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「DXレポート2.1」10分で要点をつかむ!解説とオマケ考察

DXレポート2.1

日本のDXを推進するため経済産業省から公表されているDXレポート。2018年9月に「DXレポート1」、2020年12月に「DXレポート2」、そして2021年8月に「DXレポート2.1」が公表されました。DXレポート2.1は、DXレポート2で触れられていた「ユーザー企業とベンダー企業の共創関係」について追加補足する内容で、DXを推進するにあたって特に重要かつ足かせになっている部分であることが強調されています。

本記事では、まずは要点を5分でつかめるよう内容をかみくだいてお伝えします。また、DXレポート2.1では触れられていなかった点についての考察も記載させていただきますので、ぜひご参照ください。

「DXレポート2.1」とは?

DXの全容を網羅していたDXレポート2ですが、その内の一つのテーマであった「ユーザー企業とベンダー企業の共創関係」に主眼を置き、くわしく説明しているのがDXレポート2.1です。

ユーザー企業のシステム内製化が進む一方で、ご存知の通りIT人材が圧倒的に不足・自社で必要なIT人材を採用し切ることはむずかしく、ベンダーとの”共創”が必須になってきます。ちなみに、日本には約100万人のIT人材がいますが、その内約80万人近くがベンダー企業に所属していると言われています。

また、DXレポート2によると「顧客のニーズに即反応し、あたらしいサービスなどを提供できる企業体になること」がDX。現状のユーザー企業とベンダー企業における受発注関係では、到底DXに必要なスピード感での開発に対応できません。

そこで、ユーザー企業・ベンダー企業という垣根を取り払い、お互いフラットな関係性を築きあげ共創してくださいと、今一度強調して伝えています。

ユーザー・ベンダーの「低位安定関係」とは?

では、現状のユーザー企業・ベンダー企業の関係性がどのくらい問題なのか。両者の関係性をDXレポート2では「相互依存」であると表現していましたが、さらにDXレポート2.1では、相互依存の中でも「低位安定」という関係にあるとしています。

引用:DXレポート2.1  | 経済産業省

この図の下半分部分が現状の関係性です。要点だけかいつまんでわかりやすくお伝えすると、

①ユーザー企業は、ITシステムの開発をベンダー企業に「丸投げ」状態
 →ユーザー企業の中にIT知見が貯まらない状態

ベンダー企業は、IT知見ではなく、労働量に対して対価を得ている状態
 →IT知見を高める理由がない・IT知見を高め生産性が上がれば労働量が下がり、対価も下がる

つまり、ユーザー企業・ベンダー企業双方が、IT知見を貯める・高めるということなくもたれ合って生きながらえている「安定はしているけど、お互いを育てあうことのない低位な関係」だという話です。この関係性を続けていてはIT知見が磨かれず、DX企業に変革していくことは到底不可能です。

また、ユーザー企業内にIT知見が高い人間がいれば10分で対応できるようなITシステムの修正も、ベンダー企業に依頼→見積もり→ドキュメントを作成…と、完成が1ヶ月後になるなどタイムラグが起きてしまい「顧客のニーズに即反応する」DXを実現することなど不可能です。

ここまでのお話で「なぜユーザー企業ははじめから内製しなかったのか?ベンダーへの外注の方が高く付くのでは?」と気になられた方もいらっしゃると思いますので、補足します。下記図をごらんください。

引用:DXレポート2  | 経済産業省

上記左図、基幹システムと呼ばれる大規模システムの開発は

❶多くのエンジニアが必要 (すべて自社雇用するのは不可能)
❷開発フェーズによって必要人数が違う (日本の雇用法上、不要になったら解雇するというわけにはいかない)

という特長があります。結果的に、開発に必要なエンジニアをすべて自社雇用するよりも、ベンダーに外注してしまったほうがはるかにコストもリスクも抑えられます。

ですがこの先、DX時代の主役になってくるのは大規模基幹システムではなく、たとえばマッチングアプリのようなビジネス成果を産む小規模システムです。( DXレポート2で「SoE (Systems of Engagement)」と呼んでいる、顧客や社会との接点(Engagement)を通して顧客や社会の課題を発見し、解決することで新たな価値提案を行うためのシステム )

上記左図、小規模システムの開発は、

❶必要エンジニア数がそこまで多くない
❷開発フェーズによる必要人数があまりバラ突かない

という特長があります。つまり、自社でエンジニアを雇用し、内製を進めるハードルがグッと下がったのです。近年、内製するユーザー企業が増えだした背景はこのあたりにあります。

DX推進において、現在のユーザー企業・ベンダー企業の関係性は明らかに足かせです。垣根を無くして”共創”せよ、という主張とセットで、ベンダー企業は下記図ような企業体に変革せよ、というモデルも提示されています。

引用:DXレポート2.1  | 経済産業省

ベンダー企業側は、現状のシステムインテグレーション業界・多重下請け構造の縦割り関係を解体し、共通プラットフォームを通じてフラットな関係性に変革していきましょうという内容です。

エンジニアが所属しているのは、上記図でいうところの「中小零細企業」。上流の「大企業」には、エンジニアではなく、エンジニアを管理する人たちが所属しています。中小零細企業のエンジニア達が、大手企業をはさまずユーザー企業と直接コミュニケーションを取って開発していくことができるのであれば、フラットな関係は十分構築できる可能性はあります。

問題は、ユーザー企業側の受け入れ姿勢

ユーザー企業・ベンダー企業問題について、経済産業省からスポットが当てられたこと自体非常に意義がある事です。このベンダー企業・システムインテグレーション業界の実態は、まだまだ業界外の方々に知られていない内容です。

一点補足したいのは、このDXレポート2.1で出てくるベンダー企業は「受託業者」、つまりユーザー企業から発注されたシステムを開発し納品する業態の企業です。たしかにシステムインテグレーション業界の企業の多くは受託業者なので、大きなズレはありません。

ですが、実はもうすでに、ユーザー企業と直接取引する中小零細ベンダー企業は存在しています。まだまだ数は多くありませんが、内製時代に突入した影響か、近年増加傾向にあります。プラットフォームの整備とともに、この状況はどんどん拡大していくでしょう。

しかし、それで”共創関係”が広がっていくかと言うと…断言できません。なぜなら、ユーザー企業の「受け入れ姿勢」に関する問題が残っているからです。

直接取引する中小ベンダーは存在するものの、実情は「社内下請け企業」に成り下がってしまっているケースが多いです。つまり、対等ではなく、ユーザー企業担当者の指示通りそのまま作る、手を動かす作業者としての扱い。これは”共創”ではありません。

ともに対等な立場で、お互いの違いを理解し合いながら、なにをどう作っていくべきかを悩み合いながら開発していくパートナーとしての扱いではなく、ユーザー企業担当者の近くで作るだけの存在。互いのIT知見を高めあう「高位安定」の状態になっていないということです。

一方、すでに内製をはじめているユーザー企業の場合、比較的受け入れ姿勢が整っており、共創関係を育めているようです。もうすでに「受け入れ力の格差」が起き始めていると言えます。

まとめ

ユーザー企業・ベンダー企業が、真の共創関係を築いていくことが、DX推進にとって最重要事項。ですが、DXレポート2.1に書かれている通り、プラットフォームの整備を待っているだけでは、共創関係は築けません。すぐに取り組むべきは、自分とは違う人たちを理解し、承認し合う姿勢を身につけることなのではないでしょうか。

DX以降の企業・人に問われるのは、コラボレーションする力なのかも知れません。

参考
経済産業省「デジタル産業の創出に向けた研究会の報告書『DXレポート2.1(DXレポート2追補版)』を取りまとめました」

執筆者
リビルダーズ編集部

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