「DXレポート」とは、国が発行するDXの教科書です。
2018年9月以降、経済産業省から3回にわたり公開されています。
DXにまつわる事柄がほぼすべて網羅されている一方、分量があり、すべて読みきるには時間がかかります。また、ポイントをつかみづらいという難点もあります。
Dこの記事では、DXレポートの重要なポイントを10分でつかめるよう整理しまとめてみました。
2022年時点で3つ公開されているDXレポート
これまでDXレポート1・2・2.1が発行されています。
①DXレポート1 (2018年9月公表)
「古くなってしまった基幹システムを刷新しないと競争力を失うよ」という警鐘を鳴らす内容です。
②DXレポート2 (2020年12月公表)
「即変化し続けられる企業に変わっていくことがDXの本質だよ」という内容です。
③DXレポート2.1 (2021年8月公表)
「即変化し続けられる企業に変わるために、外部企業との関係性を考え直さないとダメだよ」という内容です。
重点的に読むべきは、DXレポート2
DXレポートの中で一番DXを言い当てているのが、DXレポート2です。
DXはまさに、DXレポート2で述べている「即変化し続けられる企業に変わること」です。なぜなら、DXの目的は「デジタル企業と戦えるようになること」だからです。
デジタル企業は、市場ニーズの変化に即対応し次々とWEBサービス (アプリやサイトなど) をリリースします。一般企業もデジタル企業に負けじとWEBサービスをリリースする力を持たなければ勝負にならない時代です。
2022年時点で8000万人がSNSを活用し、WEBの視聴時間がテレビの視聴時間を越え始めています。テレビを見ない年齢層も生まれ始めています。(参考「平日のインターネット利用がテレビ視聴時間を初めて上回る(総務省調査)」)
明らかに主戦場がオフライン・テレビからWEBに移り始めている中、WEBサービスを次々リリースすることになれていない一般企業は淘汰されていくでしょう。
DXレポート1は前提。基幹システムの刷新は必要ですが、目的ではありません。そのことを訂正し、DXとは何かをまとめなおしたのがDXレポート2。DXレポート2.1は、2の補足です。
各レポートの内容をわかりやすく要約
各レポートの内容をカンタンにまとめます。
①DXレポート1「古くなった基幹システムを刷新しないと競争力を失うよ」
基幹システムとは「企業の経営を管理するシステム」。
経理・人事・受発注などを管理するシステムを指します。
これら基幹システムがDX推進の足かせになっている、というのがDXレポート1の内容です。
DXとはWEBサービスを次々リリースする企業に変革することだとお話しました。
ですが、基幹システムの多くは古いプログラミング技術で作られていたり、改造を繰り返すことで複雑化してしまっています。WEBサービスを作っても基幹システムと連結できないため、WEBサービスの成果を経営数字として管理できないなどの問題が発生しています。
■DXレポート1に登場するキーワード「2025年の崖」とは?
2025年以降、基幹システムを刷新することが出来なくなりDXに対応しきれなくなるよ、という意味です。
なぜ基幹システムを刷新できなくなるのか。基幹システムを作ってきた古いプログラミング技術の担い手たちが、2025年以降定年退職で引退するからです。
ですがこの「2025年の崖」という言葉が強いことから「基幹システムを刷新すればDXは完了なんだ」という誤解が広がってしまいました。
DXはあくまでWEBサービスを次々リリースする企業に変革すること。基幹システム刷新はそのための土台作りであり、スタート地点です。
この誤解を訂正するために作られたのが次のDXレポート2でした。
>リンク:
DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
②DXレポート2「即変化し続けられる企業になろう」
「DXとはなにか」という疑問にしっかり答えているのがDXレポート2。
「即変化し続けられる企業になろう。そのためにも基幹システムの刷新で止まっていてはダメですよ。」という内容です。
「即変化し続けられる」というのはここまでお話してきた通り、WEBサービスを手早く作りリリース・リリース後も市場の反応を見て高速で改良を繰り返していくことができることを指しています。
デジタル企業ではない一般企業は「即変化し続けられる」ことができません。
サービスやプロダクトをリリースするにも、市場調査や会議を重ね数年かけてというスピード感が通常です。WEBサービスをリリースするにしても、外注を使うことが一般的であるため「市場の反応を見て高速で改良」ができません。
■「即変化し続けられる企業」になるには、内製が理想だけれども
即変化し続けられる企業になるためにはWEBサービスを内製で、自社で作れるようにすることが必要になってきます。
WEBサービスは、リリース後アップデートされていくことが前提になっています。WEB上でWindowsがどんどんアップデートされていく、アレです。つまり、完璧ではない状態でリリースすることが市場からも容認されているということです。
内製で作れるということは、WEBサービスの特徴であるアップデート速度を大幅に向上させることができるということです。そのためDXレポート2でも内製を推奨しています。
ですが、ここで内製に対応できるエンジニアが少ないという問題が浮上します。
日本のエンジニアの8割は、約3万社存在するソフトウェア開発会社に所属しています。発注元の企業に所属し、システム開発を行うエンジニアはごくわずかです。
またソフトウェア開発会社で働くことに慣れているエンジニアは、発注元企業に所属し、ビジネスサイドと喧々諤々しながらシステムを開発していくワークスタイルを避ける傾向があります。
内製に適したエンジニアが非常に少ない中で、すべての企業が内製化を実現させるのは不可能です。ではどうするべきかを補足しているのが③DXレポート2.1になります。
>リンク:
「DXとはなにか」を正しく理解できる、DXレポート2を解説。
③DXレポート2.1「外部企業との関係性を見直そう」
即変化し続けられる企業になるということは、WEBサービスを内製で作る体制・人が必要。でも、すべての企業が内製出来るほどエンジニアはいない。
そこで、外部協力会社との関係性を変えましょうと補足しているのが、DXレポート2.1です。
■外部協力会社とフラットな関係になることを提言
システム開発を外部企業に発注する「請負契約」は、請負内容で決めたこと以上のことを行いません。市場変化によって作りたいシステムが変わったとしても、対応できなくなるということです。
また「少しここを直したい」といった場合でも、見積もりを作り、稟議をあげ社内承認を取り…という流れを踏まなければいけないため、即変化し続けられる企業には到底なれません。
そのため、DXを実現させるのであれば、外部企業とフラットに、受発注の関係ではなくともに相談しあいながらシステム開発を行っていく関係性になりましょうと提言しています。
>リンク:
「DXレポート2.1」10分で要点をつかむ!解説とオマケ考察
まとめ
本記事だけでもDXレポートの要点はつかんだと言って大丈夫です。
さらに本格的にDX推進を開始する際には、こちらの内容をふまえ、DXレポートを読み込んでみていただけると内容が深く入ってくるはずです。
またDXレポートには、図をメインにDXを解説しているおまけverもあります。そちらも参考にされると、要点をより明確に理解することができると思います。ぜひご参考ください。
>リンク:
DXレポート眠くなる方に朗報『対話に向けた検討ポイント集』
執筆者
リビルダーズ編集部