情報発信元:https://www.digitalservice.metro.tokyo.lg.jp/policy/dx_newpolicy.pdf
(別サイト「東京都デジタルサービス局公表資料「東京のDX推進強化に向けた新たな展開」」を別ウィンドゥを開きます。)
2022年9月9日、東京都デジタルサービス局は、「東京のDX推進強化に向けた新たな展開」という資料を公開しました。資料は大きく3部構成になっています。
(1)都政のデジタル化、DX推進の実績と課題
(2)海外の事例紹介
(3)今後のDX推進の方針
要旨は以下の通りです。
(1)都政のデジタル化、DX推進の実績と課題
東京都2019年度以降、行政手続きや事務のデジタル化を推進してきました。主要手続きのうち94%、すべての行政手続きの約26%をデジタル化しました。また都民が利用できる施設のキャッシュレス化の推進や、ペーパーレス、ファックスレスを推進してきました。
また東京都の各局がサービスのデジタル化の推進を行うプロジェクト「シン・トセイ」では、都の施設でデジタルを活用したコンテンツを展開したり、納税に関する申請の一部電子化、教育の現場へのモバイル端末導入等、都民の暮らし関わるDXを推進しています。防災の方面においても、デジタル技術を活用しいち早く自然環境の情報をキャッチする取り組みなどを始めています。
一方で東京全体のDXには5つの課題があるとしています。
・デジタル化に関する都民の満足度25%、デジタル化された手続の利用率25%以下と低い数値
・DXの担い手「デジタル人材」の不足
・都が提供するデジタルサービスをスピーディーに改善していくアジャイル開発を行うための環境整備
・業務の基盤システムの最適化
・区市町村のデジタル人材確保とノウハウの蓄積
(2)海外の事例紹介
デンマークやイギリス、シンガポールの事例をもとに、都政に活かす4つのポイントを挙げています。
・ユーザビリティが高水準であること
・自治体が提供するサービスが、国が管理するデータを基盤に提供される一気通貫のデジタルサービスであること
・専門人材の共同利用と民間企業との協働
・産官学連携のスタートアップ支援
(3)今後のDX推進の方針
都は今後のDX推進に向けて、4つの仕掛けと新プラットフォームの設立を掲げています。
・都庁内部と外部が連携して、都と市区町村一気通貫でのデジタル化、基盤システムの最適化などのイノベーションを起こすための仕掛けをつくる
・高度なデジタル人材を採用、外部の人材を活用する仕組みを作る
・都と市区町村が共同でシステムの導入をすることでコストを押さえ新たなサービス提供ができる枠組みを作る
・行政と民間が協働し課題解決ができる場を作る
上記の4つの仕掛けとともに、「GovTech東京」という新団体設立の構想があります。官民が協働できる新たなプラットフォームです。東京都とGovTechの2つの組織で東京都のDXをけん引していきます。都庁各局、市区町村のDXやデジタル基盤の強化、デジタル人材の確保、データ活用の促進、官民が連携した新サービス創出等、都のデジタルサービス局と連携し多方面で力を発揮することを期待した団体です。
【執筆者コメント】
今回は東京都が発表した、DX推進の方針をピックアップしました。現状の分析と課題の整理、今後の方針がまとめられたものですが、東京都のDX推進の実現にはまだまだ時間がかかると感じました。
注目すべきポイントは、都が課題としてあげていたアジャイル開発の環境整備です。都はスピード感を持ってサービスを開発するには、アジャイル開発が有効だとしています。現状のままだと都各局それぞれでデジタルサービスの開発をすることで、品質にばらつきができ、ユーザーに寄り添わないシステムになる可能性があります。また、現行制度では新しいソフトウェアを使う場合には、予算要求をして予算措置、入札、契約を行うことで使用可能になるため、年単位の時間がかかります。そこで東京全体でデジタルサービスの品質向上、供給スピードを改善することが必要だとしています。
日本の様々な企業と同じように、サービス提供のスピード感を出す、システム改善の継続をするためにはアジャイル開発が適しているということに都が目を向けていることは、前向きに捉えられることだと思います。
一方で、詳細部分まで要件定義や仕様文書化をせずに、開発とリリースを繰り返すアジャイル開発は、現行の法制度では実施することが難しいです。法律という壁をクリアする必要があるため、アジャイル開発によるサービスの提供をするまでの道のりは長いといえます。今後の法整備の動きに注目です。
またアジャイル開発にはデメリットもあり、小さなプロジェクトであれば改善を繰り返すことは容易ですが、大きなプロジェクトになると難易度が高くなります。東京都は民間との協働を掲げていますが、アジャイル開発によるサービス展開のノウハウ・実績がある企業と柔軟に協働することができるかどうかにも今後注目すべきでしょう。
執筆者/
リビルダーズ編集部 橋爪 勝万