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那覇市がDX推進計画を策定

情報発信元:https://www.city.naha.okinawa.jp/websyuccyoujyo/kaiken/2023kaiken/kaiken230405.files/siryou20230405.pdf
(※外部サイト「那覇市 "DX推進計画"資料」を別ウィンドウで開きます)

2023年4月5日、沖縄県那覇市は「那覇市DX推進計画」を策定し発表しました。

那覇市がDXで実現したい未来像は、市民全員がデジタル技術の恩恵を受けられる、便利で豊かな市です。那覇の魅⼒や価値に、手段としてのデジタル技術を戦略的に活用することで、実現に向けてDXを推進していきます。本計画の対象期間は、2023年度から2028年度までの6年間としています。

新型コロナ感染症の流⾏がきっかけとなり、⾏政のデジタル化の遅れが明らかになり、行政もDXを行う機運が高まっています。沖縄県でも、「沖縄県DX推進計画」を2022年8月に策定するなど、デジタル活用を推進していく中で、那覇市も今後さらに「デジタル技術を活⽤した変⾰」を進めていく必要があることから、本計画が策定されました。

本計画でのDX推進は、2つの視点を持っています。一つ目は市⺠・事業者視点です。デジタル技術を活用するメリットを実感し、⽣活や事業を安心して営めることを目指していきます。二つ目は、職員視点です。市役所の業務にデジタル活用を進めることで、質の⾼いサービスを創出することを目指します。

今回のDX推進計画では、領域を2つに分けて進めていきます。初期段階では「⾏政のDX」を実行します。行政のDXとは、デジタル技術の活用によって、市民の利便性向上と行政事務の効率化を行うことです。その後は段階的に、「まちのDX」を進めていきます。まちのDXとは、地域活動や住⺠同⼠のコミュニティ、⺠間企業のサービスにおいて、自主的にDXを推進することを支援する取り組みです。

実際に取り組む内容として、那覇市は17個挙げています。

大きく、市民・事業者視点か、職員視点かに分け、さらにその中を6つの方向性に分類しています。

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『市民・事業者視点による取り組み』

「便利さを実感できるための取り組み」

①住民向けサービスのデジタル化
②マイナンバーカードの普及・活用
③行政手続きのオンライン化
④施設・窓口のオンライン予約の整備

「安⼼・信頼できるための取り組み」

⑤一人ひとりのニーズに合った行政情報の提供
⑥誰もがデジタル技術の恩恵を享受できるようになる
⑦EBPM(根拠に基づく政策立案)の促進

「共にまちをつくるための取り組み」

⑧デジタルを活用した公民連携事業の推進
⑨オープンデータの推進
⑩データ連携のユースケース検討


『職員視点による取り組み』

「意識を変えるための取り組み」

⑪DX施行実行に至るまでの動機形成
⑫DX推進に向けた庁内支援体制の構築

「業務の仕⽅を変えるための取り組み」

⑬業務の自動化促進
⑭オンライン相談体制の整備と相談 業務の効率化
⑮コミュニケーションのオンライン化

「働き⽅を変えるための取り組み」

⑯業務効率を最大化できる働く環境の整備
⑰業務効率向上に資するペーパーレス化の推進

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上記の内容を、市長をトップとして、CIO、庁議構成員から構成する「デジタル化推進本部」で実現していきます。計画の運用開始後は、取り組み内容を1年に1度評価し、改革を図ることで、DXの取り組みを滞りなく推進します。また2年に1回、環境の変化を鑑みたリスク分析を行い、目標値の見直しを行います。またDX推進を行う上での人材は、以下を想定しています。

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・マネージャー(管理職が担う想定)
 組織全体を率います。

・コールリーダー(DX推進部の職員が担う想定)
DX推進を牽引します。

・テックリーダー(技術的な知⾒を有する職員が担う想定)
デジタル技術の知⾒をもって、周囲を⽀援します。

・デジタル化推進メンバー(デジタル化推進員が担う想定)
コールリーダーと連携し、DXプロジェクトを中心となって実行します。

• フォロワー(各課の職員)
計画の通りデジタルを活用しつつ業務します。

• 外部専⾨⼈材
施策全体のマネジメントや取り組みについて助⾔します。

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上記の人物像ごとに必要となるスキルを育成するためのプログラムを提供し、人材育成を行っていくとのことです。

【執筆者コメント】
今回は那覇市のDX推進計画を取り上げました。評価すべき点と、危惧される点が両方含まれる計画だと考えます。

まずは評価すべき点ですが、随所に「市民視点」「事業者視点」を感じられる点です。

本計画を遂行していくにあたり、那覇市は「DX推進⽅針」として6つ定めています。そのうちの一つが、「人に優しいデジタル化」です。デジタルに慣れていない市⺠に対して⽀援を行い、全員が利用しやすい市役所を⽬指すとしています。業務の効率性を上げることに集中すると、ユーザーの利便性が軽んじられて議論が進んでいくケースも多くあります。誰一人取り残さない、という思いを計画の中に大々的に盛り込んでいるのは、ユーザー体験を向上させる本来の目的に合っていると言えるでしょう。

また、DXを進めることに対してどのような不安があるかを列挙しているページには、以下のような「市民の声」が記載されています。

全てオンラインになり、会話がなくなると寂しい。窓⼝では、⼿続きのついでに職員と会話できるとよい。

・単にサービスを提供するのではなく、使い⽅や⼿順をいつでも気軽に聞ける場所がほしい。⼦どもが近くに住んでいないため気軽に聞けない。わからないことがあれば携帯ショップで聞くことが多い。

上記の2つをみると、素直な意見を拾えていると思います。会話が無いと寂しいというのは、行政手続きの効率を上げるという観点ではあまり関係が無いことかもしれませんが、市民にとってあるべき市役所とは何かを考える上では必要な意見です。

また市民が手続きの課題を抱えたときに、行政に相談するのではなく携帯ショップなどに質問しているといった、市役所が把握しにくい実態までアンケートで声を拾ったのは非常に良い動きだと言えるでしょう。業務の効率化と、ある意味無駄ともいえるコミュニケーションは両立しにくいですが、無駄と思われるコミュニケーションに救われている人もいると分かれば、バランスの取れたデジタル化を進めることができます。

具体的にどう実行するかは本計画には記載がありませんでしたが、計画の方向性などはユーザーファーストですし、記載の内容を実行出来れば那覇市が達成したい目標に進んでいくことでしょう。

一方で、危惧すべき点もありました。それは、取り組みが形骸化する可能性があるということです。「計画の運用開始後は、取り組み内容を1年に1度評価し、改革を図ることで、DXの取り組みを滞りなく推進します。また2年に1回、環境の変化を鑑みたリスク分析を行い、目標値の見直しを行います。」という内容にあるように、今現状の方向性は良いと思われますが、いざ実行してみたら改善する必要がある、ということはよくあることです。その改善を試みるタイミングがあまりに少ないということは危惧すべき点だといえます。

本計画は6年計画であるため、計画が運用開始された後は、取り組み内容の評価が6回、環境の変化によるリスク分析と目標の見直しは3回しか行われません。近年はDXを推進する際には、システム開発はアジャイル方式が合っているとされています。

アジャイルは改善のサイクルを高速で回し、アウトプットと改善を繰り返す手法で、1、2週間に1回程度アウトプットと改善を繰り返して、目標を微修正・最適化しつつ開発していきます。

新型コロナウイルスの蔓延後、特に外部環境の変化はスピードが非常に早くなっていますし、それによりユーザーの要望の変化も起こります。那覇市のDX推進計画においても、今後外部環境が大きく変わり、サービスの提供形態を変える必要があったり、計画の方向性を変える必要性が出てくるかもしれません。

また計画を実行したあと、上手くいかないことや、想定と違うことも出てくるでしょう。そのようなときに早急に対応できるかどうかが、本計画遂行の肝になると考えられます。PDCAを早く回すサイクルを作れるかどうかが、那覇市のDX推進の結果を左右するでしょう。

このように、那覇市のDX推進計画には優れている点と改善すべき点が両方含まれています。今後6年でどのように実行され、結果が出るのかに注目です。

執筆者/
リビルダーズ編集部 橋爪 勝万

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