情報発信元:https://news.yahoo.co.jp/articles/8c406b06ec333501ea095d03c85524c25aa807a6
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【概要】
欧州連合(EU)の主要機関は8日、人工知能(AI)の利用に関する世界初の規制案に大筋で合意しました。
この規制案は、市民の権利や民主主義への潜在的な脅威を考慮し、人種や宗教、政治信条などの個人情報に基づく個人認証システムの禁止を主要な内容としています。今後は加盟国と欧州議会が承認手続きに入ります。
規制の全面的な実施は2026年を予定しており、それまでの間、欧州委員会は企業に規制の自主的な順守を求める「AI協定」を策定する予定です。
特に注目されたのは、急速に普及する生成AIの取り扱いで、合意案では事業者にEU著作権法の順守や、システム開発に使用した著作物データの要約開示を求め、透明性の確保が図られます。
【執筆者コメント】
これまで人工知能(AI)の利用に関する規制は、日本では現行法(著作権や人権侵害等)へ当てはめての議論が中心となっており、AIに特化した新規規制は検討段階でした。
そんな中ついにEUが先行して規制案を出してきました。このような国際的なルールは、欧州、もしくは米国が率先して制度化して運用を始めることが多いので、今回のEUで出された規制案について要点はおさえておくべきでしょう。
この規制案では、生成AIの提供企業に「AIで作成された内容であること」を明示する義務が課され、透明性が求められます。また、開発者と利用者双方に責任を法律で明確に定め、世界標準のルールとしての定着を目指しています。
今回の規制案の要点をまとめると、以下になります。
<対象>
・EUでAI関連事業(製品やサービス)を提供するAIの「事業者」と「利用者」が対象となる。
<規制内容>
・AIリスクを4段階に部類分けし、それぞれに義務を付与。
※4段階のリスク:①容認できない ②高い ③限定的 ④最小限と定めている。
例えば、「①容認できない」に該当する例としては、子供や障害者の弱みにつけ込むような内容のもの。
・生成AI等の事業者は、透明性を担保しなければならない。
※生成AIの学習手順等について文書での開示を求める内容。
<罰則>
・違反した企業には、最大で3500万ユーロ(約54億円)または、年間世界売上高の7%の制裁金が科される。
EUは「AIオフィス」という監督・執行機関を設置し、リスクが高いと判断されたAIには厳格な法律を適用します。この合意は、加盟国の代表からなる閣僚理事会と欧州議会での政治合意により成立し、最終承認を経て2026年ごろから施行される予定です。
今後、より詳細な規制案内容が公開されることになり、EUの規制案がベースとなり様々な議論が進むことが予測されますので、注目していきたいと思います。
執筆者/
リビルダーズ編集部 丹治 秀人