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高齢者の間で広がるデジタル格差、その解消に向けて市がスマホ教室を開講

情報発信元:https://www.sut-tv.com/news/indiv/18166/
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静岡県御殿場市にて、行政が運営する高齢者向けのスマートフォン教室が開講された。対象となるのは「スマートフォンを持っているけど活用できていない高齢者」だ。昨今行政が危惧している「デジタルディバイド」(※情報格差のことでデジタル機器を使える人と使えない人の格差のこと)を解消するための活動の一環だ。

市では新型コロナウイルスに関する情報をはじめとする、市民の生活を支えるための有益な情報をオンライン上で発信しているが、パソコンやスマートフォンを扱えない高齢者にはその情報が届けられていないのが現状だ。デジタル機器が現在のように普及する前は町内会の回覧板や会報誌などが主な情報発信ツールであったが、情報の即時性という点ではどうしてもインターネットのスピードには勝てない。

本教室に参加した人たちの表情はやる気に満ちており、デジタル機器を扱えることの効果をちゃんと理解しているのが印象的だ。参加者たちはスマートフォンという本来便利な機器を持ちながら、普段は電話という1機能しか使えていない。紙の分厚いマニュアルを読んで理解をするにも一苦労なため、対面で説明上手な人から噛み砕いてもらいながら教わり、自身の理解を促進したいと本教室に足を運んだ人がほとんどだ。

市では定期的にスマートフォン教室を開講してデジタルディバイドに向き合っていく方針だ。

【執筆者コメント】
デジタルディバイドの問題は昨今目にするようになったトピックだが、筆者としてはデジタル機器を必要としていない人たちに無理をさせてまでスマートフォンを使わせる必要はないと考えているし、そもぞも無理だと考えている。

以前書いた記事でも取り上げたが、内閣府の世論調査で「スマートフォンと使っていない」と答えた割合が、60代で25%、70代以上で57%という結果が出ている。注目すべきはその理由についてで、「自分の生活には関係がない」50%、「使い方がわからない」4割という結果が出ている。
【参考記事 】JAが経営見直しのためデジタル店舗を導入、NTTデータがノーコード開発基盤を提供

なのでこういう人たちは現状の生活で困っていないので、デジタル端末が使えないことでこの人たちが不利益を受けていると考えるのはデジタル端末を使える側の人間がおせっかいを焼いているという見方ができる。かつこの人たちを対象にスマートフォンの使い方を教えようとしても無理だと思う。不要だと考えいている人たちは学ぶ意欲がないし、そもそもストレスを感じるので習得はまず無理だと考えるのが自然だろう。

私も60代の母と70代の父を持つが、母は私が半年ほど教えることでスマートフォンで買い物をしたり、ブラウザでネットサーフィンをするなどの基本的なことができるようになって。しかし父は無理だ。そもそも意欲がないのでちんぷんかんぷんだし、むしろ私にネットで買い物をお願いするというスタンスだ。今ままで紙文化で生きてきた人たちにデジタル端末を使いこなせというのは無理があるのを私は身をもって感じてきている。

しかし反面、新しい文化を吸収しようと意欲のある人が対象となれば話は別で、スマートフォン教室に足を運ぶ人たちなら使い方を覚えていけると思うので、市がこの教室に予算をかけて取り組むのにはとても意義があると感じる。

他国でもデジタルディバイドの問題は似たような状況である。例えばアメリカだが、地方と都市部のブロードバンドの普及率の格差が危惧されていた。2011年にNHKが伝えたデータでは、都市部では70%の普及率だが地方では60%といった具合だ。しかし問題は「なぜか」であり、地方でブロードバンドを使用していない人たちの半数は「自分には必要がない」という考えなのだ。

当時のオバマ大統領は国の予算を割いて、低所得者向けの低額ブロードバンドサービスを提供する取り組みを進めたが、国民の意識の問題が足を引っ張りいまいち効果が上がらなかった。やはり自発的に必要と考えている人たち以外には正攻法では届かないのかもしれない。

今後DXブームの潮流の中で、最近技術のAI等を活用した別のアプローチでデジタルディバイドへの新たな打ち手が出てくることに期待したいと思う。

【参考情報】「米,解消進まぬデジタルデバイドの背景」
【参考情報】アメリカ政府:デジタルデバイド解消に向けた低所得者世帯向けブロードバンド「ConnectHome」

執筆者/
リビルダーズ編集部 木城 秀人

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