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経済産業省 デジタルスキル標準を再策定

情報発信元:https://www.meti.go.jp/press/2022/12/20221221002/20221221002.html
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2022年12月21日、経済産業省はIPA(独立行政法人情報処理推進機構)とともにデジタルスキル標準をとりまとめたことを発表しました。

昨今デジタル技術の進歩によりデータ活用等を用いたビジネス変革、産業構造変革が起こっています。その中でDX推進が重要視されていますが、日本の企業においては諸外国に比べ遅れている状況があります。その原因の一つとして、DX推進ができる人材不足が挙げられます。

そのため、経済産業省とIPAは昨年6月よりデジタルスキル標準を検討し始め今回の発表に至りました。デジタルスキル標準は2種類で構成されています。

・DXリテラシー標準

→すべてのビジネスパーソンが持つべき能力の標準

・DX推進スキル標準

→DX推進を実行する人が持つべき能力の標準

デジタルスキル標準は様々な業界や職種で共通指標となるように、汎用性を持たせたものとしています。この標準を適用するにあたり、各企業や産業別で具体化する必要があるとしています。

各標準の詳細は以下の通りです。

・DXリテラシー標準

ビジネスパーソンとして身に着けるべきDXリテラシーを持つことにより、DXを理解し自分事として認識、行動ができるようになることが狙いです。

DXの背景やDXで活用されるデータ・技術の理解ができる、そしてデータ・技術を活用する方法を定義できる状態を目指すものです。また具体的な技術としてAIやクラウド、ハードウェア・ソフトウェア、ネットワークに関しても知識を持っている状態です。

・DX推進スキル標準

DX推進を行う人が持つべきスキルを育成方法に結び付け、リスキリングの場を創出し学習を促進させることが狙いです。

DX推進スキル標準にあてはまる人材は様々な役割に分けることができます。例えばビジネスアーキテクトはビジネス変革の目的設定をし、関係者間を橋渡ししプロセスを推進することができる人材を指します。他にもデータサイエンティスト、サイバーセキュリティ、ソフトウェアエンジニア、デザイナーなどの役割に分けられます。ただその根幹にあるのはデータやデジタル技術を用いてビジネス変革を起こす目的があるということです。

今後の展開としては、継続的なデジタルスキル標準の見直しを行います。民間と協力し普及につとめ、その活用の中でユーザーからの評価を得て改善します。「マナビDX」というデジタル人材育成プラットフォームサイトとデジタルスキル標準を結び付け、学習コンテンツと紐づける予定です。自分が目指す役割に必要な知識を学びやすくなることが狙いです。教育コンテンツについては引き続き拡充をしていく予定です。

【執筆者コメント】
今回は経済産業省とIPAが策定したデジタルスキル標準を取り上げました。この基準の策定には良い点がある一方で疑問点、改善点もあります。

良い点としては、今後DXを推進するロールを目指したいと考えている人にとって学習すべき観点が分かりやすくなる可能性があるということです。例えばデータサイエンティストの必要スキルは、ビジネス変革、データ活用、テクノロジーの3つのカテゴリーに分かれており、それぞれ必要なスキル項目や重要度が記載されています。具体的に何を学習する必要があるかはそれぞれの業界で変化しますが、おおまかな学習を進める目安になると言えるでしょう。

また企業がDX人材育成を行う際には、この基準をもとに教材の選択やコンテンツ採用を行うことができます。教材やコンテンツを制作する側にとっても、「デジタル標準に準拠」のような記載をとることも可能になり、ユーザーに分かりやすく訴求することができるようになります。

一方で疑問点や改善点もあります。

まずは曖昧さについてです。ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティストなど人材類型別にDXロールや業務、身に着けるべきスキルを定義しているものの、業界によって大きく異なる部分が多いこと、自分がどのレベルにいるか分からないことから、今回のデジタルスキル標準を学習や業務にすぐに活用することが難しい内容だと言えます。

例えば「データサイエンティスト」という人材類型のロールの一つであるデータエンジニアの役割としては、「効果的なデータ分析環境の設計・実装・運用を通じて、顧客価値を拡大する業務変革やビジネス創出を実現する」とあるように、現状だと辞書を引いて得られる説明の記載しかありません。

筆者が考える改善策としては主に2つです。

1つはDX成功事例の中でデータエンジニアがどのような役割を担ったのかを詳細に資料化し、アクセスできる状況に置くことです。他業種であっても細かい設定がある事例であれば、自分に置き換えて考えやすいため、多くの事例を収集する必要があると言えます。

2つ目は対応資格を設定することです。担う役割ごとに、参考になる資格や教材等を紐づけることができれば、学習しやすい状況にもなり自分がどのレベルにいるのか客観的に分かりやすくなります。国が企業の参考書を指定することが難しければ、経済産業省のマナビDXというポータルサイトを紐づけても良いでしょう。

今後のデジタルスキル標準の普及のために、DX推進を行う産業界との連携を行い見直ししていく方針となっています。事例収集と、標準の細かい設定、それに紐づいた教材や資格の明確化が必要です。

また今回のデジタルスキル標準をなぜ経済産業省が発表するのかという疑問もあります。2021年9月に発足したデジタル庁は、デジタル社会の実現に向けて重点計画の策定、施策について主導的な役割を担うとしています。デジタル庁のホームページには、デジタル人材の育成・確保という政策が掲げられており、デジタル専門人材を育成するためのプラットフォーム構築、教育研修の拡充を推進するとしています。経済産業省との役割分担を明確にすることは、ITリテラシー向上という啓蒙をより分かりやすくすると考えます。

まだまだ課題のあるデジタルスキル標準ですが、今後の改善の仕様によってはDX人材育成の軸となりえるものといえます。今後の改定や改善に注目です。

執筆者/
リビルダーズ編集部 橋爪 勝万

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