DXナレッジ システム内製開発

外部ベンダーの選び間違えを0にする、たった1つのポイント

DXレポートは不親切です。

「DXは、外部ベンダーとの共創が重要」と何度も書かれていますが、「どんなベンダーを選ぶのが適切か?」については一切書かれていません。ここが最も重要であるにもかかわらずです。

ベンダーを選び間違えると、DXは失敗します。

「仕様を固めてもらわないと開発できません」とエンジニアに突き返され、物事がスムーズに進まず、社内にハレーションが産まれ、DX自体頓挫する可能性も出てくるからです。

しかも、選び間違えてしまう可能性のほうがはるかに高い。

この悲惨な状況を回避していただくために、ベンダー選びのポイントについてまとめました。

ポイントは「直取引実績」かつ「アジャイル開発に対応できるエンジニアがいるベンダー」です。

実は少ない、共創できるパートナーベンダー

どんなベンダーを選ぶべきか。

DXレポート2では「アジャイル開発に対応できるエンジニアを、パートナーとして供給できるベンダー企業」と伝えています。

ちなみに、国内企業であっても、Webサービス開発を行う一部のユーザー企業では、社内にアジャイル開発を行うエンジニアチームを有し、米国ベンダー企業が提供するプラットフォームを活用しながらサービスを内製している。また、このようなWebサービス事業者に対して、ベンダー企業はパートナーとしてエンジニアを供給している。

DXレポート2 「ユーザー企業とベンダー企業との新たな関係」

この引用部分にあるように、実際メルカリのようなIT企業の内部アジャイル開発部隊に、エンジニアを供給しているベンダーは存在します。また、最近ではIT企業以外の、内製・アジャイル開発に取り組み始めた大手企業にもエンジニアを供給するベンダーも存在します。

ですが、このようなベンダー企業は「数えるほどしか」存在しません。下の図をごらんください。

まず、上記図の大きな三角形。
NTTDATAのような大手一次請けを筆頭とするシステムインテグレーション業界の配下のベンダーには、アジャイル開発に対応できるエンジニアがほぼいません。受託でシステム開発に従事しているため、アジャイルでの開発に慣れていないからです。

SESを行っている開発会社も、アジャイル開発に対応できるエンジニアはいません。受託でのシステム開発プロジェクトの中でSESとして働いており、結局のところ開発手法はウォーターフォールだからです。かつ、ユーザーと直接コミュニケーションを取りながら開発する経験はまったくないエンジニアも多い、という状況です。

では「数えるほどしか存在しないベンダー企業」とはなにか。
上記図の黄色い丸で示したベンダーです。
システムインテグレーション業界の商流から飛び出し、1次請けを飛び越えユーザーと直接取引している開発企業のことを指します。

ですが、これらベンダーの中でも「ユーザー企業と直接取引できる信用力」と「システムインテグレーション業界の商流以外から仕事を得る営業力」と「アジャイル開発に対応できるエンジニアが在籍している」という条件を重ね持つ企業は、数えるほどしか存在しません。

そのため、DXレポート2で例に挙げている「Webサービス事業者に、パートナーとしてエンジニアを供給しているベンダー企業」は、実は少ない。日本には約2万7千社のベンダー企業が存在しますが、現状、数十社しか存在しないと推測されます。

「直取引」にも4種類あり、3種類はダウト

つまり、ユーザー企業と「直で取引している実績を持つ」ベンダー企業を見つければ良いのですが、ここに落とし穴があります。

「直取引」には4種類存在し、そのうち3種類は、適切なベンダーではないということです。

①ユーザー企業の子会社との直取引パターン
②1社とだけ直取引パターン
③何社も直取引実績があるが、対等ではないパターン
④何社も直取引実績があり、対等なパターン

適切なベンダーは当然④になりますが、その理由について順を追って説明します。

 

①ユーザー企業の子会社との直取引パターン

このパターンは、ユーザー企業とベンダー企業の間に子会社がはさまっているので実質二次請け。エンジニアとユーザー企業の担当者が直接話し合うことがないため、アジャイル開発はやっていません。

社名が「ユーザー企業名+テクノロジーズ」などになっているのが子会社です。ベンダー企業が出している求人広告をみると「プライム100%」とキャッチコピーで謳っているところをチラホラ見かけますが、取引先を見てみると「〇〇〇〇テクノロジーズ」がずらっと並んでいることがよくあります。

②1社とだけ直取引パターン

子会社ではなく、ユーザー企業本体と直取引している。ただし、直取引しているのは一社だけというパターンがあります。これは、ユーザー企業から独立して仕事をもらっているベンダー企業です。

このようなベンダー企業は受託で仕事を受けていなければ、アジャイル開発に慣れている可能性があります。ですが、一社しか経験していないことから応用が効かない可能性もあります。システム開発は、会社ごとに独自のルールやフレームワーク (プログラミングを組み合わせてつくった部品) で作られてることがよくあります。その場合、つちかった経験が他社では活かせないということが起きたりするのです。

③何社も直取引実績があるが、対等ではないパターン

たしかにユーザー企業本体との直取引実績を多数持っている。が、実態はユーザー企業社内で、ユーザー企業担当者から言われた通りシステム開発をする「社内作業員」になっているベンダー企業というパターンです。

つまり、エンジニアとユーザー企業担当者が、対等なパートナー関係にないということ。「ユーザーとエンジニアが相談し合って作る」のではなく、「ユーザーから言われた通りエンジニアが作る」という関係です。これはアジャイル開発ではありません。

このようなベンダーも、取引先をみるとある程度見分けがつきます。大手SIerとの取引も多いベンダーです。大手SIerとの取引が多いということは、受託でのシステム開発実績が多いということです。受託開発に慣れたエンジニアが、アジャイル開発に対応するのはむずかしいため、ユーザー企業内で開発作業員として働いてるというのがこのパターン。下記図の左側になります。

④何社も直取引実績があり、対等なパターン

上記図の右側のパターンが④。③と違い、対等なパートナーです。

ユーザー企業本体との直取引実績が多く、大手SIerとの取引比率が少ない or ないベンダー企業は、ユーザー企業と対等な関係を築けているベンダーである可能性があります。

結局のところ、対等な関係を築けているかどうかは、そのベンダーにアジャイル開発に対応できるエンジニアがいるかどうかにかかっています。ですが、そういったエンジニアは少ない。だから、DXレポート2にあった「パートナーとしてエンジニアを供給できるベンダー」が少なくなってしまうのです。

本記事で最もお伝えしたかったのは、③と④のベンダーは違うということ。③にはアジャイル開発に慣れているエンジニアがほとんどいません。いても、固定のクライアントに縛られておりアサインされる確率は低いでしょう。④はアジャイル開発に慣れたエンジニアが多くいます。DX・内製をともに推進していくパートナーとして適しています。

「直取引実績がある」と安心せず、しっかりと④のベンダーかどうか調べてみて下さい。

ただし、ユーザー企業も変わらないと

ここまでベンダー企業選定のポイントについてお伝えしてきました。

ですが、希少な良いベンダーを見つけたとしても、うまくいかないユーザー企業がどうやら多いようです。DXレポート2に下記のような記載があります。

今後、ユーザー企業においてDXが進展すると、受託開発の開発規模や案件数が減少するとともに、アジャイル開発による内製が主流になると考えられる。しかし、内製化する過程で必要となるアジャイル開発の考え方や、クラウドネイティブな開発技術等について、ユーザー企業の内部人材ではすぐに対応できないことが多いため、ベンダー企業が内製開発へ移行するための支援や、伴走しながらスキル移転することに対するニーズが高まるものと考えられる。ベンダー企業はこうした事業機会を顧客企業への客先常駐ビジネスとするのではなく、対等なパートナーシップを体現できる拠点において、ユーザー企業とアジャイルの考え方を共有しながらチームの能力を育て(共育)、内製開発を協力して実践する(共創)べきである。

DXレポート2 「ユーザー企業とベンダー企業との新たな関係」
DXレポート2 「ユーザー企業とベンダー企業との新たな関係」

太字部分「ユーザー企業への常駐ではなく、ユーザー企業とベンダー企業の共同出資でアジャイル開発の拠点を新たに作らないと、アジャイル開発はうまくいかない」ということが書かれてあります。

なぜ常駐じゃダメなのか?違和感を感じ、経済産業省に問い合わせてみました。DXレポート2の情報元であるベンダーから、ユーザー企業先での常駐はどうしても対等な関係が築けなくなると聞いたためこのような記載をした。とのことでした。

ですが、常駐でも十分対等な関係が築けているケースもあります。メルカリのような元々アジャイル部隊が社内にあるIT企業だけでなく、これから本格的に内製化していこうとする大手も、ベンダーを対等なパートナーとして受けいれています。

一方、経済産業省の回答のように「どうしても対等な関係が築けない」ケースが根強く残っている。DXが失敗する要因はさまざまありますが、ベンダーの受け入れ力の格差もまた大きく影響してくるのではないでしょうか。

まとめ

DX・内製推進に必要な、適切なベンダーパートナーの選び方についてお話してきました。パートナーという言葉が示す通り、ユーザー企業と対等な関係を築けるベンダー企業でなければアジャイル開発は進みません。

一方、受託開発全盛の日本において、アジャイル開発に慣れているベンダー企業は実は希少であることはお分かりいただけたと思います。

探し当てるのはむずかしいと思いますので、適切なベンダーをピックアップして紹介している記事も作成しました。そちらもぜひご参照ください。

 

執筆者
リビルダーズ編集部

-DXナレッジ, システム内製開発