左からテレビ東京コミュニケーションズ三浦氏、望月氏、情報戦略テクノロジー(IST)KS氏、テレビ東京コミュニケーションズ岸氏。事業部門とシステム部門、そしてISTが三位一体となってオンデマンド事業を推進している。
今回インタビューにご協力いただきましたのは「ネットもテレ東」「テレ東BIZ」などを運営しているテレビ東京コミュニケーションズ様です。自社サービスを成長させるためのお取り組みや、当社、情報戦略テクノロジー(以下IST)の「システム内製支援」について、プロジェクトマネージャーであるISTのK.S氏を交えたインタビューをお届けいたします。プロダクトオーナーやシステム企画者の方で、より素早いサイクルでUXを改善したい、運用業務の効率化を行いたいと考えている方に、ビジネス改善のサイクルを高速で回すパートナーシップ型の協業スタイルについてご紹介いたします。
クライアントプロフィール
会社名:株式会社テレビ東京コミュニケーションズ
事業内容:クロスメディア事業、動画配信事業、WEB事業、オウンドメディア、データ放送関連事業、IPビジネス
ご協力:
アプリダウンロード数500万を突破したオンデマンドサービスの創り方とは?
Q.メディア事業開発本部データ・UXデザイン部のミッションをご紹介ください
(テレビ東京コミュニケーションズ 岸氏)データUXデザイン部では主に、AVOD(広告付き無料動画配信サービス)である「ネットもテレ東」と、SVOD(定額制動画配信サービス)である「テレ東BIZ」の二つのVODサービスに関わっています。
部の1つのユニットである開発チームでは、サービス開発の側面でユーザ視点に立った UI・UXをベースに、マネタイズしていくことがミッションですね。
「ネットもテレ東」は、直近1年半でスマホアプリ・TVアプリの合計ダウンロード数が300万から500万ダウンロード(2021年11月時点)まで伸び、「テレ東BIZ」は2021年4月に会員数10万人を突破しました。
また、システムソリューション部と連携してシステム開発や保守も担当しており、システムの側面でもサービスを支えています。
その他にも、部署の名前の通り、データの基盤開発・分析業務も担当しています。システム開発や保守の側面だけだとデータ整備や分析がおろそかになることはよくあると思います。これを同じ部で担当することで、データドリブンなUI・UX改善などを手がけております。結果データとシステムの両輪で事業を推進しています。
Q.メディア事業開発本部データ・UXデザイン部のビジョンをご紹介ください
(テレビ東京コミュニケーションズ 岸氏)まずユーザーフレンドリーなサービスを大事にしております。例えば、初めて使うユーザーでも迷うことなく利用できる「わかりやすさ」や、既存のユーザーが目的の動画にすぐ辿り着ける「便利さ」というような観点ですね。具体的な目標としては、1人あたりのアプリ起動回数・1人あたりの視聴動画数などを増やすことを目指しています。
ユーザーフレンドリーなUI・UXを追求し、結果としてマネタイズへつなげていきたいと思ってます。また第一に、今あるサービスを、安全に間違いなくユーザーに届けるというところも大事ですね。
ちなみに、AVODに関して言うと、テレビ東京が運営しているサービスだからこそできる、動画視聴以外の、ECサイトやイベントサイト、有料動画サービスへの送客なども今以上に強化していきたいと考えています。
Q.KS氏から見てこだわっていると感じる部分はありますか?
(IST K.S氏)視聴者やファンの人との距離が近いなとすごく感じています。先日もファンミーティングをされてましたよね。Twitterもフォローさせてもいただいているんですけど、双方向で、お客様の細かい意見を取り上げて行く気概を感じています。
また「ネットもテレ東」は本当に使いやすいなって、最初にサービスをつかってみて思いました。本当に数クリックするだけで、番組一覧がぱっと出てきて、離脱につながらずユーザーフレンドリーだなっていうのは最初にすごく思いましたね。
(テレビ東京コミュニケーションズ 三浦氏)ファンミーティングは、テレビ東京の大ファンな方が参加しているので、どういうことを望んでいるのかを聞く良い機会でした。なかなかSNSにはないリアルな意見を、あらためて時間と場所を共有してご意見をいただいています。
私も参加したのですが、例えば「もっとコンテンツを増やして、テレビ東京のカタログみたいな形にしてほしい」といった意見や、なかには「課金したい」というご意見もありましたね。
今年度はそういったファンとのつながりを推進する部署がテレビ東京で設立されたということもありますし、かなり重要視しているところですね。
データ・UXデザイン部としてもユーザーの利用データを使った分析でユーザーフレンドリーなサービス改善を進めています。例えば、「ネットもテレ東」アプリでは新規機能を提供する際、A/Bテストを実施したり、アンケートをユーザーにとったりしています。A/Bテストについては、ホーム画面デザインリニューアル、初回チュートリアルのデザイン、広告再生時の表示内容などでA/Bテストを実施いたしました。
サービスを日々成長させるために乗り越える必要があった体制構築と品質向上
Q.システムソリューション部の役割を教えてください。
(テレビ東京コミュニケーションズ 望月氏)役割の一つに各事業部門のIT支援があります。それぞれのプロジェクトで、システムベンダーと事業部門を繋いだり、進行を管理したり、実際にプログラミングやインフラ構築を行う要員もいます。
システムに対して多岐にわたる知見を持つ人間が集まっている部署になりますね。システムの知見は事業部側のみなさんが持っているわけではないので、優先順位をつけながらも私たちが各事業部を支援しています。
弊社では数多くのサービスを展開しているのですが、サービスと直結した視点でプロジェクトを推進できるという観点では、できるだけシステムは内製していきたいと考えています。
内製することで、各事業部門を横断的な視点で俯瞰して、ソリューションの選択ができると思いますし、また要件の検討、システム開発、保守など様々なフェーズに分かれている各サービスに対して、適切な工数配分で、柔軟な対応に当たれる点も、内製ならではの大きなメリットがあると考えています。
一方でシステムソリューション部の全員がフルスタックというわけでもなく、部員数も限られているため、実際には本人ができる範囲で関わりながら、システムベンダーも活用して、プロジェクトを進めるということが多いです。社内のリソースが限られているなか、全てのサービスを完全内製で創りあげてゆくというのはなかなか難しいですね。
Q.弊社にお声がけいただいた背景に、どのような課題をお抱えになっていましたか。
(テレビ東京コミュニケーションズ 望月氏)事業をデザインする人員は十分そろっているんですけど、ビジネス要件を基にシステム面を作り上げる人員が足りていない部分がありました。各事業部門としては、システムを活用していろいろやりたいという相談はあるんですけど、なかなか応えきれない状況がありました。そういった背景があってお声がけしたという流れです。
(テレビ東京コミュニケーションズ 三浦氏)社内のエンジニアが少ないので、たくさんのことをスピーディーにできないということがあります。社内のビジネス運用担当者からの要望が多いんですけど、運用担当者から要望がくる中で「これが改善できればもっと運用負荷が下がるのに」といった課題が、社内の少ないエンジニアの中では解決できない。またそのシステムを担当する特定の社員エンジニアへの属人化も課題でしたね。
(テレビ東京コミュニケーションズ 望月氏)またシステムの複雑さもあり、簡単にシステムベンダーに発注できない状況がありました。例えば動画コンテンツを管理しているCMS(コンテンツマネジメントシステム)は、弊社内の社内システムだけでなく、TVerなど外部システムを使ってのサービスを展開していることもあり非常に特殊です。
外部サービスとの接続が多いことで、改修の際などに影響範囲を考慮しなければならない点が多く、要件をまとめることや作業見積などをするにも、こうした複雑なシステム構成を理解した上で対応する必要性があります。
Q. KS氏からみたテレビ東京コミュニケーションズ様のシステム課題はどのように感じましたか?
(IST K.S氏)ダメだしするようで言いづらいです(笑)。端的にいうと、このシステムを使う人がストレスに感じる点が多い印象でしたね。例えば、画面のボタンの位置が揃っておらず視認が難しかったり、CSV出力でする際に無駄なDBアクセスがあって10秒、20秒で終えられる処理に1分以上かかっていたり、などがありました。
CSV出力するまでの時間も長いので、その時間手持ち無沙汰になるなど、業務の無駄が発生していたのではないかと思います。
またドキュメントも最低限のものがなかったり、情報が古いというところはありました。中長期でシステムを安定して運用していく点も課題だと感じましたね。
これらの積み重ねがあり全部取り払うのはなかなか大変だとは思いましたが、なるべく増やさないように、もしくは軽減できる点は改善する必要があるのかなっていうのは最初に思いましたね。先ほど三浦さんや望月さんが話されていたような課題がシステムにも現れていた印象です。
(テレビ東京コミュニケーションズ 三浦氏)UI/UXが整っていないところもありますね。「ネットもテレ東」で使用しているCMSが1年間で動画配信数が倍になるぐらいの規模になっているなかで、配信情報を出力するところがすごく重くなっていました。
また画面をクリックしたときの反応が2,3分かかるなど、改善できていなかったので運用面で担当者も我慢していたところはあります。システムソリューション部の担当も、工数的な問題以外に1人でセルフチェックしていく大変さを感じていたと思います。
(テレビ東京コミュニケーションズ 望月氏)このCMSについては、新規構築時にシステムベンダーに骨格を作ってもらったのですが、途中から全てを引き継ぐ形で別のシステムベンダーに発注した複雑な背景がありました。
その上で、構築後は特定の社員1人が保守を担当していましたので、CMSのナレッジは保守担当に属人化していましたね。必要な機能を実装するところは対応できていたのですが、ここはこれでいいやみたいなところがやっぱり残ってしまっています。
システムではなくビジネスを創るために必要な、柔軟性と専門性を兼ね備える「ゼロ次請け」とは?
Q.ISTのシステム内製支援サービスの印象を教えてください。
(テレビ東京コミュニケーションズ 望月氏)システムの複雑さや事業部門にシステムに詳しいメンバーが少ないことから、社内でもこういうものを作ります、という仕様をかちっと固めて提示するということができない状況がありました。
ISTさんのコンピテンシーである「ゼロ次請け」であれば、企画段階から事業部側に寄り添ってご支援いただけるため、弊社としても内製に近い形でプロジェクトを進められるのではないかと考えておりました。
当初は常駐型(ISTの専任型サービス)で参画をいただいておりましたが、現在ではアプリやインフラ双方の知見をもったチームとして支援を受けられるISTラボ(ISTの体制共有型サービス)で参画いただいています。
特に、ISTラボについて凄いなと感じたところは、幅広いテクニカルな知見を持ったチームをそのまま提供してもらっているようなイメージなので、エンジニア1人に属人化しない点や技術的な対応範囲が広いというところですね。例えば、同じ1人月の業務でも派遣契約は1人で対応することになりますがISTラボでは複数名で業務に対応いただけます。派遣契約などは、どうしても業務のナレッジがアサインされた特定の人に属人化しがちなので、その点が強みだと感じました。
(テレビ東京コミュニケーションズ 三浦氏)見積や提案での柔軟性が強みだなと感じます。いろいろ会社さんにお声掛けさせていただくものの、この柔軟性を強みにしている会社はあまり聞かないですね。
例えば、予算の上限に決まっているなかでその範囲でご提案くださいというように多少無理をいって相談しています。弊社がやりたいことを提案して、お見積をいただく流れが一般的ですが、弊社側で予算上限が決まっているなかで、その範囲で提案をしてもらい、限られた予算内で本当に重要な点だけを提案いただき、ご支援いただきました。予算を効果的に活用できており、御社にお願いしてよかったと感じています。
またきちんと業務内容を理解して改善、改修してもらっています。こちらで「こういうふうに開発してください」とお願いするだけではなくて、特にKSさんからは「もっとこういう風にした方が良いと思いますがいかがでしょうか?」とあるべき姿を提案してもらえるので、積極性もとても魅力的だと感じます。
Q. KS氏を中心にISTラボではどのようにプロジェクト支援を行っていますか?
(IST K.S氏)プロジェクトマネージャーとして私がいて、ISTラボ内のアプリやインフラの各メンバーにタスクをアサインしています。またISTラボ内のアプリやインフラのスペシャリストにアドバイザー的に入ってもらったり、実際の作業工数より関わる人数が多く、ISTラボとしてのナレッジを提供できる状態で支援できているのかなと感じております。
そうした体制をベースに、できるだけより良いシステムを作って、事業を推進していただきたいという意識で取り組んでいますね。また週次定例や日々のチャットでのやり取りで、こちらも正直に無理かもなということを「できない」といわず、かといって社内で無茶することもなく正直ベースで会話ができていると思います。お互い話せる状況になってきてるといったところが、ご評価いただいた柔軟性というところにも反映できてるのかなとも思います。
Q.プロジェクトマネージャーであるK.S氏に対しての印象はいかがでしょうか?
(テレビ東京コミュニケーションズ 三浦氏)安心感、確実性をもってPJ推進していただいており、本当に助かっています。運用者の視点に立ち、提示したものより使いやすいUIの実現をしていただきました。またスケジュールや実施タスクが明確で、弊社側で何を判断しなければならないかがわかりやすく、弊社側のマネジメントコストはほとんどかかっていない状態ですね。
そのためスケジュールが大きく遅れる、要件を実現することができない、ということも今までにはなかったです。
こうした安定感もあり、いまでは横断的に弊社複数PJを担当いただいております。また、その複数プロジェクトをお任せする中で他PJでのご経験を反映いただき、弊社の要望の実現、プロジェクト推進の安定感などとても洗練されてきている印象があります。
(テレビ東京コミュニケーションズ 望月氏)また、よい意味での「しっかりした堅さ」があると思います。この点がすごく安心できますね。他のベンダーさんだと先端技術に強くても、ドキュメンテーションが弱いというケースもしばしばあるのですが、ISTさんの場合は、ちゃんとテクニカルな面は担保しつつも保守性の観点で必要なドキュメント周りも整備してくれています。
Q. K.S氏個人として意識してることがもしあれば教えてください。
(IST K.S氏)システム開発の会社ではあるもののシステムを作ることだけが仕事だとは思っておらず、事業に貢献できているかが大事だと思っています。
動画コンテンツを視聴する前に配信される広告を管理するシステムの刷新プロジェクトがあったのですが、ピーク時に1分あたり数千ものリクエストがくるような高負荷のかかるシステムでした。
処理が遅くなると動画視聴者にストレスをかけ離脱にもつながってしまいますので、軽快に動くようにというところを特に意識しておりました。結果、ご要望いただいた性能要件の1/3で処理できるようになり、お客様のミッションであるユーザーフレンドリーなサービスづくりに貢献できたのではないかと感じます。
またシステムをキャッチアップをするときには、そのシステムがどういう機能をもっているかだけでなく、どういう目的で使うのかを理解することで、どう修正するべきかがわかります。こうした意識で行動した結果、皆さんからいただいた評価につながってるのであれば嬉しいなと思います。
「RFPづくりより、まず相談すること」が事業を加速させる
Q.どんな方にISTの内製支援を勧めたいと思いますか?
(テレビ東京コミュニケーションズ 望月氏)やっぱり、やりたいことがあるけどその詳細までは詰められていない方でしょうか。どういうシステムが必要かということを、RFPなど紙に落とすことが難しい、あるいは時間がかかる部分では、とりあえずISTさんへ相談したうえで、必要に応じてスピーディーに進めていく方が効率的かと思います。
(テレビ東京コミュニケーションズ 三浦氏)今回のCMSもそうだったんですけど、現行のシステムとして稼働しているものが、それ自体がベストプラクティスで構築されているのかとか、セキュリティは大丈夫かとかそういう不安を持ちながら運用されている方たくさんいらっしゃると思います。
そういったところの改善を御社の知見を入れて一緒に相談しながら作り上げていくというところが、そういった悩みを持っている方にはほんとにすごく良いかなと思います。
Q.ISTへの今後へのご期待を教えてください。
(テレビ東京コミュニケーションズ 三浦氏)今は社内システム中心ですが、今後は「ネットもテレ東」など実際にユーザさんに使ってもらうサービスについても、今まで通りユーザ視点でご提案いただけるとありがたいなと思います。
(テレビ東京コミュニケーションズ 望月氏)プロジェクトの場面ごとに必要なスキルセットは違いますが、案件の場面ごとに適した人をアサインして、最適な体制を維持してほしいなと思います。テクニカルを信頼できて、プロジェクトの進行やドキュメンテーションもきっちり手堅く進めてもらえる。ISTさんにはそうした良い意味での「堅さ」を継続してほしいですね。
また、私たちが持ってるサービスや業務のナレッジをどんどん吸収していただき、「ここはこういう目的の業務だからこういう形で要望を実現できるはず」、という感じでよりスピーディーに対応していただけるとよいかなと思います。
こうした対応を通じて、ISTさんに任せれば安心だよねとなり、次の案件にまた入って、みたいなサイクルが全社的に続けられる関係性になれたらと思います。
(IST K.S氏)ありがとうございます。継続的にISTラボとしてナレッジを溜め、アサインメンバーが変わったりしても、ロスがないように、体制を作り続けるというところは継続していきます。
また、私の考える「ゼロ次請け」は、より多くの価値を提供できる方法や機会を探し続けることだと思っています。決められたことを実行するだけではなく、価値に繋がるアイデアや行動を考え、実行していきますので、今後ともよろしくお願いします。
岸様、三浦様、望月様、ご協力ありがとうございました。
執筆者/
リビルダーズ編集部