RPA インタビュー ラボ型開発

旭有機材が進める製造業DX。IT人材不足をカバーする『ラボ開発』というシステム開発のカタチ。

「従来起きていた仕様の手戻りの件数は、今のところ全く起きていない状況です。」(旭有機材株式会社 染矢 真樹さん)

企業が競争力を強めるための打ち手として叫ばれ続ける「DX」。その波は製造業にも問答無用で押し寄せて来ています。今、製造業の現場はどうなっているのかを取材するべく、宮崎県に本社を構える旭有機材株式会社様を訪問しました。

同社は樹脂製のバルブやパイプを主力製品とし、ニーズが高まる半導体向け樹脂材料や水処理プラント建設などを手掛けるモノづくりの第一線で活躍する企業だ。しかし、人材確保とデジタル技術の活用という点において苦戦しているというのが正直なところだという。そんな中、DX推進の活路となりえる新しいシステム開発の形が「ラボ開発」にあるということだ。

世間では聞き慣れない「ラボ開発」について、旭有機材株式会社でRPAロボットの運用・開発を担当している染矢さんにお話を伺いました。 また同社のシステム開発を支援している株式会社情報戦略テクノロジーの遠藤さんにもお話を伺いました。
(REBUILDERS編集部 木城)

インタビュー動画

旭有機材とはどんな会社か?

 
染矢氏:

弊社は「管材システム事業」「樹脂事業」「水処理・資源開発事業」の3つの事業から成り立っています。

管材システム事業では、プラント向けの樹脂製バルブ、半導体装置向けバルブなどを製造しています。樹脂事業では、自動車向けの鋳物砂(※1)、建物向けの発泡材料、半導体向け電子材料などを製造しています。水処理・資源開発事業では、水処理プラントの建設、地熱蒸気井や温泉井の掘削工事等を請負っています。

(※1)鋳物砂(いものずな)・・・「溶かした金属を流し込んで物を作る型」を作るための砂のこと

宮崎県延岡市の延岡製造所(クライアントからの注文は止まず、フル生産の状態が続いている)

  

現在の業務内容は?

 
染矢氏:

現在携わっている業務はRPAロボット全般になっております。日々の運用、またロボット構築のウェイトが大きい状態です。続けて、弊社が現在では新SAP移行プロジェクトが動いております。私はインフラ周りの担当として、SAPサーバーのクラウド化に従事しているところです。またそれ以外に弊社が使用しているPCのWindows11移行プロジェクトや延岡地区ネットワーク再構築の立ち上げにも従事しています。

引用:主力製品であるバルブ製品(旭有機材 | 管材システム事業 https://www.asahi-yukizai.co.jp/advantage_ppm/

旭有機材はどんな物を作っているのか?

 
染矢氏:

管材システム事業部は、あまり目に触れることはありませんが、工場内のプラントで用いるバルブとか、最近話題になる半導体工場向けのバルブ・パイプ・工事案件に携わっております。

樹脂事業部につきましては、車のエンジンを作るための型を作る砂を作っています。それ以外にも建物等の断熱に使う樹脂も作っております。最後の水処理・資源開発事業部につきましては、例えば羽田空港内の中水処理施設の建設を請負いました。

情報戦略テクノロジーのラボ開発を使った経緯は?

 
染矢氏:

情報戦略テクノロジーさんにはRPAロボットの作成に協力いただいております。当初、RPAロボットに関しては、時限のプロジェクトチームで推進しておりました。一定の効果が現れたことで発展的解消とすることになりました。

当時、担当プロジェクトから弊グループに事業が移管されたのですが、弊グループにおいてはRPAに関するノウハウが全くありませんでした。

そこを強力にサポートしてくれるベンダーさんがいないか調査しました。そのときに情報戦略テクノロジーさんの存在を知り、調べていくうちに情報戦略テクノロジーさんの斬新な事業形態に興味をひかれ、お声がけしたという経緯になります。

ラボ開発について語ってくれた染矢氏(会議室にショーケースが設置されており、中には同社の製品がずらりと並ぶ)

 

情報戦略テクノロジーさん、そもそも「ラボ開発」って何ですか?

遠藤氏:

昨今DXの推進等でエンジニアの需要が増える一方で、エンジニアを確保することはなかなか難しくなってきている状態でございます。その中でも各企業様が求めるエンジニアが少ない上に、ユーザロックイン(ユーザー企業がエンジニアを囲い離さないこと)されていることが多い状況です。そのため市場にそもそもエンジニアが出てこない、また出てきたとしてもすぐ決まってしまうという状況です。

情報戦略テクノロジーの遠藤氏。ラボ開発の営業担当としてクライアントの課題解決を支援している。

その状況を打破すべく、情報戦略テクノロジーのラボ開発というシステム開発支援を行なっております。具体的には次の4つの取り組みを行なっております。

まず1つ目は優秀な社員の採用に力を入れております。弊社の特徴でもありますが、元請けをしており、なおかつ業種を絞らないことによって様々なエンジニアの採用が可能となっております。

そして2つ目につきましては、パートナー企業様との連携を行っております。現状、情報戦略テクノロジーは数多くの協力会社様とのお取引がありますが、その中から厳選して3社とお取引をしております。そちらの3社の協力会社様に関しましては、上層部の方との連携を密に行なっておりますので、かなり融通をきかせるような状態で開発チームの構成ができるようになっております。

引用元:情報戦略テクノロジー「ラボ開発」の案内資料より「ラボ開発が行う4つの取り組みについて」

3つ目としてユーザロックインの脱却というところですが、弊社もユーザロックインされているエンジニアがいる状態です。そのようなエンジニアがユーザロックインから脱却できるようにラボというチームでリカバリーできるような体制を構築しております。

最後の4つ目はスペシャリストの確保を行っております。必要なタイミングで有識者のアサインを行い、高品質なプロジェクト遂行をサポートするようにしております。

旭有機材様の開発支援の背景について教えてください

遠藤氏:

旭有機材様は、RPAの開発において発注工数に波があり従来のSES契約や派遣契約ではなかなかコストパフォーマンスが出ない状況でした。開発ボリュームの波を巻き取る情報戦略テクノロジーのラボ開発を使っていただき、半期に1度の予算取りのための要件定義や開発時期を協議のもと必要工数分をご発注いただき、開発を進めています

編集部:なるほど!その時々で必要な工数分だけを発注できるので、ユーザー側からすると予算を無駄なく使えて融通がきくんですね!

染矢さん、ラボ開発を使ってみて正直な感想はいかがですか?

染矢氏:

従来のシステム開発におきまして、工数などが公開されていないということがしばしばありました。情報戦略テクノロジーさんのラボ開発を使用したところ、工数などの情報が見える化、完全にホワイト化されていることに驚きました。

またラボ開発を活用することによって要件定義などスムーズなやりとりができるようになったので、そこが一番効果があり、情報戦略テクノロジーさんと提携して良かったと思っています。

どんな開発業務をラボ開発に依頼しているですか

染矢氏:

情報戦略テクノロジーさんにお願いしている業務はRPAロボットの日々の運用や開発で、RPAロボットの種類としましてはルーチン作業の効率化がメインになります。その他にも基幹システムから延岡製造所の生産管理システムへのマスター連携作業や、商品発送データの客先への送付、売上データの作成等があります。

効果としては多大な作業時間の短縮に結びついており、その減った時間で他の業務を実施することにより業務の効率化、ならびに生産性の向上が図れています。

開発を依頼して感じたことはありますか?

染矢氏:

情報戦略テクノロジーさんに業務を依頼しまして、RPAロボットの定例会を週1回開催しています。吉田さん(ラボ開発の開発チームを取りまとめるプロジェクトマネージャー)に関しては、いつでもどのような状況でも冷静で的確な指摘を頂けるのでスムーズな運用ができています。

なおかつ吉田さんと長谷川さん(開発メンバーのエンジニア)と密接に打ち合わせをすることにより、従来起きていた仕様の手戻りの件数は今のところ全く起きていない状況です。この部分に関してはかなり効果があると私は思っております。

非常に助かっているのが正直なところで、今後もどんどん関係を強化できればと思っております。

コロナの影響で、エンジニアと会えない状況でのプロジェクト進行に問題はありませんでしたか?

染矢氏:

正直に言うと、最初は戸惑いがありました。従来顔を合わせての打ち合わせが多くて、それに慣れてしまっていたためかもしれませんが、コロナ禍に対応した形ということでオンラインでの打ち合わせをしております。

実際PMの吉田さんの舵取りがかなりスムーズですので、私の中での戸惑いとかはありませんでした。また長谷川さんと吉田さんの連携が見事ですので、打ち合わせの中でトラブルが発生したことは皆無です。

会議室に飾られているバルブ。旭有機材が初めて製造したバルブということで歴史を感じます。

他の開発会社とラボ開発との違いは何ですか?

染矢氏:

現在、弊社と取引があるベンダーさんに関してなのですが、ご担当者様が別プロジェクトに携わっており、打ち合わせをしたくても設定ができないことが結構あります。またIT業界全般にいえることなのですが、リソース不足に起因したプロジェクトの遅延も多々発生している状況です。

しかし情報戦略テクノロジーさんには、適材適所に人材を投入してもらっているのでお願いしたプロジェクトに関しては円滑に進められている状況です。

今後の展望についてお伺いできますか?

染矢氏:

RPAロボットの運用・開発の強化は絶対なのですが、残念ながら、旭有機材はDXの推進がまだ十分とはいえない状況です。私たち情報システム企画グループでも色々な案件を抱えており、外部のリソースを活用した上で、さらなるDXの推進と旭有機材のIT活用の強化につなげていけたらと思っています。

また、情報戦略テクノロジーさんに今後期待することはRPAロボットの活用と向上はもちろんですが、弊社の業務革新につながるDXの推進にも協力していただけると非常に期待しております。


編集部:染矢さん、遠藤さん、取材協力ありがとうございました!またDX推進の状況を伺いに訪問させていただきます!


 

 

■ 会社概要 ■
会社名 : 旭有機材株式会社
代表者 : 代表取締役社長執行役員 中野 賀津也
東京本社 所在地 : 東京都台東区上野3丁目24番6号 上野フロンティアタワー21階
延岡本社 所在地 : 宮崎県延岡市中の瀬町2丁目5955番地
創業  :1945年3月12日
URL  : https://www.asahi-yukizai.co.jp/
 
■ 担当者プロフィール ■
染矢 真樹 (そめや まさき)
1998年に旭有機材に入社。入社直後は全社的なグループウェア導入に携わる。その後2004年にはSAPの構築に携わり、続いて延岡製造所のSAPマスター作成のフォローに。現在は情報システム部門にて、セキュリティ関連や延岡製造所の生産管理システムの開発・運用を担当。

■ 会社概要 ■
会社名 :株式会社情報戦略テクノロジー
代表者 :代表取締役社長 高井 淳
所在地 : 東京都渋谷区東3-9-19 VORT恵比寿maxim8F
創業  :2009年1月23日
URL  : https://www.is-tech.co.jp/
 
■ 担当者プロフィール ■
遠藤 健斗 (えんどう けんと)
2017年に情報戦略テクノロジーに入社。自社プロダクト『WhiteBox』の立ち上げメンバーとして参画し、PMを担当。その後2018年には同社ベトナム子会社の代表を勤める。2022年よりPM部の営業に従事し、ラボ開発という前例の少ない開発スタイルで多くのクライアントを支援する。

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