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#ワークマン女子が百貨店に初出店、デジタル時代にあえて実店舗を重視するワークマンの戦略

情報発信元:https://www.tokyu-dept.co.jp/corporate/press/whats_new/2022_0914_2.pdf
(※外部サイト「株式会社東急百貨店 プレスリリース」を別ウィンドウで開きます)

東京吉祥寺にある東急百貨店吉祥寺店が10月14日に一部フロアをリニューアルオープンすると、株式会社東急百貨店がプレスリリースを出した。本年5月より春・夏・秋と3段階に分けてリニューアルオープンを実施していた東急百貨店だが、10月14日のリニューアルを最終段階として実施する予定だ。

今回のプレスリリースで明らかになったのが、株式会社ワークマンが展開する女性向けアパレルショップ「#ワークマン女子(※)」だ。今回、同社にとっては初の百貨店進出となり、ここ数年で若年層の女性から支持を集めている#ワークマン女子を、若者で賑わうオシャレタウン吉祥寺の百貨店に出店することで、新たな女性層へリーチする狙いだ。

(※)#ワークマン女子とは・・・ホームセンター「カインズ」をかかえるベイシアグループの一員企業の株式会社ワークマンが、若年層の女性をターゲットに展開するプライベートアパレルブランド。従来の作業服・作業用品の専門店だったワークマンのイメージを一新し、同ブランドでは女性向けの機能性ウェアを主力とし、シューズや小物までを展開する。2018年からSNSを中心に若い女性からの支持を集め始めた。

現在#ワークマン女子は首都圏を中心に20店舗を展開しているが、東京銀座に出店した店舗が予想をはるかに上回る売り上げを記録したことから、店舗の維持コストが高い百貨店への出店に踏み切った。同社では2030年までに郊外への出店も視野に入れ、全国で400店舗まで増やすことを目指している。

さらにもう1つ注目すべき同社の動きとして、通販で購入した商品の自宅配送を全て廃止して店舗での受け取りのみにする予定で、2027年までに完了を見込んでいる。通販利用客の来店を促すことが狙いで、デジタル時代にあえて実店舗を重視するワークマンの戦略が注目を集めている。

【執筆者コメント】
デジタル時代における実店舗への重きを置く戦略は理にかなっていると思った。以前、当編集部でも取り上げたが、「オフラインに人はたくさんいる」からだ。
【参考】「オフラインから人はいなくなるのか?」

まず日本でビジネスを展開するという文脈においては、EC化率の実態を把握する必要があり、日本は7%弱と世界平均20%弱から見てとても低い水準である。これからすごい上がるのかというとそうでもなく、過去10年で2%→6%になった程度であり、今後の上昇も緩やかに推移すると思われる。

ともなればワークマンが実店舗に重きを置く戦略をとるのは至極自然ともとれる。これがもしお隣中国であれば話は変わって、EC化率は60%に迫ろうとしている状況である。そうなれば企業の戦略としてオンラインに重きを置く場合も出てくるだろう。

また日本においては手にとって商品を確認したいという層が多いと思っている。特に身につける服や靴ともなれば、自身の体型に合うか、試着した自分を鏡で見て購入したい気分になるかどうか等、オンラインでは得ることのできない情報こそが購買決定権を握っている。

次にワークマンが他社競合とどう差別化しているのかという点だが、注目すべきは#ワークマン女子は機能性を重視したブランディングがうまく市場にフィットした。同価格帯で競合となるのはユニクロになるが、ユニクロにアウトドア・スポーツウェアが備えているような機能性を重視して来店する人は少ないと思う。それよりかは高品質やデザインを求めている人の方が多い。

▼ユニクロ
・流行をおさえたデザイン
・高品質
・安い

▼ワークマン
・機能性
・流行をおさえたデザイン
・安い

ワークマンのブランディングの仕方にもやはり機能面をもってユーザーに寄り添うという見せ方が多く、それが世の第一子の子育て世代や、これから子供をもとうとしている世代に刺さった。同社の2022年3月期は11期連続で過去最高益となり、2022年4月と5月の既存店舗の売上も好調で、売上高は24.5%増、10.4%増と快進撃が続いている。

ワークマンコンセプトは「カコクな365日をステキに変える」。女性の忙しい日々には、雨の通勤通学や紫外線対策、子どもの抱っこで両手が塞がったり、水作業や庭の手入れなどがあり、これら多くのストレスから解放し、生活にゆとりを与えることをブランドのアイデンティティとしている。

ただ、今回百貨店に店舗を構えることで、新たに若年層の女性客を増やしたいというのがワークマンの狙いである。上記のコンセプトが受け入れられていくのかには今後も注目したい。

最後に触れておきたいのが、通販の商品を店舗受け取りに一本化するという施策についてだが、これはマーケティング手法のBOPIS 「Buy Online Pick-up In Store」というものだ。顧客のメリットしては送料がかからない、好きなタイミングで受け取れるなどがあげられ、店舗側としては店舗で受け取りたい顧客の取り込みや来店時に他の商品を見て買ってもらう機会が増え、さらに物流コストの削減にもなり、実は双方にとってメリットがある。日本のEC化率が1桁台であることを考慮すれば、この手法をとる上でデメリットはあまりでなさそうである。

唯一ワークマンが課題としている点をあげるとすると、それは既存顧客である現場系の層から聞こえてくる不満である。本記事を書く時に調査したところ、現場系をターゲットとしていた既存店舗に「ワークマンプラス」というアウトドア・スポーツウェア専門のプライベートブランドを併設したことで不満が出始めたという。ワークマンプラスは同社が最初に展開を始めたプライベートブランドである。

現場系の顧客からすると、急に必要になった作業服や作業用品をサッと買いたいというニーズが多いが、その際に家族で来店している顧客の車が駐車場を圧迫するなどして、現場系の顧客からは「入り辛い」という声が出た。同社ではこういった声に対応していくために、既存店舗との住み分けを意識した展開を始めており、#ワークマン女子を既存店から切り離した業態にしているのもそのためである。既存の現場系顧客が離れないようにしつつ、新たな女性客を取り込めるのか、引き続き注目していく。

執筆者/
リビルダーズ編集部 木城 秀人

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