インタビュー

元銀行員が牽引するSI業界改革プラットフォーム「WhiteBox」の未来

近年、DX機運が高まる中で、DXのためのプロダクトやサービスが日々生まれています。
今回取り上げる「WhiteBox」は、DXを進めていくための根底にある「システム開発」を担うSI業界の改革に取り組むプラットフォームサービスです。
サービスの詳細はもちろんのこと、サービスのこれまでとこれから、そしてここまでに至る考え方や経緯に迫ります。
(REBUILDERS編集部)

SI業界の「多重下請け構造」を改革するサービス「WhiteBox」

WhiteBoxは、SI業界の旧態然とした「多重下請け構造」を解消すべく立ち上げた、プラットフォームサービスです。

悪しきSI(SES)の業界構造「多重下請け構造」

日本は雇用規制が厳しく、雇い入れた人を解雇することが容易ではありません。なので、プロジェクトごとにエンジニアに入ってもらうためには、業務委託(準委任)などの形で入ってもらうしかなく、結果としてSI(SES)の業界は年々大きくなっています。

一方で、世の中のデジタル化が進む中、営業の方法は非常にアナログで、エンジニアを募集する際には、プロジェクト情報をパートナー企業(SI/SES企業)にメールで流し、そのメールを受け取った企業が、さらに自社のパートナー企業に流し・・・を繰り返し、ねずみ算式にどんどん募集先が増えていきます。そしてその先で見つかったエンジニアとの契約時には、間に入っている企業全てが契約に介在し、月単価で3~10万円の仲介費用を払う仕組みになっています。

 

「多重下請け構造」の問題点

この仕組みには大きな問題点が2つあります。

1つ目は「中間搾取問題」です。ただ間に介在するだけで月に数万円を抜くことによって、エンドクライアントは人月200万円出しているのに、実際に開発しているエンジニアは月給20~30万円・・・なんてことは当たり前のように発生しています。だから業界のエンジニアの平均年収は上がりづらく、平均年収の低い業界に高学歴で能力の高い若者が行きたがらなくなり、結果業界内の質も低下して・・・と負のループに陥ってしまうのです。

2つ目は「伝言ゲーム問題」です。一次請け企業で要件定義をして、二次請け企業で設計して、三次請け以下の企業の人員が開発をする・・・、開発現場では所属企業が異なり、価値観や常識感も異なる人たちが、エンドクライアントと直接コミュニケーションを取ることなく、多くの人が間に介在した状態で情報を受け取り、それを基に開発を進めます。皆さん幼少期に伝言ゲームをしたことはありますよね?あれといっしょで、人が介在すれば情報は少しづつ変わります。結果、エンドクライアントが求めたシステムが一発でできることなんて不可能なわけです。

 

「多重下請け構造」の解消を目指す「WhiteBox」

そこで「WhiteBox」は、ねずみ算式に多重の構造を作ることなく、最低限の下請け構造のみで適切な人材をアサインできるプラットフォームを開発、提供しています。少し補足しておくと、我々が否定しているのは「多重下請け構造」であって、前にも話している通り、日本の雇用制度下では「下請け構造」自体は必要な場面があり、それそのものを否定はしていません。

サービスの具体的な中身としては、自社のエンジニアのスキルシートを管理し、案件を求める「パートナープラン会員」の企業と、開発の案件を持ち、人材を求める「SIerプラン会員」の企業で分かれ、プラットフォーム内でのマッチングで、適切なアサインを実現しています。また、その時ある案件とその時に空いている(もしくは空きそうな)人材をマッチングすることが従来のSI(SES)のやり方でしたが、「WhiteBox」を活用することで、先々を見据えたアサインを行う「未来マッチング」も可能となります。

案件・人材管理の目的で営業効率化ツールとして活用していただきつつ、売上にも直接貢献できる機能を有しているわけです。

また、成約ベースで従量課金制にすると、「多重下請け構造」の中間搾取と同じ行為になってしまうため、あくまでも毎月固定のプラットフォーム利用料のみで、使い放題、成約し放題になっています。

創業から2年で、約1,000社の会員に登録いただき、約3万名のエンジニア(スキルシート)情報をご登録いただいています。

 

「WhiteBox」創業の経緯とこれから

銀行で見た「正しくないモノ」

幼少期から好奇心が人一倍強く、大人に対して「なぜ?」と聞くことが異常に多かったです。小学生の時には、その行動が授業を止めるから授業が進まなくなる、とクラスの他の子の親からクレームが入ることも多々ありました・・・。

それでも、「納得するまで話すことは悪いことではない」と、キバを抜かずに育ててくれた親に感謝です。

そんなちょっと変わり者の私が、何故かファーストキャリアで銀行員になってしまったのです。それも、今の三菱UFJ銀行という大きな組織で・・・。別に後悔しているわけではありません。今の私は、ここでの学びがかなり大きく影響していますので。

ただ、ここで見たのは、各業界の「正しくないモノ」でした。

取引先の業界慣習においては、非合理的なことはもちろんのこと、不誠実が横行していました。その最たるものが、銀行業務でした。お金を必要としていない優良企業にお金を貸し付け、本当に支援が必要な企業は審査が通りづらいので二の次・・・。もちろんすべてがそうではないですが、上司次第では不誠実な指示が日々飛んでくるわけです。

ここでの経験が、私の「正しいことをしたい」という思いの原点になりました。

 

ネット専業銀行でIT領域と出会う

その後、ご縁あってインターネット専業銀行で新規事業の立ち上げを担いましたそこで出会ったのは、IT(システム開発)業界の闇。

社内のシステム開発の統括部署には、大手ベンダーから出向で来ている役職者がおり、その人を通さないとエンジニアの皆さんとはコミュニケーションを取ってはいけない決まりになっていました。まさに、「伝言ゲーム問題」が発生し、こちらの伝えたいことがエンジニアに伝わらず、もやもやする日々・・・。その後、紆余曲折あり、エンジニアの皆さまと直接コミュニケーションを取ることを良しとしてもらい、順調に事業開発を進めていた中で知った闇が、まさに「多重下請け構造」でした。チームのエンジニアはそれぞれ別の所属会社から来ており、「●●社が上で、××社の下が▲▲社で・・・」と謎の構造が・・・。

ITとは縁が無かった銀行員が、初めてITの闇を知った瞬間でした。

そんな中でも、ビジネスサイドである自身が確りIT知識を身に着け、直接エンジニアの皆さんとコミュニケーションを取ることで、円滑に事業開発を行うことができ、開発着手から最短2カ月でリリースしたサービスもありました。

 

情報戦略テクノロジーとの出会い、そして「WhiteBox」創業へ

そんな中出会ったのが、「0次DX」を掲げ、従来のシステム開発、業界構造を改革するべく事業を展開している、情報戦略テクノロジーでした。まさに、その時直面していたITの闇に立ち向かっている企業であり、そのポリシーを貫いている会社でした。社長を始め、役員の方たちが強い熱意をもって、「正しいこと」を推進している姿に感銘を受け、すぐに参画することを決意しました。そして、そこでの取り組みを更に大きく展開すべく、2020年1月に「WhiteBox」を事業として開始するに至ったのです。

創業してすぐは、事業計画の策定から資金調達のための活動などはもちろんのこと、サービス版のためのシステム開発から営業戦略に至るまで、まだまだ業界経験が浅いながらに全方位、常に勉強しながら進めていました。ただ、全方位自身で経験したからこそ、見えた業界の本質があり、「正しいことをしている」という実感も得ながら進めることができました。

 

「WhiteBox」の今後

「WhiteBox」は、創業2年で約1,000社の会員企業に活用いただき、約3万名のエンジニアのデータが登録されたプラットフォームにまで成長することができました。今後もITの中心地である東京、首都圏を中心に、プラットフォーム規模を拡大するとともに、プラットフォーム内で会員の皆様にベネフィットを提供できるような仕組みをどんどん作っていきます。一方で、今の日本の課題の一つである、地方との情報格差についても、解決に向けて動いていきたいと思っています。

私は昨年から、とある地方自治体のDXのアドバイザーを務めています。また、その地方の地元企業複数社のDX推進にも携わるなど、地方創生×DXの活動に積極的に取り組んでいます。その中で改めて顕在化しているのが、「情報格差」「環境格差」です。

今後は、首都圏を中心に集まった「WhiteBox」の会員企業の皆さまと協力することで、自治体DXや地方企業のDXに積極的に取り組み、日本全体で強い国を作れるような取り組みをしていきたいと思っていますし、デジタル田園都市国家構想でもある通り、人流づくりや、地方DX人材育成などにも貢献していきたいと思っています。

また、それを行うことによって、「WhiteBox」の会員企業の皆さまに、自治体DXや地方企業DXのお手伝いを可能とする案件をお届けできる他、地方の地元ベンダー(SES事業者)の活躍や、首都圏企業との交流による、受注幅の増大やスキルの底上げも繋がり、格差をなくして日本全体を強くして行けると考えています。

  

【会社概要】
会社名 : 株式会社WhiteBox
代表者 : 代表取締役 川原 翔太
所在地 : 東京都渋谷区東3-9-19 VORT恵比寿 maxim8F
創業  : 2020年1月23日
資本金 : 1億円(資本準備金含む)
URL  : https://white-box.co.jp/(コーポレートサイト)
https://whitebox.vision/ (サービスサイト)

【プロフィール】

2012年に三菱UFJ銀行に入社の後、住信SBIネット銀行に参画し、事業計画策定やそれに伴う融資支援、融資審査の他、事業企画、経営戦略、M&Aや上場準備等の業務に従事。
2020年1月に株式会社WhiteBoxを創業し代表取締役に就任し、創業から2年、正式サービス開始から1年で、会員数約1,000社、約3万名まで規模を拡大し、プラットフォームの付加価値提供のために、自ら自治体や企業のDXアドバイザーとして活動し、DXを推進。また「ゼロ次DX」を掲げるシステム開発内製支援事業を展開する株式会社情報戦略テクノロジーにて役員を務める他、Tech人材向けコミュニティ型賃貸住宅やワーケーションサービスなどを提供する株式会社CEspaceでも役員を兼任。

 

取材/
リビルダーズ編集部

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