情報発信元:https://www.nikkei.com/markets/kigyo/disclose/?kwd=KDDI&SelDateDiff=0
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7月2日に起きた回線障害で揺れるKDDIが、7月22日の適時開示にてコーポレートガバナンス(企業が不祥事を起こさないよう企業を監視する仕組みのこと)を更新した。
主な変更点については以下である。
追加された主な記載事項
「項目1.基本的な考え方」にて、冒頭で以下のお詫び文が追記された。
2022年7月2日より発生いたしました当社通信設備の障害に際し、長時間にわたり当社通信サービスをご利用のお客さまに、多大なご不便とご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。当社では、今回このような事象が発生したことを重く受け止めております。再発防止策の徹底を図り、サービスの安定的な運用に向けて全力をあげて取り組んでまいります。
引用元:「KDDIコーポレート・ガバナンスに関する報告書 2022/07/22」
「項目【補充原則2-4①】」にて、ダイバーシティ&インクルージョン(性別や国籍、さまざまな多様性を尊重し、それぞれの人材が活躍できる場を提供するという考え方のこと)の推進状況に関する記載が追記された。追記された文章が長文のため、ここでは「社内DX」に関する記載のみを紹介。
②社内DX
引用元:「KDDIコーポレート・ガバナンスに関する報告書 2022/07/22」
当社ではサステナビリティ経営としてパートナーとともに社会の持続的成長と企業価値の向上を目指しています。5Gによる通信事業の進化と、通信を核とした注力領域を拡大する「サテライトグロース戦略」を推進し、5Gを中核に、グループアセットを活用したDXを加速していきます。また、人財ファースト企業への変革として、全社員のDXスキル向上とプロ人財の育成を行います。DXを中心に事業戦略を推進するための組織力の最大化を図るべく、2020年度に社内人財育成機関であるKDDI DX Universityを設立しており、2024年度末までに全専門領域でプロフェッショナル人財比率の30%達成を目指すとともに、DX人財育成の基礎スキル習得として本体社員11,000人超の受講を推進していきます。
項目「【補充原則3-1③】」では、サステナビリティ(企業が自社の利益だけを追求するのではなく、環境保護活動や社会貢献にも目を向けた考え方や取り組みのこと)に関する取り組みと、人的資本や知的財産への投資に関する記載が追記された。一部を抜粋すると、サテライトグロース戦略(※)を引き続き精力的に進めていく記載が見受けられた。
(※)サテライトグロース戦略とは、KDDIが2022年度に掲げた中期経営戦略のことで、新たな通信規格である5Gを中心に、5つの事業分野を強化・拡大していくというもの。5つの事業の内訳は、DX、LX(ライフトランスメーションの略で、消費・体験行動に革新を起こす事業モデルと定義している)、金融、エネルギー、地域共創である。
2022年度より新たに始まった新中期経営戦略期間においては、特にサテライトグロース戦略の各領域について、これらをさらに強化していきます。
引用元:「KDDIコーポレート・ガバナンスに関する報告書 2022/07/22」
【執筆者コメント】
今回は、KDDIのコーポレートガバナンスに関して、筆者から見た大きな変化点を3つ紹介しました。KDDIの大きな方針としては今年発表したサテライトグロースを引き続き推進していくとしつつ、社内DXという項目を追記した点についてはDX事業に注力していくための最初の布石に見えました。
2020年にDX人材を育成するために社内大学「KDDI DX University」まで作ってしまったKDDIの力の入れっぷりには目を見張るものがあります。受講生の評価はどうなのか調べたところ、そのカリキュラムは非常によくできているようで、実践から学びを得ることに重点を置いているのが特徴です。
受講生の声からは、研修の内容が自身の業務に直結する形で活かせるという声が見受けられた。というのも、カリキュラムの実践訓練の中でブートキャンプというチームメイトと意見交換をしながら実際にDX事業を作るという体験が受講生のスキルアップとモチベーションアップに貢献しているということでした。
通信障害の件で出鼻を挫かれたKDDIではありますが、サテライトグロース戦略を調べれば調べるほど、その考え抜かれた骨太の戦略と行動力には驚かされるばかりです。
また、KDDIの競合であるNTTも独自のDX人材育成プロジェクト「AI工場」を推進しており、AIを主体としたデータ活用訓練と実践教育に力を入れています。通信業界のDXを牽引するのはKDDIとNTTの2社になっていきそうな雰囲気です。
執筆者/
リビルダーズ編集部