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[ おさらい ] DX推進の壁、AIについて調べてみた①

 
社長!AIの理解、バックリしてませんか?というお話です。

「自動化するためのモノだろ?」

おっしゃる通り、デジタル化の肝になってくるのはAI。集めたデータの処理・分析を人間がやっていてはあまりに非効率であることから、AIを組み込むことがデジタル化の重要ポイントです。

ですが、AIの導入で苦戦し、そこでDX推進が止まってしまうということもよく聞く話。この要因は「AIに対する経営者の理解不足」と言われています。そこで、AIを種類に分別してご紹介。本記事で、AI理解が整理されるはずです。
 

4つに分類するとわかりやすいAI

 
アプリやIoTセンサーによって、オンライン・オフライン両方のユーザーの現在の行動データが得られるようになった現在。それらデータを集め、ビジネスに活かしていこうというのがDXのコンセプトの一つですが、ビジネスに活かす際にAIが肝になってきます。

たとえば、お店の外にカメラを設置。そのカメラに映る通行人の数や、年齢性別などを見分けて各属性ごとに人数を割り出すことで、その内、お店に入ってくる人の割合などを理解することができ課題を明確化することができます。

ですがこの人数を割り出す作業を人間がつきっきりで数えているわけにはいきません。そこで必要になってくるのがAIです。AIが人の数をカウントできるようになれば、常時現在の通行人の数を割り出すシステムを創ることができます。

非常に有用なAI、ですが、一点課題があります。それは、要件定義ができないことです。AIに担当させたい仕事を教え込むことからスタートするのですが、機能するようになるまでどのくらい時間がかかるのか、精度をどのくらい高められるか予測できないため、コスト・期間を設定しづらく予算取りが難しいという難点があります。

イヌとネコを画像で見分けるAIを育てた後、ウサギの画像を1枚見せてしまうだけでそれまで進んでいた理解が消えてしまうという話も聞いたことがあります。人工知能と言われますが、AIは知能と呼ぶにはまだ遠い、不安定な技術でもあるのです。

こういった背景からAIは「どうなるかわからない前提」で導入検討する必要があり、だからこそ、経営者の理解が必須です。

AIのPoC検証で成果が得られず打ち切りになり、DX推進自体頓挫するといったこともよくあるそうです。こういった事態もまた、経営者の理解があれば乗り越えられた可能性があります。つまり、DXの成否を分けるのは「経営者のAI理解」であるということです。

たとえば「サブスク」。アドビのサブスクが成功モデルとして取り上げられましたが、あれはクリエイターにとってなくてはならないツールを提供していたそのAI理解を簡潔に補助してくれるのが

いまこそ知りたいDX戦略 発行:ディスカヴァー・トゥエンティワン 著者:石角友愛

で紹介されていた「世界のAI潮流マトリックス」です。
 

引用:いまこそ知りたいDX戦略 発行:ディスカヴァー・トゥエンティワン 著者:石角友愛

 
「パッケージ型AI」とは「製品化されているAI」です。
たとえば、問い合わせ対応チャットボット。ユーザーの問い合わせをAIが自動で回答してくれるパッケージ製品です。「こういう質問が来たらこの回答を出す」といったパターンを反復覚えさせることができ、どの企業でも導入しやすいことがポイントです。パッケージ型の欠点は、企業の競争優位性にはならない点。どの企業でも導入できるということは、特定の企業にしかできない機能にはならないということです。

「カスタムメイド型AI」は、パッケージ型AIの逆。企業ごとの課題・用途に合わせて創っていくAIです。競合優位性を創るのであれば、カスタム型AIが重要です。

「強化型AI」とは「人間ではできなかったこと・気づかなかったことができるAI」です。

「自動化型AI」とは「人間ができることを自動化・省人化することで効率化するAI」です。

カスタムメイド型のほうが難易度が高い分、競争優位性になりやすい。ですが、パッケージ型AIは失敗が少ない分、まずAI導入を成功させる実績作りに適していると言えます。

各マトリクスごとの事例を見ていきましょう。
 

①パッケージ型×強化型AI

 
シリコンバレー発の、医療AIソフトウェア・トライトンは「帝王切開の出血量を検出するAI」。パッケージソフトであり人の能力ではできなかったことを実現したAIです。

従来、帝王切開の出血量は医師が目視で測っていたのですが、羊水の出血と混ざってしまいただしい出血量が測れない状態でした。トライトンは、血液を吸ったスポンジをiPadにかざすと数秒で正確に出血量を測ることができます。

このAIソフトウェアはアプリをインストールすれば、どの病院でも使うことができます。かつ、目視よりも正確に出血量を測れることから強化型。人間の能力を強化してくれるAIです。

ちなみに医療領域では、パッケージ型×強化型AIの開発が次々と進んでおり、人工授精による妊娠確率を飛躍的に高めるAIアプリもアメリカで開発もはじまっているようです。
 

②パッケージ型×自動型AI

 
ユーザーの問い合わせに、AIが適切な回答を自動で返してくれるチャットボットが代表的な例です。

ちなみに、日本ではチャットボットを効率化・自動化目的で導入するケースが多いですが、アメリカではマーケティング・エンゲージメント工場目的で導入するケースが多いようです。

ルイ・ヴィトンのチャットボットは「優秀な店員」です。ユーザーが探している商品が載っている写真をアップすると「いまアップされた写真のトップスに似た商品をお探しですか?それともバッグに似た商品をお探しですか?」と写真を識別し、ユーザーに質問。バッグと答えると、写真に掲載されているバッグだけではなく、似たデザインのバッグを一覧表示して提案してくれます。

日本ではQ&Aなど「守りのIT」として使うことが多いですが、パッケージ型×自動型AIも使い方によって「攻めのIT」として有効活用できる余地は十分あります。
 

③カスタムメイド型×強化型AI

 
大手タレント事務所 ホリプロがAIコンサルティングのパロアルトインサイト社と共同開発した「タレント好感度分析AI」は、まさにカスタムで出来た人の能力を超えた成果を実現するAIです。

近年、アンケート調査は本音が見えてこないため有効性が問われています。かつ、タレントのファンの声は世間一般の感覚と大きくズレが生じるため、参考にしがたいものがあります。

そのタレントの好感度を最も正確に捉えることができるのがSNSですが、SNSの全投稿から該当する情報を見つけ集めるのは非常に工数がかかります。

このタレント好感度分析AIは、そのタレントについて語られている情報を集めるだけでなく、言葉のニュアンスからタレントに対する感情を分析し、瞬時にタレント好感度をスコア化することができます。

このAIが軌道に乗り精度が安定してくれば「パッケージ型×強化型AI」として、ほかタレント業界企業に展開していくことが可能になります。他社に先行して実験台になるというデメリットはありますがプラットフォーム化することで、その業界のプラットフォーマーを目指すこともできます。
 

④カスタムメイド型×自動型AI

 
京都に本社があるプリント基板やチップなどを製造するジョーナン社と、パロアルトインサイト社が共同開発した「目視検査AI」。

さまざまなクライアントからオリジナルオーダーを受けているため多品種にわたり、都度チェック項目が変わるため目視検査にかなりの人件費がかかっていることが経営課題でした。そこで、目視検査ですべての部品に共通する項目「傷と空泡」を検査するAIを育てることで、検査工数の大幅削減を目指しています。
 

AI開発にクイックウィンはなし

 
以上、AIを4つの分類に分けお話してきました。パッケージ型の方が「AIに何を学習させるか」が明確なため導入しやすいですが、結局どのAIパターンであっても個社ごとに課題が違っており、その課題は現場に入って実務をじっくり観察しないと見えてきません。

たとえば、OCR (手書きで印刷された文字を読み取って、コンピューターが利用できるデジタル文字コードに変換する技術) で、顧客からの発注書を読み取り、AI分析をかけるとします。

技術上・理論上は十分可能な事象ですが、蓋をあけてみると、顧客によって発注書のフォーマットがバラバラだったり、受注と発注という言葉が混在しているなど言葉の定義すらもバラバラだったり例外が多すぎて、AIに学習させることが困難だったりします。

こうした細かいイレギュラーな事象がたくさんあり、さらにコスト・工数が読めなくなりがちなのがAI開発です。実際、AIが正常に機能するようになるまでには数年かかり、その間のコストは投資だと思わなければ途中で断念せざるを得ない状況に陥ります。

経営者がこういったAI開発の背景も理解したうえで、導入する必要の有無を判断することがマスト。AIで補填できない部分は、潔く人の手を入れ補完していくといった判断も必要になります。
 

まとめ「AIをDX推進の障壁にしないために」

 
AIについて、4分類で整理してお話しました。

●AIは要件定義できない。経営者のAI理解がないと、途中で頓挫せざるを得なくなる。
●AIは大きく分けて4分類。パッケージ or カスタム × 自動 or 強化 の軸で分けられる。
●理論上はAI実装可能な作業でも、企業ごと現場ごとに細かいイレギュラー事象が存在し、それゆえさらにAI実装は困難を極める。

AIは、デジタル化のイチ手段であるにも関わらず、最先端技術だということで「AIを導入したらDX完了」と思われている傾向があります。そのため、AIが導入できなかったからということで、DX推進を断念してしまうケースが後を絶ちません。

実際、AIはまだまだ発展途上の技術です。「AIは何ができるのか」を一人一人がしっかり理解し、また、DX=AI必須という誤解をしないよう勉強することもまた、DXが求めるITリテラシーと言えます。

知り合いから聞いた話ですが、AIを搭載した自動運転車と、あらゆるケースを想定しプログラミングを組んだ自動運転車、精度が高かったのは後者だったという結果も出ているそうで、AIを絶対視するのはまだ早いと感じています。

本記事では追って、AIの有用性の真についても調査していく予定です。
 
 

参考:
『いまこそ知りたいDX戦略』 発行:ディスカヴァー・トゥエンティワン 著者:石角友愛

 

執筆者
リビルダーズ編集部

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