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(※外部サイト「三豊市 お知らせ」を別ウィンドウで開きます)
香川県三豊市はインテル日本法人と協定を結び、庁内ならびに市全体のデジタル人材の育成や、小中学校に対する教育支援を受ける方針だと発表した。
同市は、かねてから課題視していた情報格差による遅れを取り戻すべく、デジタルの専門家であるインテルと連携することで、デジタル人材の育成を加速させて地域のデジタル実装ならびに課題解決に取り組んでいく意向だ。
インテル側としては、同社のインテル・デジタルラボ構想(※1)に基づき、AIとDXに関する学習プログラムによる市の人材育成の後押しをすることで、地域のデジタル実装を支援していく方針を発表。また、本取り組みが豊かなデジタル田園都市(※2)を実現するための重要な一歩であると位置付け、社会課題の解決に向けて強い意欲を表明した。
(※1)インテル・デジタルラボ構想とは・・・デジタル人材を育成し、地域のデジタル実装を支援する取り組みのこと。
(※2)デジタル田園都市とは・・・地方の魅力を活かしつつ、デジタル技術により都市部に肩を並べる利便性とチャレンジしやすい環境を持ち合わせた都市のこと。
まず最初の取り組みとして、インテルから講師を派遣してもらい庁内の職員と地元企業の社員らを対象として研修を実施していく。内容としては地域の課題解決に役立つDXとDxC(※3)研修を予定している。さらに高校生と高専生を対象にAI教育を実施する予定だ。
(※3)DcXとは・・・データセントリックトランスフォーメーションの略でデータのやりとりや分析・活用を軸とした取り組みのことをいう
2023年以降は、小中学校等を対象にして教育支援を実施していく方針で、デジタル人材の育成を市全体で進めていく。
【執筆者コメント】
当メディアでも過去にいくつも取り上げてきた官民、産学官連携だが、今回は特にインテルというビッグ企業の名前が出ていたので取り上げました。
インテルがなぜ三豊市を選んだ?
このニュースを知った人は、なぜインテルが三豊市となのか?と疑問を持った人も少なくないと思う。 筆者が思うに以下の2つのポイントがあったと思う。
1、デジタルファースト志向が生んだ三豊市オリジナルキャッシュレス「Mito Pay」
2、地域のAI人材やデータサイエンティスト育成のために積極的なイベント誘致活動
まず1については、三豊市が掲げるデジタルファースト宣言に準じて、同市では最新技術を活用して市民サービスの向上や、地域住民や子どもたちが地方という足枷を感じないように「チャレンジできる環境づくり」に尽力するとしている。なんと三豊市オリジナルのキャッシュレスサービスまで作ってしまう熱量にはビックリだ。これもコロナ禍をきっかけに接触機会を減らしたり利便性向上により市民を支えたいという思いがあってのものである。
続いて2については、同市は香川県の一般社団法人「MAiZM マイズム(一般社団法人みとよAI社会推進機構)」と連携を組むなど、AIを活用できる人材育成への高い意識が伺える。これは市長が市民に対して宣言している施政方針からも分かるように「地方でも格差無く学べる・挑戦できる」という環境づくりに力を入れている。
これらが要因となりインテル側も支援をしようと決めたのではないかと考えられる。
インテルにメリットはあるのか?
そこでふと疑問が湧くのが、インテルが行政を支援するメリット何か?であるが、もちろん営利企業なのだからSDGsへの取り組みだ、投資家へのアピールだ、と言ってしまえばそれで終わりなのだが、もっと踏み込んでみると筆者としては以下の2点があると推察している。
1、インテルの教育プログラムの成功実績を得られる
2、教育分野進出への可能性が広がる
1について、インテルは今年度、人材育成に注力することを打ち出しており「インテル・デジタルラボ構想」と銘打ち、自社のナレッジを提供することで地方のデジタル実装を後押ししていく方針であり、教育プログラムを地方自治体に提供することで、果たして効果があるのかどうかという実績を作ることができる。このように第三者が実績を上げることでインテルの教育プログラムへの信頼性はグッと上がるので、インテルのAIやDXに対するナレッジは価値が上がり、また教育という側面においても再現性があり様々な人に対して有用であるということを世界に向けて印象づけることにもなる。
2については、1の延長線にはなるのだが、教育プログラムの価値が証明されれば、それ自体に価値が生まれる。ひいては、その教育プログラムを引っ提げて、教育分野に殴り込みが可能だ。事実NTTやドワンゴなど、すでにデジタルスクールを展開している前例はかなりある。インテルが自社の教育プログラムを教育機関や企業、そして個人に対して提供することで、教育分野に本格的に進出することも可能になる。
インテルは「世界を豊かにする」を掲げるミッションファースト企業
インテルがそれを見据えているかはさておき、そもそもインテルって何を目的にした企業なの?という話をすると、一言でいってしまえば「世界への貢献」だ。コーポレートサイトにもあるように、「インテルは地球上のあらゆる人の生活を向上させる、世界を変革するテクノロジーを創造します。」というミッションを掲げている。いわば今回はそのミッションに準じた行動であるので、なんら違和感はない至極自然の行動ということもできる。
デルは「社会貢献」を掲げるミッションファースト企業
そういえば、インテルが行政と連携するのは今回が初めてではなく、2018年に高知県須崎市と既に連携をしています。その時はインテルと戦略的パートナーシップにあるデルとタッグを組み、須崎市のデジタル実装を支援しています。以下、参考までに。
【参考】デル・インテルが高知県須崎市と提携
上記提携時にデルが表明したのは、本提携がデル自身にすぐにベネフィットを提供するのかというとNOではあるが、この提携の意図は創設者マイクロデル氏の意志、すなわりデルが掲げたミッションである「社会貢献せよ」に準ずる行動であるということだ。
デルは1994年から約6年間で売上高を9倍という脅威的な伸びを記録し、2006年にはPC出荷台数はHPと並んで3800万台を記録。世界市場のシェア15.9%を獲得するに至り、HPと世界市場シェアの首位の座を分け合った。まさしくアメリカンドリームとして語られるデルであるが、創設者がミッションに据えたのは「社会貢献活動」であった。
(参考資料)広島経済大学経済研究論集「デルとインテルの戦略的パートナーシップについて」
さいごに
今回の官民協定により三豊市がDX推進に対して前のめりである姿勢を示すことができた一方で、三豊市側がインテルの持つ高度なナレッジを吸い尽くせるかが重要な分かれ目になると筆者は予想している。
これは三豊市に限った話ではなく、どの行政にも当てはまることで、今まで行政内にはなかった新しい文化を吸収しようというのだから、内部からは拒絶反応が起きたり、吸収しただけで活用できなかったりと行政側に求められるレベルは決して低くはない。ともなればこれらDX推進を引っ張る市長の強烈なリーダーシップが必要になってくることは言うまでもなく、今後行政のDXを成功に導けるかどうか市長が踏ん張れるかに注目していきたい。
組織の長がDX推進の肝であることはこちらの記事を参考にしていただけると幸いです。
【参考記事】「やはり、DXで一番変革しなければいけないのは社長で確定。」
執筆者/
リビルダーズ編集部 木城 秀人