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栗田工業が日立と協創し取り組む「原料ヤード管理のDX」

情報発信元:https://www.kurita.co.jp/aboutus/press220927.html
(別サイト「株式会社トクヤマ プレスリリース」を別ウィンドゥを開きます。)

2022年9月27日、栗田工業株式会社は、株式会社日立製作所と、原料ヤード管理のDXをするためのソリューション開発を本格的に行うと発表しました。

【本ソリューションの概要】
原料ヤードとは船から荷揚げをした製鉄原料を積み上げて保管しておく場所のことを指します。原料が積み上げられた山ごとの水分を、ドローンに取り付けられた水分センサーによって測り、データの集めることで、広大なヤードに保管されている原料の水分状況を把握します。

原料ヤードにおける保管では、気象状況次第で、原料から水分が蒸発したり、逆に降雨により水分を含むことが多くあります。原料の水分状況と気象データを組み合わせたAI解析を行い、原料の水分の移り変わりを予測させることで、その後の工程への影響等を事前に把握できるため、リスクの管理が可能になります。リスク管理ができるようになると、製鉄の生産性、安全性の向上につながるほか、後工程での二酸化炭素の排出量を減らすことにもつながります。

ソリューション開発・2社協創の背景】
昨今、良質な製鉄の原料が不足しており、取り扱いの難易度が高い原料が増えています。現状そのような原料は外で保管を行うケースが多く、水分の含有量の増減によって、搬送や保管が難しくなる事象が起こっています。そのために、原料ヤードを正確に管理することが必要です。

これまで栗田工業は、製鉄の工程で発生する課題は水分の含有量に因るものが多いことを明らかにし、原料ヤード管理の最適化を検討してきました。一方で日立は独自のサービスをドローン事業で展開してきました。一例としてドローンの空撮による在庫管理のサービスを展開しています。両社の技術をもとに新しいソリューションを提供すべく協創をスタートさせました。

【今後の展望】
目的は、原料ヤード管理のDXです。原料ヤードを適切に管理することで、製鉄工程の生産性を上げ、安全性を担保することができるソリューションを生み出します。また、技術の強化を行い他業種への展開、グローバルな展開を見据えています。

【執筆者コメント】
今回は、栗田工業と日立製作所のソリューションをピックアップしました。原料ヤードの管理を最適化することで、製鉄工程をITの力で改善させる業務DXの事例になり得る取り組みです。製鉄業界の企業からは注目が集まるソリューションですが、本ソリューションの良さは、IT導入により課題解決を考えている企業のヒントになると考えます。

基本的にはヤードは屋外にあるため、原料は気象状況の影響を大きく受けていました。そのために遮水性のコーティング剤を用いる等の対策をしてきましたが、広大なヤードの中で原料の山ごとに水分含有量を頻繁に確認することが難しい状況でした。

また原料の在庫量はベテランの作業員が経験則で目視による確認をしていたことから、正確な在庫管理ができない状況でした。加えて在庫管理を行うためには、手入力で帳票に情報を入れる業務が発生しており、様々な場面で課題が生じていました。

今回のソリューションは、これらの課題を一気に解決することが出来るという意味で非常に優れているといえます。水分センサーで水分含有量の測定ができるのみならず、ドローンにより空撮を行うことで在庫状況をすぐにデータ化、可視化することができます。

また気象データを取り入れ推測することで、リスクを管理し対策案を講じる手助けができます。課題一つ一つに焦点を当てて解決していくのではなく、全体を丸ごとカバーできる方法を探した点が、非常に優れているポイントだと考えました。

昨今DXという言葉から、様々なソリューションが展開され始め、ニッチな課題にも対応できるものが増えています。もちろんそれらを組み合わせれば各課題は解決しますが、運用していく効率を考えたときには必ずしも最適解であるとは限りません。まずは今回取り上げたソリューションのように、課題全体をまとめて解決できる手段を探し、それが難しかったときにはじめて課題を切り分けることが、IT導入後を見据えた際に重要と言えるでしょう。

執筆者/
リビルダーズ編集部 橋爪 勝万

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