情報発信元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000487.000098811.html
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国立大学法人群馬大学、東日本電信電話株式会社、株式会社ユヤマ、ウルシステムズ株式会社、PHC株式会社は、群馬大学医学部附属病院にローカル5G環境の構築と、薬剤自動認識装置(AI)を搭載した自立走行型ロボットを活用した、患者持参薬の確認および処方薬の配薬・服薬確認の実証実験を2023年1月30日より開始することを発表した。
実証実験を行う背景
昨今、少子高齢化や新型コロナウイルスの流行により、医療従事者の人手不足が深刻だ。また、医療の高度化と複雑化に伴い、診療行為における確認漏れや情報伝達不足などに起因した医療インシデントのリスクも増大している状況だ。特に、薬剤に関する医療インシデントは、全体の約4割を占め、最大のリスク要因と考えられている。これら課題を解決するため、薬剤関連業務をはじめとした、医療分野における業務のICT化やDX推進が避けては通れない道となっている。
群馬大学医学部附属病院をフィールドとして、医療インシデントの主な原因となっている薬剤の種類増加に対応した「AIによる薬剤鑑別」の仕組みや、医療従事者が行っていた業務を「ロボット」へ置き換えることにより、医療インシデント低減や看護師・薬剤師などの稼働削減を目指す。
過去の医療実証では「医師」から「患者」への遠隔医療により業務効率化を目指していたが、本実証では「ロボット」を活用して「患者」への医療支援を目標としており、医療分野では類を見ない先進的な取り組みだ。
このサービスの特長
1、最新ローカル5G技術である分散アンテナ技術の採用
人や特殊機器が多数行き交うことや、多くの遮蔽物により電波干渉の可能性が高い医療現場独特の環境に対応するため、分散アンテナ技術を採用した。
2、複数台カメラによる撮影画像を、AIを用いてリアルタイムで解析
ローカル5Gにより、ロボットの安定した制御・走行や多岐にわたる薬剤鑑別をおこなうために、上下2つのカメラから照明角度や露光時間を変えた複数枚の画像を撮影する。そして、リアルタイムに解析サーバへ伝送し、AIで解析を行う。
3、地域の薬局と連携した薬剤トレーサビリティスキームの確立
退院後にも、病院と薬局の情報連携や、既往歴やアレルギーといった患者情報の参照、服薬確認といった、地域にネヅイた一気通貫型の薬剤トレーサビリティの仕組みを構築する。病院DXのみならず、地域の関連施設間での情報連携の支援により、住民が安心安全に地域に暮らすための包括ケアを目指す。
【執筆者コメント】
今回は病院における、薬剤トレーサビリティと医療従事者の働き方改革のためのDXの例をご紹介いたしました。
トレーサビリティ(※1)とは、「その製品がいつ、どこで、だれによって作られたのか」を明らかにすべく、原材料の調達から生産、そして消費または廃棄まで追跡可能な状態にすることです。
このトレーサビリティでは、食品業界においてもよく話題となるテーマです。2014年にペヤングを販売するまるか食品にて異物混入が発生しましたが、現在ではその対策として、製造ラインにおいて計3回のセンサーカメラによるトレーサビリティが行われています。
今回ご紹介したような医療の現場においては、このサービスの導入によって、入院患者が持参した医薬品の確認や、処方薬を配薬・服薬の確認をロボットが代わりに行ってくれるため、医療従事者の負担を減らしたり、重大なインシデントを減らすことが可能になります。
今回の実証実験をきっかけとして、ロボットやIoTを活用した病院DXが加速していくことで、処方後の服薬確認など、ある種の作業的工程を減らしていくことも可能となりそうです。また、より個別具体的な医療行為に注力することも可能になるでしょう。
現在も官民5社が一体となって進めているこの事業ですが、今後より多くの企業との協業を重ね、シナジーを生み出していく未来に期待ですね。
(※1)KEYENCE|トレーサビリティ大学より「トレーサビリティとは」
執筆者/
リビルダーズ編集部 城間 礼音