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デジタル基盤の展開スタート!トップイノベーターを目指す中外製薬のデジタルプラント戦略

情報発信元:https://japan.zdnet.com/article/35195661/
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7日、中外製薬工業株式会社と日本IBM株式会社は、新しい生産オペレーションを支えるデジタル基盤を構築し、中外製薬グループの中外製薬工業株式会社の浮間工場で稼働開始したと発表しました。

こちらのデジタル基盤は、教育系・計画系・遠隔支援の3システムから構成され、既存の社内システムとの連携を行うことで、効率的な生産・要員計画、および進捗管理や現場のリモート支援に活用されるとのことです。

デジタル基盤の概要

■GMP教育と資格認定の連携
1.教育情報から各種作業資格を認定
2.教育の配信や資格失効を管理

■作業計画とアサインの自動化
1.生産計画から作業計画の立案
2.資格保持者アサイン
3.実績データの収集と進捗の可視化

■遠隔支援
1.スマホを活用した遠隔確認/支援
2.GMPレベルのDIに対応した画像データ取得

「人に着目したデジタル基盤」を構築したという中外製薬。そのなかで生産性・信頼性の向上と働き方改革を目指し、業務プロセスを変革しました。製造ラインを越えた組織横断的な働き方を可能とし、個々人の経験やスキルを向上させます。さらにリモート支援による場所を選ばない柔軟な働き方の提案も実現できます。

上席執行役員、デジタルトランスフォーメーションユニット長の志済氏も、「デジタルプラント実現を目指す中外製薬にとって、デジタル基盤構築はその第一段階であり、システム開発の域を越えた既存の業務プロセスのあり方の見直しが重要だった」と話しました。同社は、本デジタル基盤を2024年までに他2つの工場にも展開していくとし、さらなるデジタル基盤の高速化や追加施策にも取り組んでいくとのことです。

【執筆者コメント】
今回は、中外製薬のデジタルプラント実現に向けた施策を取り上げました。

中外製薬と日本IBMは、2020年より協働で生産機能のDXに向けた取り組みを行ってきたようです。2021年のニュースリリースでは、「浮間工場をDXモデルケースとして、2022年半ばまでを目処に新しいオペレーションを支えるデジタル基盤を構築する」と宣言しており、有言実行できていることがわかります。

また今回取り上げた記事のなかで、執行役員、生産技術本部長兼中外製薬工業株式会社社長の田熊氏は、デジタルプラントを、”生産機能のソフト面の業務をDXにより大きく変革するものである”と定義しています。このソフト面というのは、人の働きが関わっている要素のことを指し示すそうです。「人に着目したデジタル基盤」という言葉もあったように、中外製薬のデジタルプラント実現を目指した取り組みは、人の働きに関わる部分の変革を特に目指しているのだということが読み取れました。

ではなぜ“人”にこだわるのでしょうか。

記事内でご紹介した志済氏の別のインタビュー(2021年11月)を見て、少し気付いた点があります。インタビューで志済氏は、“デジタルIT基盤を順調に構築、運用できている上で、さらに基盤を強化するために、ハード面(基盤構築・運用など)だけでなく組織風土改革、人財育成をしっかり進めてきた。そのなかでやはり「人財」が大切なのだと分かった”と語っています。中外製薬は、基盤強化のため、社員によるアイデアを具体化する仕組みや、デジタル人財を体系的に育成する仕組みをつくり、取り組んでいます。そこでの試行錯誤や成功体験の積み重ねがあるからこそ、人にこだわったDX推進になっているのだと考えられます。
(参考記事)https://note.chugai-pharm.co.jp/n/n64a417d785a5

また今はどの業界もDX推進が行われるなかで、プラント分野がDX推進を必要とする背景も気になります。調べるなかで見えた背景の一つとしては、プラント(生産設備、工場)の多くは運転開始から半世紀あまりが経過しており、その現場を支えてきた熟練の技術者たちも引退を迎えているという状況がありました。そんな今、プラントの安全性確保、収益性向上の両立が課題となっているようです。だからこそプラント分野でも生産性向上と働き方改革に向けたDX推進は必要不可欠なのだなと理解できます。

そして、「デジタルプラント」は製薬業界に限らず、生産機能が事業を支えている多くの分野、業界で取り組まれている課題ではないかと想像できます。数年にわたって協業を重ねデジタルプラント実現に向け取り組みを推進する2社の実績は、業界の枠を超えて多くの企業を導いていくのではないでしょうか。

以下のサイトでは、『デジタルが拓くプラントの未来』という内容の記事が8回にわたって特集されています。2020年の記事ですが、事例も多く載っていますので、興味のある方はぜひご覧ください。
(参考サイト)https://journal.meti.go.jp/policy/202001/

執筆者/
リビルダーズ編集部 甲山 奏子

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