日本はIT後進国だと言われていますが…
実は、世界で4番目にエンジニアが多い国であることはご存じでしょうか?
(ご参照:「世界のIT技術者は推計2137万人、日本は第4位で国内人口の0.86%―ヒューマンリソシア」)
この矛盾は一体…
今回は、実は日本のエンジニアは、海外のエンジニアとは違うというお話です。
日本のエンジニアは「コーディネーター」
日本には109万人のIT技術者がいると言われていますが、その多くが「SE」です。
ですがこの「SE」という職種は海外にはなく、SEの業務内容は海外でいうところの「コーディネーター(社内調整係)」。エンジニアではありません。
エビデンスはこちら『アメリカにSIer、SES、SE、派遣、常駐などあるのか?』
本メディアでたびたび取り上げさせていただいている、シリコンバレーのエンジニア・酒井潤さんのYouTube「アメリカにSIer、SES、SE、派遣、常駐などあるのか?」というタイトルの動画内で述べられています。(2019年ものですが)
カンタンに要約すると、
・海外にはSIerはない。みんな社員として雇っている。(だから開発がスピーディー)
・海外にSEという言葉はない。日本のSEにどんなことをしているのか聞いたら「社内調整・パワポ作り・MTGでIT知識を交えて話す」。これはもはや営業。社内調整しかしていない。
・このような人たちを海外では「コーディネーター」と呼んでいる。給料は低い。でも、日本では給料が高い。おかしい。
この手のお話、たびたび耳にしていましたが…シリコンバレーで実際に働く酒井さんの口からハッキリと言われている本動画。メディアの情報操作などではなく、本当の話だったんですね…
つまり、日本には「プログラミングをガリガリ書けるエンジニア」が少ない可能性があるということです。
アメリカ・中国・インドのIT技術者数は「エンジニア数」であり、日本のIT技術者数の大半が「コーディネーター数」。
ということは、エンジニア数で比較すると日本はフランスより下である可能性も往々にしてあるということです。
「管理職が上・作る人は下」の日本
日本には「SE」と「PG」が存在します。
SEはシステムエンジニア。PGはプログラマーです。
不思議なのは、SEはPGを管理する立場にありますが、PGを経ずSEになる人が多いということ。
10年以上前、タウンワークなどに「SE募集(未経験歓迎)」という求人広告がたくさん並んでいました。いまでも見かけますが採用基準にPG経験などは記載されておらず、やる気さえあれば!といった感じでした。
私も応募したことがあるのですが、面接の際言われたことが今でも忘れられません。
面接官は、ITはおろか仕事内容すらまだよく分かっていない私に「あなたは泥水をすすることができますか?」という謎の言葉を投げかけてきたのです。
エンジニアってモノを作る仕事ではないの?なぜ泥を…?と怖くなり辞退したのですが、いま思えば「社内調整に振り回される覚悟はあるか」ということを遠回しに言っていたのでしょう。
10年前から、SEという名のPGの管理者 兼 社内調整役が量産されていたということです。
また、そのSEを束ねるPM・顧客側の担当者も、PG経験を経ていないことが当たり前化しています。
そのことが元凶となり、実現可能性を考慮されていない仕様書が出来上がり、末端のPGたちの「こんなの作れませんよ」という声はかき消され、結果炎上するという歴史を繰り返してきました。
つまり「実践を経て育っていく」というルートが日本にはないということです。
海外は逆に、実践を経た人しか上に行けません。
プログラミングがガリガリ書ける人が上にいく、書ける人がリーダーやPMになるからコードもきれいでスパゲティ化しないんだと、シリコンバレー酒井さんも繰り返し述べています。
日本の場合、PGは末端。かつ、ずっとPG。システム開発はプログラミングを書かなければ進みません。PGに仕事が集中し、かつ薄給で忙殺されています。仕事は粗くなり、プログラミングコードの質も悪くなり、結果、質の悪いシステムが出来上がる。
PGを作業者扱いし、安くこき使うことで利益を拡大させようという構造こそ、日本が改善すべきポイントなのではないでしょうか。
まとめ「自社内で育成するほうが早い」
DX日本に「エンジニア」がいない可能性についてお話しました。
●日本はIT技術者数世界第4位。だが大半がSEであり、プログラミングをガリガリ書ける「エンジニア」ではない。エンジニア数でいくと最下位レベルかもしれない。
●日本は全体的に「管理者が上・作業者は下」という構造が成り立っている。そのこともまた、強いエンジニアが育たない要因になっている。
DXの波を受け、大手企業のエンジニアの自社雇用化が進んでいます。ですが、自らプログラミングがガリガリ書け、ビジネス側とも折り合いをつけシステム開発する能力を持つ海外で言うところの「ザ・エンジニア」は数パーセントもいない、という情報もあります。つまり、10万人もいないということです。おそらく、もっといないでしょう。
そして、エンジニアの採用倍率は18倍以上。他職種の10倍以上という高騰ぶりです。数少ない10万人のエンジニアを奪い合わなければいけない状況に陥っています。
さらに言えば、エンジニアは大手企業よりも自社開発ベンチャー企業を好む傾向があります。プログラミングを知らない管理者が上にいる構造下で働きたくない、というインサイトが見え隠れしています。
結論、大手企業は自社社員をエンジニアに育て上げていくほかありません。どんなにお金を出してもいないものはいない。この状況を早めに理解し、育成に投資を集中させなければ、内製・アジャイル開発を成し遂げることは難しいでしょう。
執筆者
リビルダーズ編集部