結局、DXの目的ってなに?
DXは推進しているけど、結局DXってなんのためにやるのかわからない。経営者ですらよくわかっていない。結果、途中で止まってしまうことが多く、DX成功率は16%とすら言われています。
本記事ではDX関連本50冊以上・DX関連情報を無数に集めてきたREBUILDERSが、DXの目的とはなんなのか、解釈のズレが生じないようわかりやすい言葉でズバリ解説いたします。
【 読了時間5分程度を想定 】
DXの目的とは
結論、DXの目的は「デジタルビジネスをどんどん作れる企業になること」です。
ポイントは「画期的なデジタルビジネスをいますぐ作ること」ではない点。
時代・市場の変化に合ったデジタルビジネスを即座に作れる企業に変化することです。
デジタルビジネスとはなにか
デジタルを使ったビジネスのことです。
・Twiterのようなアプリを作って利用者データを獲得すること
・楽天のようなWEBショッピングサービスを作り市場を創造すること
・YouTubeやTikTokの動画コンテンツを作り集客すること
・サイトを作り、ウェビナーで集客すること
などなど、現在、デジタルでできるビジネス手法は無数にあります。
出店する・商品を作るといったリアルビジネスと比べ、デジタルビジネスははるかに短時間でリリースすることができます。
かつ、常に改善し続けられるため、変化に対応できる力が違います。
これまでの企業はまだ、デジタルビジネスを「どんどん」作れない
これまでの企業は、社内にデジタルで何かを作ることに長けている人があまりいません。
そのため、デジタルで何かを作るとなると外注。コンペ・見積・稟議などが必要になり、時間がかかります。
デジタルビジネスを「どんどん」作れる状態というのは、
・アプリを一か月~半年で開発し、リリースする状態
・サイト、ウェビナーを半月~一か月で開発し、リリースする状態
・動画コンテンツを数日~一週間で作成し、リリースする状態
などを指し、社内で作ることが前提になります。
これから産まれてくる企業は、デジタルで何かを作ることに長けています。
DXの目的は、これから産まれてくるデジタルネイティブの企業に負けないよう、デジタルビジネスをどんどん作れる企業になっておくこと、とも言えます。
誤解されているDXの目的
経済産業省のDXの定義には「競争上の優位性を確立すること」とあります。
この部分だけを抜き出し「画期的なデジタルビジネスを創ること」と曲解している情報がネット上で散見されますが、それは誤解です。
■経済産業省のDX定義■
引用:経済産業省, DXレポート〜ITシステム「2025 年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜, 2018.9.7
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
いろいろ詰め込まれており誤解が生じやすい定義ですが、重要なのは「激しい変化に対応できる企業になること」です。
市場が刻一刻と変化する時代になりました。いまのニーズだけを捉え、画期的なデジタルビジネスを作ったとしても10年もつかどうかわかりません。
そうではなく、市場の変化に合わせてデジタルビジネスを都度作り続けていける企業こそが、変化に対応できる企業です。
「まず、デジタルで何をすべきか決めましょう」といった情報が出回っていますが、それも誤りです。
正しくは「まず、デジタルビジネスをどんどん作れる企業になりましょう」が、DXの目的の解釈として適切です。
DXの目的と言われているが違うこと
以下もよく「DXの目的」と言われますが、実情は「手段」「結果」です。
❶文化・風土の変革 [これは結果]
デジタルビジネスをどんどん創っていく企業になる、ということは、企業の文化・風土も変わるということです。
「デジタルビジネスをどんどん創っていく企業」とは、
・創ったものが100点じゃなくても、どんどん市場に出していくという考え方
・デジタルビジネスを創れる人たちを自社雇用しマネジメントする力
・デジタルビジネスを創れる人たちも含め適切に評価する制度設計
などが必要になり、おのずと文化・風土がガラッと変わってきます。これは、リアルビジネスに携わっていた社内メンバーのリストラ、再教育が必要となる大きな変革です。
ですが「DXとは、デジタルビジネスをどんどん創っていく企業になること」という目的を理解していないのに、文化・風土を大きく変革することはできません。
文化・風土の変革は、DX推進の結果です。
❷職種別のデジタル化 [これは手段]
デジタルビジネスをどんどん創っていく企業になる、ということは、全部門がデジタルで仕事することに慣れている必要があります。
>営業・マーケティング部門のデジタル化
例) WebサイトやSNSにチャットボットを導入するなど
顧客対応の効率化を図ったり、チャネルを増やしたりすることで、成果・効率アップします。
>開発部門のデジタル化
例) 顧客データをAIで自動分析できるようにするなど
営業・マーケティング部門から集まってくる大量の顧客データを自動で分析できるようにすることで、効率アップや的確な改善ポイントが見つけられるようになります。
これらをDXと呼ぶ情報が蔓延していますが、これらはDXの手段。デジタル化です。
[DXとは]
デジタルビジネスをどんどん創っていく企業になること
[デジタル化とは]
デジタルを使い業務の効率化を図ること
デジタルビジネスをどんどん創っていく企業なのに、業務はアナログで回していては本末転倒。「どんどん創っていく企業」にはなりえません。
❸基幹システムの刷新 [これは手段]
基幹システムとは企業の経営情報を扱うシステムで、具体的には、人事や経理部門が使っているシステムのことです。
基幹システムは古い技術で作られており、DXの足かせになっていると言われています。
たとえば、デジタルビジネスを創っても、基幹システムと接続できないため、デジタルビジネスで収集したデータと経理データを突合させることができず管理できない、などです。(VHSビデオプレーヤーにPCを接続させるのはむずかしいようなイメージ)
つまり、基幹システムの刷新も、DXの目的ではなく手段です。
基幹システムを刷新し、どんどん創るデジタルビジネスと自由に接続できるようにしなければ、DXは実現されません。
基幹システムは2025年以降、修理が困難になり、維持費が高騰化すると言われています。
この問題は「2025年の崖」と呼ばれ社会問題化していますが、基幹システムを刷新しただけではDXは成り立ちません。
■ここまでをまとめると■
DXの目的は「デジタルビジネスをどんどん創っていく企業になること」
そのための手段として ❷職種別のデジタル化 ❸基幹システムの刷新 があり、
DXの結果として ❶文化・風土の変革 があるということです。
なぜDXが必要なのか
なぜ「デジタルビジネスをどんどん作れる企業になる」必要があるのか。
大きな理由は2点です。
①人々がデジタルに移行しているから
現在、人々は多くの時間をデジタルの中で過ごしています。
電車に乗ると、かなりの人がスマホを見ています。デジタルの中で情報を得て、ヒマをつぶし、買い物をするようになっています。
つまり、デジタルの中でビジネスが展開できない企業は不利。若い世代になればなるほどデジタルで時間を過ごしており、年々デジタルが占有する時間が増えています。
②本当にどんどん変化する時代になったから
20年前、これからはFacebookだと言われていました。
現在、Facebookはオワコン。オジサンたちのツール。これからはTwitter・Instagram・YouTubeだと言われている中、現在はTikTokが台頭しはじめ、旧SNSはもうオワコンと言われ始めました。
つまり、社内にYouTuberがいたとしてもあっという間に不要になってしまい、今度はTikTokerが必要になってしまうということです。
新しいツールが出てくると、古いツールのプレイヤーの価値が下がる。また新しいツールに合わせて法律も変わっていきます。
どんどん新しいツールが生まれる時代。
1つのデジタルビジネスの寿命は数年という時代に突入している中、デジタルビジネスをどんどん創れない企業が10年以上生き永らえるのは難しいでしょう。
>さらに詳しくはこちらの記事
「TikTok の台頭から分かる、時代の変化速度。」
DXとは、結局どこまでやっておくべきことなのか
DXは「デジタルビジネスをどんどん創れる企業になる」こと。
「変化が激しい時代に、市場の変化に適合したデジタルビジネスをどんどん創れる企業に変革しておく」ことです。
「いますぐ画期的なデジタルサービスを創ること」ではありません。
そのためやっておくべきことは、デジタルビジネスをどんどん創れる企業体制になっておくことです。
デジタル化を進めておく
まずは ❷職種別のデジタル化 ❸基幹システムの刷新 を進めておくことです。
よくこれらはデジタル化と呼ばれ「DXはデジタル化ではない」と揶揄されますが、DXの下準備として欠かせないモノであることには変わりはありません。
デジタルビジネス人材を育てる or 雇用する
❶文化・風土の変革 は、実際に自社でデジタルビジネスを創ってみることで、その重要性が確認され、はじまっていくモノです。
自社内のメンバーでデジタルビジネス人材を育成するか雇用し、スモールスタートさせることが必要です。
ミッションを策定する
意外と見過ごされがちなのが「ミッションの策定」です。
市場の変化に合わせてデジタルビジネスをどんどん創っていくとなると「自社はどんなデジタルビジネスを創っていく存在なのか」をミッションとして定義しておく必要があるからです。
ミッションは、幅広い定義にすることが重要です。
たとえば、オムロン社は「動くものを管理できるようにすることで社会課題を解決する」というミッションを持っています。
そのため、信号機・自動改札機・脈拍測定器など…一見バラバラなビジネスを展開しているようですが、ミッション通り「動くもの管理」という範疇内でさまざまなことに挑戦していける会社になっています。
デジタルビジネスは、リアルビジネスに比べカンタンに立ち上げることができ、かつ、幅広く取り組むことができる利点があります。
この利点を最大化するようなミッションを策定しておかないと、いかにデジタル化で下地を整えても、何をやっていいかわからない存在になってしまいます。
ミッション策定の必要性は、経済産業省のDXレポートに書かれていませんが、最も重要な取り組みです。
>くわしくはこちらの記事
「デジタル化で終わる企業の共通点は「ミッション不在」。」
「DXの一丁目一番地。「ミッション」がなぜ重要なのか、調べてみた。」
「日本はDX後進国以前に、ミッション後進国だ。( 続・ミッションの重要性について調べてみた。)」
まとめ
DXの目的についてまとめました。
●DXの目的は「デジタルビジネスをどんどん創っていける企業に変革」すること。
いますぐ画期的なデジタルサービスを創ることではなく、デジタルサービスをどんどん創れる力を持つことで市場の変化に対応できる企業になっておくこと。
●「企業文化・風土の変革」はDXの結果。「職種別のデジタル化」「基幹システムの刷新」はDXの手段。どれも目的ではないが、必要なこと。
●「デジタルビジネスをどんどん創っていける企業への変革」が必要なのは、人々がデジタルで時間を過ごすようになったこと・市場変化が激しい時代になったこと が大きな理由。
●結論、DXを果たすためにやっておくべきことは「デジタル化を進めておく」「デジタル人材を育成 or 雇用しておく」「ミッションを策定しておく」こと。そのうえで「デジタルビジネスをどんどん創っていく」フェーズに早めに入ることを目指す。
「DXでなにをすべきかが不在だから、DXは進まないんだ」という意見もありますが、なにをすべきかを策定する手前「変化に対応できる企業体制に変わる」ことこそが焦点。
「自分たちがやっていることはデジタル化であってDXではないんだ」と卑下する必要はありません。デジタル化ではありますが、すべてはDXの途上で必要なことです。全社前向きに取り組んでいきましょう。
■補足■
DXのサブ目的として「従業員の労働環境改善」があります。
デジタル化が進んでいる環境は、煩雑な処理タスクはなくなり、リモートワークなどにも柔軟に対応できるなど従業員が働きやすい環境です。
DXが進んでいる環境は、トップとボトムの連携がフラットで、余計な会議を長時間重ねたりせずどんどんチャレンジしていける風通しがいい環境です。
DXが進んでいる企業とそうでない企業の労働環境の良し悪しは、天と地ほどの差が生じます。
転職が一般化する現在、優秀な人材はDX企業に流れていきます。
採用力強化は、DXに取り組む強い目的の一つと言えるでしょう。
執筆者
リビルダーズ編集部