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米スタートアップAnyplace、デジタルノマドをターゲットにして急成長

情報発信元:https://techcrunch.com/2023/10/18/anyplace-a-startup-aimed-at-giving-digital-nomads-a-comfortable-place-to-work-nearly-doubles-valuation-with-new-8-27m-round/
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【概要】

Anyplaceは、デジタルノマド(※1)やリモートワーカーを対象とした家具付きのホームオフィスを提供するスタートアップ。現在、サンフランシスコ、ロサンゼルス、サンディエゴ、ニューヨークと4都市を中心に展開。

2022年初頭に、Anyplace Select(※1)という製品をリリースし、オペレーションモデル(※2)に移行。これにより、リモートワーカーや出張者がどこからでも仕事ができる家具付きアパートを提供。

2022年12月には、マーケットプレイスの運営を停止し、新しい事業分野に注力。さらに2022年1月以降、収益は6倍に増加。直近の資金調達では、シリーズBで827万ドルを調達。前回の調達は2022年1月の530万ドル。Anyplaceは現在、4都市で100以上のユニットを管理。年間稼働率は80%~85%と高水準となっている。

今後の展開として新しい市場への拡大や、地元のコンシェルジュサービスの提供など、付加価値をつけることで顧客体験の向上を目指している。

(※1)デジタルノマド・・・ パソコン1つで仕事をしながら、国内外を旅をする人のことを指す。リモートワーカーとよく混同されるが、リモートワーカーはオフィス以外の自宅やコワーキングスペースで働く人を指し、デジタルノマドには旅という要素が加わる。
(※2)Anyplace Select・・・Anyplaceが2021年に開始した「リモートワークに特化した賃貸サービス」
参考記事:「リモートワークのすべてがそろうサービスアパートメント「Anyplace Select」--米国で稼働率96%」
(※3)オペレーションモデル・・・ビジネスモデルを実現するための手段。
(※4)シリーズB・・・スタートアップ企業に対する投資ラウンド(投資家が企業に投資する際に目安とする考え方)の1つで、ビジネスが軌道に乗り始めた段階のこと。


【執筆者コメント】

パンデミックで急速に普及したリモートワークですが、コロナが落ち着くと同時に世界的に出社への回帰傾向にあります。完全撤廃した企業として有名なのは、テスラ社でしょう。イーロンマスク氏が全社員に対してリモートワークを続けたければ辞職するか、それとも会社に戻るかを迫ったという出来事は世界的に衝撃を与えました。

第三の働き方「ハイブリッドワーク」の企業も増加

国内外において、フル出社へ回帰する企業がいる一方で、リモートワークと出社のハイブリッドな働き方を社員に提供する企業も増えてきました。GoogleやZoomがその筆頭で、柔軟な働き方の社員に提供することで、従来にはなかったアドバンテージを得ようという企業も増えてきています。

世の中の働き方に対する考え方がコロナを通じて変化し、企業もどのような働き方を社員に提供するのか選択する時代になってきていることがわかってきます。

そして、本記事で取り上げたAnyplaceにおいては、そのメインターゲット層はフルリモートワーカーの「デジタルノマド」です。

Anyplaceが好調な理由は3つ

1)リモートワーカーのニーズをいち早く感知し、事業に反映。

コロナ禍に不動産会社やホテルがリモートワーカー向けに部屋の貸し出しをするも、ユーザーの満足は低かったようです。AnyplaceのCEO曰く、友人の中にはホテルの労働環境に不満で大型モニターを運び込んだ友人がいたというエピソードを語っている。

Anyplaceはこういったユーザーのニーズがリモートワークに適した環境にあることをいち早くキャッチし、すぐに事業に反映。広いデスクや大型モニター、長時間座っても疲れない椅子、高速Wi-fi、リモート会議に必要なカメラやマイク、グリーンバックまでを揃える。その1つ1つはCEO自らが使用感を確かめるなど吟味を重ねている。

2)競合相手の不在

コロナ禍以降の不景気で、米国での資金調達は格段に難しくなった。裏を返すと競合が出現し辛いという追い風が吹いている状況です。加えて競合となり得る不動産会社はユーザーの仕事環境の整備を重視しておらず、Anyplaceの差別化が活きるとしています。

テックワーカーたちが価値を感じる高速Wi-fiや大型モニターなどの環境を整備することで、ユーザーからは喜ばれるし部屋のレンタル料も上げられる。しかし大手の不動産会社にはこのビジネスモデルに価値が感じられないだろうと同社は考えています。

3)Z世代を中心に増加するデジタルノマドの存在

MBOパートナーズの調査レポート「デジタルノマド2023」レポートによるとパンデミック後にデジタルノマドの数は3倍に増加し、2019年から2022年にかけて131%増加しています。デジタルノマドの58%は若い世代で、Z世代が21%、ミレニアル世代が37%です。

若い世代ほど柔軟な働き方を好む傾向が強く、従来の会社の中で働くという価値観に縛られてくないでしょう。裏付けるデータとしてデジタルノマドの80%が自分の仕事に満足していると回答しており、その幸福度の高さが注目されています。こういったユーザーたちの存在もAnyplaceの稼働率に影響を与えていると考えるのが自然です。

価値観の多様化が進む世の中ですが、自身の幸福度を軸にして選ぶことができる人生でありたいものです。

執筆者/
リビルダーズ編集部 丹治 秀人

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