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DX先進国の米国におけるデジタル分野の職業ランキングに異変、データサイエンティストが3位に低下

情報発信元:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF28DB20Y2A021C2000000/
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DX先進国である米国にて、デジタル分野の職業ランキングに変化が起こっている。米Glassdoor社が毎年、求人数や満足度などを集計してランキングベスト50を発表している。2019年まで4年連続でトップを占めていたデータサイエンティストが3位に転落したのだ。

トップに躍り出たのは、企業のシステムやビジネスモデルの全体を最適に設計する「エンタープライズアーキテクト(EA)」である。EAは2020年までランキング圏外だった。わずか2年の間で首位になった背景として、DXの加速に伴い各専門領域に特化した縦の人材のニーズから、デジタル技術が複雑化し、組織全体を俯瞰してまとめる指揮者のような横の人材のニーズへと変わっていったからだと考えられる。

実際にEAは「企業の設計士」と呼ばれ、ビジネスやシステム、データ、アプリケーションなど幅広い分野の知見と、全体を俯瞰して最適な仕組みを構築するスキルが求められる職業だ。また、経営企画や情報システム、営業などの様々なステークホルダーとの調整や折衝力も不可欠である。

米株式会社インディードでは採用プロセスのデジタル化を加速している。毎月約3億人が訪れる利用者数を抱えながら、応募、予約、面接、採用まで全てのプロセスを一つのプラットフォームで完結できるようにDXを進めている。

複数部門にまたがる事業モデルを分析し、技術やコスト、使い勝手、全体最適のシステムとビジネスモデルの設計をEAが行い活躍している。日本においても、横河電機株式会社がデジタル戦略本部に約10名のEAが在籍しており、日本と海外のデータ連携や工場の自動化の仕組みづくりを進めている。

【執筆者コメント】
米Glassdoor社が発表したデジタル分野の米職業ランキングのリリースを取り上げた。日本企業において、デジタル化やDX人材の教育という観点でデータ分析などのいわゆるデータサイエンティストのニーズと言うのはここ最近で強化しているフェーズだと感じている。

ただ、DX先進国の米国では、データサイエンティストが3位に転落したという結果を見て驚いた。2年前までランキング50にも入っていなかったEA(エンタープライズアーキテクト)が1位になったことでDXを加速させていくフェーズが既に米国では始まっている事を学んだ。

EAは企業の設計士という記載もあったが、様々なITサービスや技術が増えてきており、デジタル分野だけではなくビジネス部門との連携が不可欠なDXにおいてEAの存在が大きくなっているということには納得できる。ただ幅広い分野の知見を活かした最適化、新しいビジネスモデルやシステム構成の検討、各ステークホルダーとの協議など経験が求められる難易度が高い職業である。

米国でのEAの年収(基本給)の中央値を見ても約2000万円という現状が物語っている。日本は米国と異なり、事業会社にエンジニアが居ないという状況が多く、内製が出来ている企業はまだ少ないと感じる。だからこそEAを育成するカリキュラムなども必要になってくるのではないか。

ただ育成にも時間がかかるため、ITベンダー側がEAの役割として支援をし、顧客と一体になってDXを進めていくというニーズを獲得できるのではないか。ちなみにランキングの2位はフルスタックエンジニアとなっており、こちらは前年までランキング圏外だった。複数のプログラミング言語を扱い、システム開発を統括する役割ということで、エンジニアのキャリアとしても求められる能力が今後上がっていくと感じた。

横河電機株式会社の事例を筆頭に、日本もエンジニアの給料も上がり、EAも増え、米国にDXで追いつくことを期待したい。

執筆者/
リビルダーズ編集部 國本 樹紀

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