2030年には約45万人のIT人材が不足すると指摘され、年々即戦力となる優秀なエンジニアの採用が難しくなってきています。また、優秀エンジニアは引く手あまた。すぐに転職してしまうということもあり、若手を優秀エンジニアに育てていく方向にシフトせざるを得ない状況になっています。今回は、実際に若手エンジニアを育成することで成果向上に成功しているエンジニアに、その育成サイクルの作り方についてお話を伺いました。
A.T氏プロフィール:IT系専門学校を卒業後、東証一部上場のシステム開発企業で5年勤務。2016年に株式会社情報戦略テクノロジーに入社。お客様社員のエンジニア育成も任されるほど高い評価を受けている。
【A.T氏】OJTの徹底・外部プログラミング講座で若手は育たない
ー A.T氏のこれまでと、現在のプロジェクトについて教えて下さい。
IT系の専門学校を卒業後は新卒で東証一部に上場しているシステム開発企業で様々な現場を経験しました。しかし前の会社では大きな機械の小さな歯車のような役割の仕事でしたので、大してやりがいは感じていませんでした。
そのうちにどうしてもお客様にとってより良いものを生み出すための主体的な仕事がしたいと思い2016年に情報戦略テクノロジーへ入社しました。情報戦略テクノロジーは二次請け、三次請けのような仕事のやり方でなく、単にシステムを開発をするだけでなく直接お客様の課題をお聞きし、解決に向けた動きを自分から主体的に働きかけて、開発の成功に向けて仕事に取り組めている会社だったので、理想的環境だと感じ入社しました。
現在の現場では某金融系企業様にて新サービスの実証実験(PoC)案件や、並行してWEBサービス企業様でECサイトの開発を担当しています。
ー では早速本題に入りたいのですが、若手エンジニアの受け入れ・育成について、どのような考えをお持ちか教えて下さい。
まず、若手のエンジニアに最初からスキル面で多くは期待してはいません。それよりも若い人ならではのフットワークの軽さを生かして欲しいと思っています。つまり、新しいことにチャレンジしたり、適宜自ら情報を取りに行ったり、質問をしに行ったりすることができるようなフットワークの軽さです。そこを重要視していますし、期待しています。
若手のエンジニアだと現場での経験がなくすごく緊張していると思うので、なるべく声をかけて雑談とかも交えながら心理的ハードルを下げて質問しやすい関係や環境を作ることは強く意識しています。それが先程述べたフットワークの軽さに繋がってきます。コミュニケーションを積極的に取りに行く事が出来れば、自ら情報を取りに行きお客様の課題を把握して提案するということが出来ると思っています。
ー 育成面で成果を出し続けられるからこそ、お客様は若手エンジニアを受け入れられるチームになっていくのだと思うのですが、どのような育成を行っていたのでしょうか?
外部プログラミング講座などに頼らず、ひたすら細かくOJTを繰り返します。外部プログラミング講座などは、意外に実践的な内容ではなくて応用が利かなくて使えないということが多いと感じることがあります。そのため私の場合はそういったサービスで勉強させることはせず、現場で既存の資産や技術の理解や実践的な考え方をきめ細かく、実践に即して教えるようにしています。実際、システムはプログラム単体だけでなく、ミドルウェアの組み合わせやインフラアーキテクチャの上で成り立っており、さらにユーザからどのように見えるかといったUXも意識する必要があったりなど複合的に物事を考えていかなければならず、外部勉強会でまかない切れるものではありません。それらをコードレビューや普段の会話から間接的にアドバイスするようにしています。
あとは、現場の状況にあわせて1年後に目指すあるべき状態や育成内容を記載した計画書をお客様に提出をして、育成の工程が目に見える形にすることでお客様からも安心して任せて頂けていると思います。
【若手N.M氏】エンジニア未経験からお客様の期待以上に成長できた4年間
ー 先輩エンジニアであるA.T氏に育成いただき、どうでしたか?
入社したての頃はそもそも先輩社員のA.Tさんの言っていることがわからない時もあったのですが、熱意あるA.Tさんはそれでも根気強く私の成長のために様々なことを教えてくださいました。入社4年目の今になって感じることは、自分で学んだことを社内やお客様の現場に向けて積極的に発信し共感してもらうことで、エンジニアってやっぱり面白い!と思うことができるようになったことです。あの時の経験が役に立ったなと思うので、今私がメンターをしているエンジニアにも自ら積極的に発信することをやってもらっています。
あと、先輩のA.Tさんに教えてもらった「お客様にとってより良いものを生み出すためにどうするべきか?」という考え方を次は私が下の世代に伝えていかないといけないなと思っています。というのも「教えることは教わること」だと最近つくづく感じるからです。後輩社員に教えることで気持ちが新たになるだけでなく、後輩からの質問に答える自分が、日々の成長を実感できるからです。
【A.T氏】徹底OJT+社内勉強会開催で、優秀なエンジニアを育成し続けるサイクルをつくる
ー A.T氏がお客様のエンジニアへの勉強会やナレッジ共有を行っていると伺ったのですが、その取り組みを始めたきっかけと、どのくらいの頻度で行っているのでしょうか?また、なぜその取り組みを行うのかを教えて下さい。
お客様の所で勉強会を始めたきっかけは、自社で行っていた勉強会の話をした時、お客様から「是非、うちでも社員向けにやってほしい」という要望があったことです。頻度としてはお客様の部署内で1か月に1回勉強会を実施していたのですが今は2週間に1回のペースで行っています。
自分一人だけ勉強して凄くなったとしても会社のためにはなりません。自分が学んできたことを共有したほうが、みんなのスキルアップ・会社全体のスキルアップにつながり、そしてお客様の利益につながります。勉強会にはそのような意味意義があると考えています。
実際にどのような勉強会を行ったのかというと、スマホアプリの勉強会をモブプログラミング手法で定期的に開催しています。その際にアプリエンジニアでない人も積極的に参加されていて前向きでとても良い雰囲気の中でのイベントになっていると感じました。
ー 徹底したOJTと社内勉強会について、お客様からどんな評価をいただけましたか?
新人のN.Mさんの育成が終わった際に「N.Mさんのような優秀な方が入って頂けるのなら是非受入れたい、今年も優秀な若手の提案は可能か?」と仰っていただけました。それが一番のお褒めの言葉かなと思いました。N.Mさん自身が現場でも勉強会を実施するなどお客様側も巻き込んでみんなで技術を勉強していこうという空気感も広げてくれた、そういう定性面なども評価いただけたと感じています。
OJTの徹底と社内勉強会というサイクルなら、お客様側で若手のエンジニアを採用した際にもエンジニアの育成ができます。それによって、当初は低コストで受け入れた未経験者が育成によって優秀なエンジニアになり高いパフォーマンスを発揮することができるようになります。
ー こうした育成サイクルを作っていくにあたり、A.T氏が重要視していることはなんですか?
外部の勉強会に頼らないとお話しましたが、私自身はかなり貪欲に外部勉強会にも参加しますし、自主的な勉強に力を入れてます。そこで得た知見を、若手に対して実践を通じ細かく噛み砕いて、有効な部分だけを教えていくという感じです。育成サイクルの中心にいる人は、勉強に対する貪欲な姿勢が求められるのではないでしょうか。
私自身は元々技術を学ぶこと自体好きで、中学生の頃からエンジニアを目指していたのですが、その頃から周りの人に役に立つものを開発したいという気持ちが強くありました。それを実現するためには、中途半端な技術力では役に立たない、常に最新の技術を自分が一番深く身に着けておきたいと思っていたのが原動力です。そのため、常に準備をしておくということを意識していて情報収集や技術についての勉強に目が向いていました。
実際にお客様から、こういうものが作りたいとお話頂いた時に自分にその技術力がないと、自分の夢が実現できなくなるだけでなく、成長できる大事なチャンスを逃してしまいます。それは自分にとっても、会社にとっても案件を一つ失ってしまうことにもつながるので、常にお客様の求めるものを実現できるエンジニアでいたいと思っています。
実際、過去に、自分の担当の案件にも関わらず海外の技術力の高いグループに仕事が流れてしまったということがありました。その時、物凄く悔しかったですね。自分の技術力の無さを痛感させられました。それから、全世界中のどこからエンジニアが来ても負けないように常に準備をする、という意識になりました。それが技術力を高めるための行動に繋がっていると思います。
執筆者
リビルダーズ編集部