情報発信元:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC21DC00R21C22A2000000/
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ITシステム開発企業のSCSK株式会社がDXの需要の高まりを背景に業績が好調となっている。2022年度の売上高は4500億円、純利益は380億円となっており、3年前と比べ、売上高を17%、純利益を32%伸ばしている。同社の戦略を社長兼COO(最高執行責任者)を務める当麻氏が語る。
1点目は、統合基幹業務システム(ERP)関連の需要に対して、財務データに加えて非財務データも含めて繋ぎ合わせ意味のあるシステムを作ることができる体制を整備できたことだ。DX需要の中でも基盤の整備やデータ分析によるイノベーションをしたいという需要が多くなっている点を抑えていた。また、金融や脱炭素、ヘルスケアなどで色を出してDX事業を展開している。
2点目は、システム開発とローコードやノーコードツールのサービスの組み合わせだ。DXにより内製が進む企業も増える中で、IT人材の教育や採用を強化している。また、そうした企業でノーコードやローコードツールの導入も増えているのだ。
上記のような内製化が進みIT会社へのニーズが減る可能性もあるが、SCSKではローコードなど顧客自身での開発を助けるサービスを提供し、且つ高度な専門知識が必要で利益率が高い部分を支援するといった組み合わせで増収増益をキープできている。
3点目は、エンジニアの成長に向けた社内制度の整備だ。IT業界では高度な技術を持ったエンジニアの不足が課題となっている。SCSKでは中堅、若手の給料を引き上げるなど成果に応じて報酬のメリハリをつける評価制度に作り変えている。
来年度から試行予定だが、全てをジョブ型にするのではなく、しっかりジョブを定義し、どんな人材が必要なのか、会社として明示してそこにシフトしたいと思えるような制度を整備していく。
また、主要子会社3社などの地方拠点の拡充も進めており約2年で約3000人から5000人まで増やした。2023年度に始まる新しい中期経営計画には、30年度に売り上げ1兆円の目標を掲げた。個別顧客向けにシステムを開発する人に頼った事業モデルから脱却し、M&A等もしながらサービスを提供するモデルに転換していく戦略を描いている。
【執筆者コメント】
DX関連の記事を見ていく中で、SIerと呼ばれるシステム開発企業の視点からDXの動きを見てみたいと思い、今回はSCSK株式会社の記事に着目した。企業での需要が高まっているDXをスピーディーに進めれる力があるSIerの代表として模範となる事例だと感じた。
統合基幹業務システム(ERP)の様な規模の大きいシステムの繋ぎこみや基盤の構築、需要の高まっているローコード・ノーコードのサービスも持ち合わせている力があるということも素晴らしいと感じるが、顧客の要望に応じた個別のシステム開発を受託する従来型のSIerを脱却しなければならないという考え方が成功の真の要因であると感じた。
代表の当麻氏は記事の中で「社員には危機感を持ってもらわないといけない。より高度な技術を持った人材となる必要がある。社員を鼓舞して変わっていくことが、22年に社長に就任した私の任期前半における使命だ」と述べていた。
DXの需要により市場では追い風が吹いているなかでも、DXを支えるSIerの立場として進化するのだというスタンスがSCSKの業績好調の秘訣だと思う。
高度な技術を持ったエンジニアを育てるために、教育環境を設けるだけではなくて、成果に応じて報酬のメリハリをつける制度を整えたことでエンジニアがもっと成長したいと思わせる仕組みを作った点も素晴らしいと感じた。
SCSKは電気自動車(EV)への移行が進んでいる自動車関連の領域に注力する方針も掲げているとのことだ。数あるSIerの中でも選ばれるサービスとなるために、強みを活かしていく工夫が必要になるのだと学んだ。
執筆者/
リビルダーズ編集部 國本 樹紀