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新紙幣製造は時流と逆行か、デジタル化社会がもたらすお金のDX

情報発信元:https://www.fnn.jp/articles/-/407468
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FNN取材部は2024年度に予定している日本の新紙幣製造について、紙幣の製造が続々と停止される世界の状況と比較し、時代と逆行しているのではないかと報じた。というのもヨーロッパやシンガポールなどの国々では高額な紙幣の発行が続々と停止しているのだ。

世界で高額紙幣が姿を消している背景には、マネーロンダリングや偽造紙幣の流通など犯罪の温床になってきた歴史がある。その対策として高額紙幣の発行を停止することで犯罪の抑止力とする狙いだ。

また、ここ数年日本では硬貨の製造が激減してきており、その要因としてキャッシュレスを利用する人口が増えていることが挙げられる。事実、キャッシュレス決済の割合は2010年時点では全体の13%だったのに対して、2021年では32%まで上昇しており、社会のデジタル化が進んだことが影響している。

財務省担当者は将来的には硬貨そのものが姿を消すことも予想しているという。時代の変化と共にお金そのものが姿を変え、お金を支払うことがデジタルにシフトしていくことは必然なのかもしれない。

【執筆者コメント】
キャッシュレス決済の登場で世界のお金のカタチが大きく変わり始めていると感じさせた報道であった。その上で私がふと思ったことは「キャッシュレスは誰が始めたのか?」という純粋な疑問だ。

キャッシュレスの代表格というと、お馴染みなのはクレジットカードだ。クレジットカードは1950年年代にアメリカで始まった。後を追うように日本でも1960年代にクレジットカードに上陸した。さらにソニーが先駆けて非接触決済システムの開発に着手し、2001年に電子マネー「Edy」が誕生した。

しかし、当時の日本はまだまだ現金至上主義であり、キャッシュレス決済を普及させるまでには至らなかった。その後日本にiPhoneが上陸すると、その頃からは交通系ICカードが広まり始めます。最近ではキャッシュレス決済は珍しくなくなったが、2021年に普及率32%まで広まってきている。

世界に目を向けると、キャッシュレスの普及事情はどうなのかというと、キャッシュレス推進協議会の資料(https://www.paymentsjapan.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2021/05/roadmap2021.pdf)によると2018年時点で以下のようなランキングとなっている。
1位:韓国(94%)
2位:中国(77%)
3位:カナダ(62%)
4位:オーストラリア(59%)
10位:日本(24%)
以上のように、世界の主要国はすでに6割の普及率だが、日本は少し遅れている状況だ。経済産業省は2018年に「キャッシュレスビジョン」という方針を打ち立てて、遅れを取り返そうとしているが、そもそもキャッシュレス化が正義であるかのように聞こえてくる。

そこで確認しておきたいのが、世界的にキャッシュレスの波が強まってきた理由が何なのかということだが、大きく2つある。
1、現金利用におけるリスクの減少
2、現金の管理コスト削減

現金がなくなることで、偽造や盗難、脱税などの抑止力としての効果が期待できるし、インバウンド消費の取り込みや利便性向上による流動性アップなどが見込める。お金を管理する企業側からすると、デジタル化することで実店舗などのレジが無人化することで人件費のコスト削減になったり、支払いデータを蓄積することで新たなビジネスへ利活用ができるようになったりとメリットが大きい。

さらにスケールを大きくすると、企業が支払いデータの活用により成長することで、消費者の利便性が向上し国内の消費が活発になることで税収が増えると、結果的に国力が強化されることになる。このように国がキャッシュレス化に取り組むのには、少子高齢化で苦しむ日本が直面している問題が関係していることがわかってくる。

ともなれば日本のキャッシュレス化促進も重要のポイントにはなってくるが、店舗側からすれば導入費用や決済手数料が重くのしかかり、キャッシュレス決済の導入に尻込みしているケースもあるようだ。というのも、SuicaやiDなどの非接触決済システムを採用するとなると専用端末が必要となり、端末のレンタル代などの費用(数万円程度)が発生する。そして何よりも店舗側にとって痛手となるのが、決済手数料だ。

例えばSuicaを例にすると約3%の手数料が1決済毎にかかってくる。たかが3%ではないかと思われる方もいるかも知れないが、小型店舗の場合は薄利で運営していることがザラなので死活問題なのだ。そんな中2019年に登場したPayPayがキャッシュレス普及の後押しをしたと言っても過言ではないと筆者は思っている。

PayPayは人海戦術で他社がやらない中小店舗を中心に「決済手数料無料」という謳い文句で一気に攻めたのだ。加えてQRコード決済システム(顧客がスマホでQRを読み取り決済する方法)という店舗側に導入コストが不要な決済システムが追い風となり、あっという間にシェアを広めた。2021年には有料化に踏み切ったが、決済手数料は業界最低水準の1.6%となっており、PayPay側が決済手数料で儲けようとしていない姿勢だ。故に、解約する店舗はそこまで増えず、むしろ順調にシェアを伸ばし続けている。

今後もキャッシュレス普及を推し進める勘所は、店舗側の導入コストをいかに軽くするかになってくるだろう。

執筆者/
リビルダーズ編集部 木城 秀人

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