているため
 ・DX支援を行う側の企業であるため

③地域別のDX取り組み調査

東京23区に本社がある企業:4割ほどがDXに取り組んでいる
政令指定都市、中核市、その他:規模が小さくなるほど割合が減少

→企業のDXに対する期待のばらつきが要因
 ・企業全体:80.6%が業務効率化、69.6%が生産性向上、5.4%が商圏拡大を期待
 ・東京の中小企業:21.3%が商圏拡大を期待

【DXの取り組み事例】

 1.規模別事例

・売上50億円未満

新たなビジネスモデル、サービスの創出事例多数。SaaS型サービスやマッチング事業など。また業務の可視化、自動化など、効率化事例も中心となる。

・売上50~100億円

企業のノウハウに応じたソリューション開発事例が多数。業種特化のデータベース、仮想空間など。また売上50億円未満企業同様、業務の可視化、自動化など、効率化事例も。

・売上100~1000億円

自社のノウハウを用いた新規ビジネスへの取り組み事例多数。自社が貯めている情報をもとにしたマッチングやアプリ開発など。同業他社や顧客を巻き込むデジタル化事例も。

・売上1000億円以上

業界に共通するプラットフォームの提供事例も散見。業界全体が用いることができるプラットフォームなど。取引先を含めたサプライチェーン全体の改革事例も。

2.地域別事例

地域の特色に合わせた取り組み多数。以下に代表的な事例を記載。

・北海道

 農業のデータ活用、スマートシティプロジェクトなど広大な土地を利用。

・東北地方

 高齢化が進んでおり、ディープラーニングを用いた技能継承の事例あり。

・関東地方

 企業が多いことから企業間連携を行ったDX事例など多くの取り組みが盛ん。

・東海地方

 工業地帯であることから、工場の業務改革が盛ん。

・北陸地方

 働き手が不足している地域であり、AI活用による業務変革事例がみられる。

・関西地方

 大阪市など大都市を中心にデータ利用等CX変革事例がみられる。

・中国地方

 広島を中心に先進技術活用の事例も見られるが、多くは業務効率化事例。

・四国地方

 高齢化が進んでいる地域であり、水産養殖業や漁業でIoT事例あり。

・九州・沖縄地方

業務効率化事例が中心だが、北九州などではロボットの活用等も事例あり。

【執筆者コメント】
今回は、情報処理推進機構によるDX白書から、日本企業のDX推進の状況に着目して整理しました。企業規模や産業によってDXの取り組みに差があることはイメージがついていた一方で、地域によって様々な特色があることに興味深さを感じます。

北海道は、人口530万人と全国で8番目に人口が多い都道府県ですが、空港が道内に14つあるなど面積が非常に広いことが特長です。よってITベンダーやDX支援機関も足りず、DX推進が難しいと考えられます。一方北海道経済産業局では、道内中小企業のDX推進支援を行っており、DXモデル創出支援やサイバーセキュリティ対策など積極的な支援を行う方針です。

そのような状況でDXの取り組み事例が少しずつ増えています。株式会社ファームノートは、酪農や畜産のDXを手掛ける北海道の企業です。農業のIoTソリューションを提供する企業で、クラウド牛群管理システム「Farmnote」を提供しています。広大な土地での飼育に対し、過去データを蓄積、牛の状態をリアルタイムで見える化することで、未来予測や予実管理を行うことができるソリューションです。

また沖縄では、多くの観光客が訪れる場所で、素晴らしい1次産業が多く食に魅力がある一方で、流通面に課題を抱える企業が多いとされてきました。その中で、生産者から消費者までのサプライチェーンに着目して物流を変革させる取り組みがスタートしています。株式会社琉球通運航空、株式会社Noah’s Arkの沖縄に拠点がある2社と、富士通Japan株式会社が取り組むのは、かりゆしキンメという魚のブランディングです。

品質が高く希少性があるため、東京などにも売り出せる品質ですが、沖縄の物流は東京から距離があるためハンデがあり、沖縄の魚は輸送状態が多少悪くても文句を言われない現状があると言います。3社は共同して、物流のデジタルによる業務効率化を行いつつ、産地からタブレットで情報を伝達し、そのデータをもとに買い手と売り手のマッチングをするシステムを構築することで、スピード感のあるサプライチェーンを目指します。

ここで掲載した2つの事例は、北海道や沖縄が「地域による特色」のために抱えていた旧来の課題を解決するものです。人口や人口密度、労働者人口の年齢別の割合など「人の特色」から、天候や立地などの「場所の特色」、さらには世界遺産や歴史的な建造物、魅力的な施設などの「観光の特色」など、日本の各県には様々な特色があり、課題も様々あると考えられます。地域の特色を長所に変えていくためのデジタル活用、DXが今後さらに加速すると考えられます。

来年のDX白書において、日本のDXの取り組みが今回の白書とどのように変化しているか注目です。

執筆者/
リビルダーズ編集部 橋爪 勝万

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