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「データ」ってなんだか分からなかったので調べてみた①

 
DXはデータドリブン、とよく言われます。

ですが「データってなに?」と思われていた方、少なくないのではないでしょうか。知り合いのコンサルから聞いた話ですが、すでにデータを持っている認識でいる顧客が多く、みてみると大半は使えないデータなんだそうです。

「データってなに?」が不明瞭では、DXで何をすべきかも分からず推進はむずかしいでしょう。データとは何か、もろもろ調べてみました。
 

大体の企業は「データ0」からのスタート

 
冒頭のお話。

コンサルが話していた、すでにデータを持っている認識でいる顧客がデータと呼んでいたものは、その大半が販売・売上・会計などのいわゆる基幹システムが扱っているデータでした。

これらデータも重要なのですが、単体では使えません。これらデータを有効活用するためには「外のリアルタイムデータ」とかけ合わせることが必要です。

つまり、DXでいう「データ」とはこの、外のリアルタイムデータのことを指しています。

例えば、既存の売上データと、過去の天候データをかけ合わせます。すると、天候と売上の相関関係がわかります。ここに加えて、天候状況をリアルタイムで取得できるIoT屋外カメラを設置することで、売上予測がリアルタイムでわかるようになります。

①外のデータと過去データとの相関関係を分析する
②外のリアルタイムデータを集め、相関関係を基にAI・RPAで分析処理
③リアルタイムで予測値が出てくる

自動化を目的とする場合AIは必須になってきますが、これまでお話してきた通り「DX=AI」ということではありません。要点は、これまで取得してなかった外のリアルタイムデータを集めて相関関係を理解しながらビジネスを進めるということで、データの分析処理を人が担うことも可能になるということです。
 

外のリアルタイムデータを取得する手段の整理

 
DXとはつまり、IoTカメラなど年々増えていく「外のリアルタイムデータを取得できる手段」を利用することができる企業体に転換していくことを指しているとも言えます。

下記のようにDXレポート『対話に向けたポイント集 第二章』でも、技術が進歩することでデータ取得手段が増えていくことを示唆しています。
 

引用:経済産業省『対話に向けたポイント集 第二章』

 
リアルタイムデータを取得できる手段は大きく2種類あります。
 

①リアルを定点観測し、データ化する手段

いわゆる「IoTデバイス」と呼ばれるもので、さまざまなセンサーを設置することによってデータを常時取得する仕組みです。スマートフォンなど流通している機器の中にすでに組み込まれているセンサーもあります。

・カメラ
カメラで取得できるのはあくまで画像データですが、その画像をAI分析することで、さまざまなデータに転換することが可能になります。
店内にカメラを仕込むことで「各棚前での、立往生している時間」、店外に仕込めば「通行人の数」などをデータとして取得できるようになります。温度計を読み取ることで温度をリアルタイムデータ化したり、製造過程を読み取ることで生産数を出したりなどなど、用途はいろいろ考えられます。
ドローンにカメラを搭載することで、例えば橋の裏の鉄骨の劣化状況など、人の目で把握しづらい部分をデータとして把握することもできるようになります。

・GPS、ビーコン
対象の動きをデータとして取得する時に使うセンサーです。
GPSは、人工衛星から発信される信号をもとに現在いる場所を算出するセンサー。スマホ・カーナビ・ドライブレコーダーに使われています。位置だけでなく加速度なども取得できるため「安全運転を行うドライバーは保険料を低くする自動車保険サービス」を作ることなども出来ます。
ビーコンは、電波の発信器と受信器を使い、受信器を持つ対象の位置や動きを把握できるセンサー。お店の前を通る人のスマホに、お店の情報を送信するなどに利用できます。

・RFID (Radio Frequency Identification)
ICタグを埋め込むことで、情報を読み取ることができるセンサーです。
ユニクロで、かごを所定の位置に置くと中に入っている商品を自動で読み取れるのは、服に添付しているICタグを読み取っているためです。書店で、本にICタグを貼ることで、本がどこに存在するのか正確に把握することも可能になったりなど、使い方次第です。

・その他センサー
環境の状況を数値化する「湿度センサー」や、スマートウォッチに代表される「心拍数センサー」など、これまでリアルタイムでの取得が難しかったデータが取れるようになっています。
ここで挙げたセンサーはごく一部。あたらしいセンサーが日々開発されており、取得できるデータが増えれば増えるほど、DXで出来ることも増えていきます。
 

②オンライン上の行動をデータ化する手段

アプリケーションやオウンドメディアなどのコンテンツによって、オンライン上のユーザー行動データが手に入ります。

中国の平安保険社が運営する「平安グッドドクターアプリ」は国内の開業医の情報がデータベース化されており、かつ、オンラインで無料診断を受けることができ、各ユーザーが「どの開業医を利用し、どんな悩みを話していたのか」がデータでわかる仕組みになっています。

日本では、アプリやオウンドメディアを「集客の手段」として考えている傾向がありますが、DXが進んでいる海外企業にとって、ウェブコンテンツとはユーザーの行動データを取得するための手段。(十分な行動データ量を取得するために、PV・ユーザー数を増やす)  オンライン上にIoTデバイスを設置しているのと同義です。
 

リアルタイムデータの取得で大きく飛躍した「ゑびや」

DXの事例としてたびたび登場する老舗食堂ゑびや堂も、外部リアルデータを取得することで大きな飛躍を遂げることに成功しています。

まず、店舗の外にカメラを設置。カメラで撮影した映像をPCに送信し、AIが通行人の人数や、顔から性別や年齢層などの属性データを分析・抽出します。さらに、POSで金額や商品名など販売に関するデータも抽出。これにより、通行人の数と売上を分析し、相関関係を割り出します。

ここに天候や季節、イベントなどの変数を入れることで95.7%という来店客数予測精度の実現に成功。

「明日は天候もよくお祭りもあるため、5000名程度の通行人数の発生が予測される。入店率は2%なので約100名が入店。商品Aの販売量は最低〇個見込めるため、逆算で次回仕入れは〇個が望ましい」

といった形で仕入れの無駄を大幅カットすることができるようになるなど、この方法でゑびやは売上を約5倍に伸ばすことに成功しています。ゑびやはさらに、店内にカメラを設置することで入店者の導線と購買の因果関係などさらに細かいデータ取得にも手掛けています。
 

LPと同じだと考えるとわかる、リアルタイムデータの有用性

ゑびやがこれまで把握していたのは「日々の来店客数と売上」だけでした。来店客数の予測は長年の勘に頼る、という流れです。そこに外部データを入れることで、なぜそこまで改善するのか。LPと同じと考えると理解しやすくなります。

LPとは Landing Page の略で、ユーザーが最初に到達するウェブページのことです。楽天でみることができる長い商品紹介ページなどが代表例ですね。

LPも、通常把握できるのはCV数 (コンバージョン数。注文数や応募数など、ユーザーが申し込みを完了させた数字。) です。CV数だけで何を改善すべきかを見極めるのは非常に困難で「この情報がダメだったのでは」と主観で改善活動を続けていくしか手がなくなります。

ですが、外部解析ツールを使うことで、見えていなかった数字データが見えるようになってきます。たとえば「LPに飛ぶ広告や検索情報が何人に表示されたのか」「表示された数から、何人がクリックしLPに飛んだのか」「LPを見に来た人の何人がCV数につながったのか」「LPのどの部分まで読まれているのか」などです。

これらが分かると「広告・検索情報の条件を直すべきなのか、クリエイティブを直すべきなのか」「中のコンテンツのどこを手直しすべきなのか」「CV周りのクリエイティブを直すべきなのか」が急に明確にわかるようになります。こうしたデータを基に適切な改善を施すことで効果が数倍、数十倍に改善されるケースは珍しくありません。

ゑびやもこれまで見えていなかったデータを、カメラ×AIという解析ツールを使うことで見える化し、改善すべき箇所を明確にしたという点、LPと同じロジックです。つまり見えないデータを見ることで、これまで見えていなかった改善点が次々と見つかったということです。ゑびやがどうだったのかは分かりませんが「味はいいのに看板が目立たなくて人が入ってこないことに気づいていないお店」などはよくある例です。

長年常識とされ口伝で受け継がれてきたノウハウが、実はまったく見当違いだったということがDXによって見えてきたりもしています。福岡のスマートマーケット (デジタル最適化されたスーパーマーケット) トライアルの、店内に設置したカメラによる購買行動分析よって「ゴールデンゾーンに新製品は置かない方がいい」ということが分かっています。

ゴールデンゾーンとは棚の両端、お客さんの目につきやすい場所のことですが、これまでそのゾーンは新商品が盛られることが常識でした。ですが、購買行動分析によって新商品を買う人は通常通り棚に置いていても探して買うことが判明。ゴールデンゾーンはむしろ定番の人気商品で固め、購買欲求を高めたほうが新商品購入数も増えることがわかりました。

つまり、外のリアルデータを取得することの効果は「これまで現場の勘や常識にとらわれて見えていなかった無駄をつぶすことで、本来得られるはずだった成果を取り戻すこと」にあるのかもしれません。
 

まとめ「データを取り込むことで悪しき属人性の排除を進める」

 
データとはなにか、についてお話してきました。

●DXにおける「データ」とは、販売・売上データなどではなく、カメラなどを設置することで外部のリアルをデータ化したモノのことを指す。
●技術の進化で、取れるデータがどんどん増えている。
●これまで見えていなかったデータを取ることで見えていなかった無駄が見えてきて、改善ポイントが明確に見えてくるようになる。

「属人性の排除」もまたDXの主題のひとつですが、すべての属人性を排除すればいいかというとそうではないと思います。ですが、長く経験を積んでいる人の鶴の一声によって見えなくなっている・疑うことすら許されないような事象は数々存在し、それが成果を狂わせている要因になっているということは多々ある。

現状のやり方というものは、これまでの時代において正しいとされてきたやり方です。人類の普遍的な最適解では決してなく、それがゆえに、需要と供給のバランスが崩れた廃棄ロス問題などが起きているわけです。データでビジネスの無駄を見極め、出来る限り削減していくDXは無視できない流れです。

次回も、データとはなにかについてお話していきます。
  

参考:
『図解まるわかり DXのしくみ』 発行:翔泳社 著者:西村泰洋
『DX CX SX 挑戦するすべての企業に爆発的な成長をもたらす経営の思考法』 発行:クロスメディア・パブリッシング 著者:八子知礼

 

執筆者
リビルダーズ編集部

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