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「SUPER-DX コンテスト」優秀事業が決定

情報発信元:https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/bukka_kaigi.html
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2022年12月16日、経済産業省による「SUPER-DX コンテスト」の優秀事業が決定し、3社の事業が紹介されました。

本コンテストは、流通業のDXを加速させることを目的としています。流通やサプライチェーンの課題を解決する事業提案を募集し、業界全体のデジタル活用を推進するきっかけをつくるコンテストです。

背景として、昨今の原材料高やエネルギー高、物価上昇などは、小売業や消費生活に大きな影響を及ぼしていることが挙げられます。このような局面において、流通のDX促進は非常に重要な位置づけにあります。今回は39の事業の提案があり、書類選考やヒアリング審査を経て以下の3社の事業が優秀事業に選ばれました。

・ハルモニア株式会社
・D&Sソリューションズ株式会社
・株式会社10X

◎ハルモニア株式会社

同社は解決すべき社会課題をフードロスと設定し、ソリューションを提案しました。フードロスを改善する際の現状の課題としては、見切り判断が売り場担当者に属人化していること、既存のシステムやデータが整っていないことシステム導入への不安の3つがあるとしています。今回提案するソリューション「Harmoniaロスフリー」は、販売や食品廃棄データを分析し、それをもとに製造数、値引き率を最適に設定することによって食品ロスを改善し、店舗利益を高めます。これまでスーパーマーケット企業と実証実験を行う中で、1年間で粗利率を6%、ロス率3%の改善という実績を上げました。

同ソリューションの強みは主に3つあり、価格戦略からシステムの実装までワンストップで支援できること、AIを人が使うことで価格設定するという納得感と柔軟性、POSデータだけあればローンチできるシンプルな仕組みであることです。

従来業界に置かれてきた目標は売上であり、機会損失を減らすために多めに製造し廃棄をするという状態で利益が上がりにくい構造でした。同ソリューションでは利益の最大かとロスの最小化を目標とするものです。データ分析により無駄を無くして利益を増やす考え方で、業界の常識を変えることを提案しています。これにより企業の利益はもちろん、システムに任せられるものは人の手を離れるので、働き方の改善が見込まれます。

◎D&Sソリューションズ株式会社

同社は解決すべき課題として4つを設定しています。1つ目は小売業界の基幹システムが重いためDXには多大な時間とコストがかかるということ、2つ目は小売企業が自社エンジニアを採用することが難しくDX人材の確保が難しいこと、3つ目はDXの成功事例が少ないためIT投資がしにくいこと、4つ目はIT投資をすることによる規模の経済が日本では働きにくいことを挙げています。

上記のような課題を解決するために内製化の仕組みとIT/DX人材が必要です。またIT人材の採用についても、様々な障壁があるとしています。小売業界は本社が東京ではないことが多い点、東京の給与水準を地方で採択し採用することが難しい点、ITに詳しい経営者がいない点から、IT人材の確保が構造的に難しいとしています。

そこで同社では、「エンジニアリングリソースの提供」を事業として提案しています。データ連携のみで様々なサービスがすぐ実現できる仕組みにし、小売業界の情報流通プラットフォームを作ります。小売企業からデータ連携をし、そのデータを同社の様々なサービスと連携して使えるようにします。小売業界のSaaSによってコストを抑えて開発不要でIT化を進めます。

商品価値を伝えるネットワーク、自動で個別価格設定できるダイナミックプライシング機能、商品情報の基盤等をサービスとして展開します。

◎株式会社10X

同社はネットスーパーが浸透していないことを課題と捉えています。昨今の現役世代は忙しく、オンラインでの買い物が当たり前になっています。ただ日本はネットスーパー市場がまだ成長段階で、今後伸びる可能性があります。一方でネットスーパーを導入するには欠品が頻発したり店舗オペレーションを整理したり、webサイトの検索機能を充実させるなど、従来の店舗販売と別の技術が必要です。つまりネットスーパーに最適化された新たなシステムが必要です。

そこで同社は「Stailer」というプラットフォームを提案します。お客様向けのサイトUX、小売事業者向けのオペレーションシステム、配送業者向けのオペレーションシステムが一元化されています。本プラットフォームは、在庫マスタ作成の人員の削減や店舗でのパッキング人員を削減させるなど、実際に数字の面でも成果を上げており、自社サービス型のプラットフォームとして小売企業と伴走します。

【執筆者コメント】
今回は経済産業省によるSUPER-DXコンテストを取り上げました。流通・小売業界にフォーカスしたソリューションが多数応募され、そのうちの3つが優秀事業として取り上げられています。今回の3つのソリューションの前提ともなっていますが、小売業界のDX推進が難しい点は企業規模の大小のばらつきにあると考えます。

小売業界に限った話ではないですが、中小規模の企業にとってシステムの導入はコストを大きくかけられません。フードロス改善のためのデータ分析活用や、IT人材の確保、EC展開には初期費用が高く、継続的な投資も必要になるためです。

今回の事業にあったようにSaaSなどを活用することは企業規模が大きくない状況でもすぐに導入できるため、スピード感を持ったIT活用ができるといえます。

筆者が考えるSaaSの導入メリットは主に3つあります。

まずはサービスにもよりますが導入することが容易に可能だという点です。サービスによってはオンライン上で申し込み、即日利用できるものもあります。2つ目は料金の変動が少ない点です。多くのサービスがサブスクリプション型であるため、大きなコスト増減が無く、基盤が大きくない企業でも導入しやすいものです。3つ目はITリテラシーに左右されにくい点です。初期費用で失敗するリスクも少なく、常に最新サービスにアップデートされることから、自社に合うものを選べさえすれば最適解として運用できます。

一方で、SaaSサービスにはデメリットもあります。まずはカスタマイズがしにくい点です。基本的には自社のフローをSaaSサービスに合わせる形になるため、業務と合わなかったりユーザーからの要望に対応できなかったりすることがあります。

2つ目としてはSaaS提供企業に依存しすぎてしまう点です。1つのサービスを使い続けていると、他の良いサービスがリリースされたときに乗り換えることが難しい状況になったり、使っているサービスがアップデートされると個社の事情とは関係なくインターフェースが変更されるため混乱する可能性があります。また何よりそのサービス自体が終了してしまう可能性があることも考慮すべきでしょう。

これからシステム導入を考えている企業は、SaaS型においては上記のようなメリット、デメリットを吟味する必要がありますが、昨今の大企業の潮流でもあるシステム内製化と上手く組み合わせる必要があると考えます。予算に余裕があるようであれば、自社でカスタマイズできるようなサービスと、カスタマイズできる人材を抱えて、自社のビジネスの変化に柔軟に対応できるシステム構築を目指すべきです。

SaaS型サービスは導入が簡単で、今回のように経済産業省がピックアップした良いサービスも出ていますが、とにかくITを導入する、とりあえずDXを進めるというような考え方で導入すると、システムのための事業になる可能性を孕んでいます。ビジネスにとって一番良いシステムの形が何かを考えて導入検討をしていくことが必要だと考えさせられるコンテストだと感じました。もし次回も開催されるようであれば、その結果にも注目です。

執筆者/
リビルダーズ編集部 橋爪 勝万

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